第三話
第3話 「偽りと真実」
陸は私が離れていくのを何もいわずに見守ってくれてる。
そんな陸が大好きなんだ。
でも恋とかそんなんじゃない。陸の優しさに甘えすぎてた。
今度は絶対自分で自分の幸せを手に入れるんだ。
陸といて人を大事にする大切さがわかりました。
「ありがとう。陸。」
陸がいる時に大きな声ではっきりと言ったんだ。
陸は多少驚いていたけど、ニコッッってしてきたんだ。
私はそういって教室を後にした。
____グイッッ___
そのとき誰かに腕をつかまれた。つかまれた反動でしりもちをついてしまった。
「お・・・落合君?」
腕をつかんできたのは、落合君だった。
「突然悪いけど・・・俺さ〜・・・」
「何?」
「俺・・・空のこと好きだから。」
「えー・・・」
「じゃっっ!そういうことで」
「ちょっと・・・待って・・・」
さすが陸上部のエース。早すぎてとても追いつけない・・・でも今・・・落合君、私に告白したんだよね・・・
私・・・
ちょ・・・なにドキドキしてんの?
好きでもないのにーー・・・・
でも・・・
落合君なら陸だって心配しないで私を任せれるんじゃないのかな?
私・・・落合君と付き合うの・・・?
陸・・・そうすればいいのかなー・・・
しばらく考えて私は決めた。告白の返事・・・
私は陸上部を待ってて転寝をしてたみたいだ。
落合君が起こしてくれた。
「落合君・・・」
「なに・・・?」
「私・・・落合君と付き合います・・・」
「え・・・?ほんと?」
「はい。よろしくお願いします。」
「俺・・・1年の頃からずっと・・・いや・・・中学のときから好きだったから・・・」
「うそ・・・」
「うそじゃねーよ・・・中学のとき隣の席だったこと覚えてるか?」
「あぁ!おもいだしたぁ・・・」
「あの時からずっと好きなんだ。」
「・・・どれだけ前の話・・・。」
「あの時は一目ぼれだった。だから話したこともなかったんだけど・・・」
「そっか。」
「じゃあそういうことでよろしく。」
「うん。」
これが、私の答え。
落合君ならきっと陸だって心配せずに私を任せられるんじゃないかな・・・と思ったから。
いつも真っ先にあるのは陸のこと・・・落合君と付き合うのだって陸に心配かけたくないから。
落合君。ごめんね・・・私は今は落合君のこと好きじゃないです。
でも、いつか好きになる日を、信じて・・・いや、信じれるから落合君と付き合うんです。
そして・・・陸。
私は自分の幸せをかなえることができました。
私の幸せは陸を私から解放させることでした。今、やっと・・・やっと、それが叶ったんです。
陸にはこの先ずっとうらまれてしまうかもしれません。
でもこれが私の幸せなんです。陸には初めのうちは迷惑をかけるかもしれません。
陸はほんとに優しすぎるんだよ。こんなに大事にしてくれる人はもういないかもしれません。
それに私はほんとに陸が大好きです。
でも私には大事にしなきゃいけない人ができました。だから・・・陸も幸せになってね。
「落合君。あの〜・・・」
「何?」
「噂で広まったら・・・その・・・どうすればいいんですか?」
「う〜ん。素直に認めたほうがいいんじゃない?」
「でも私絶対に言わないから!落合君も言わないでね・・・」
「おう・・・でも親友には言ってもいいか?」
「親友にぐらいだったら・・・」
「じゃそういうことで・・・また明日な」
「うん!バイバイ・・・」
私は陸が校門にいないことを確認して、家に帰っていった。
陸・・・まさか陸をこんなにまで避けるとは思ってもいなかった。
落合君と話してるところ、陸にだけは見られたくないって思ってた。
「お母さん〜!ただいま〜。」
「あら・・・空。おかえりなさい。」
「あれ〜?陸は?」
「それがね〜・・・陸ったら女の子とどこかに行っちゃったのよ〜。」
「へぇ・・・で・・・女の子って誰?!」
「う〜ん・・・確かね〜・・・古嶋・・・さんだったかしら?」
「あ・・・!古嶋 サラさんでしょ・・・」
「そうそう!すごく可愛らしい子だったわ〜!」
「うん。学年でも、もてるんだよね〜」
「あの子ってハーフなの?」
「違うよ。サラって名前はお母さんが自分がなりたかった名前だから私につけたの・・・って言ってた。」
古嶋 サラ。私の親友の一人。サラはほんと可愛いし・・・うらやましい。
サラのコンプレックスは古嶋って読むのに(こじま)に読み間違われること。
他は何もないって言ってた。そんな風にかっこよく言ってみたいな・・・って思う。
でもサラは陸に片思いしてるんだ。中学の時から。ずっと・・・
「ただいま〜・・・」
「あ・・・陸!」
「おお!空じゃん。」
「あら・・・陸おかえりなさい。」
「あ!母さん。」
「ちょっと私は買い物に行って来るわ・・・だから空と陸はおやつでも食べて待ってるのよ。」
「は〜い・・・」
「おう!」
陸は何事もなかったかのようにスナック菓子を食べている。
私はこの沈黙を乗り切りたかった。
「あ・・・空。俺・・・」
「サラとでも付き合うことになったの?」
「え・・・なんで古嶋といた事知ってんの?」
「そんなことは気にしないで!それでどうなったの?」
「いや・・・好きな人いるからムリって断った。」
「・・・え。」
「古嶋はいい奴だけど。俺はそれよりいい奴がいるから。」
「そっか・・・」
「うん・・・」
「サラ・・・ちょっと電話してくる。」
「あぁ・・・慰めてあげてきて・・・泣いちゃったし。」
「うん。分かった。」
私は急に胸が締め付けられた感じがした。
サラ・・・陸と喋れたって・・・陸と隣の席になれたって・・・すごい喜んでたのに・・・
陸の「ムリ・・・」って言葉で陸のことで喜んでた時間が一瞬にして崩れ落ちていっちゃうんだね・・・
サラ。私にできることがあったら何でもするから。だから・・・陸と喋れたって喜んでた顔を見せてよ・・・
「もしもし・・・古嶋・・・ですが・・・」
サラの声はいつものかん高い声じゃなくてすごく暗かった。
「サラ?空だけど・・・」
「あ・・・!!そ・・・空〜!」
「陸から、全部聞いたよ・・・」
「そっかぁ・・・聞かれちゃったかぁ・・・恥ずかしいね、私!」
サラの声は今にも泣きそうな声だった。
「恥ずかしくないよ・・・サラはがんばったじゃん。」
「あのさ・・・今から会えるかな・・・空に話したいことあるんだ!」
「うん。」
私は急いで公園へと向かった。
「あっっ!空ーーーー!」
サラは寂しげな笑顔を見せていた。
「サラ・・・大丈夫??」
「私・・・陸君のこと大好き。ふられちゃったけど、それでもまだ陸君のこと好きなの・・・」
「うん・・・。簡単に諦められるわけないじゃんね。わかるよ。その気持ち。」
「空は私を応援してくれてるよね?」
「うん。これからもずっと応援してる。」
「じゃあ・・・陸君・・・返して??」
「・・・え??」
「陸君がね、「俺には空がいる。空が好きなんだ。1番好きなんだ。」って言ってたの・・・」
「それは兄弟としてなんだよ・・・?!」
「ううん・・・。陸君は「本気で好き!」って言って・・・」
サラはその言葉を言い終えずに泣きじゃくってしまっていた。
私はその姿を・・・ただ、ずっと呆然として見ていた。
これが失恋の怖さなんだ。あんなにきらきらとしていた可愛い顔が今では、ただ悲しくて切なくてどうしようもないもどかしさを物語っている。
「サラ・・・私に陸を返してって言われてもね、兄弟なの、私たち。それ以上の関係じゃないんだから・・・」
「そんなのわかってるよ?でも陸君は「空には、彼氏いない。今ならまだ望みあるんだ。」って・・・」
「ううん。私には彼氏いる。今日できた。」
「え・・・?」
「サラにだけ言うね?彼氏って落合君。」
「そうなんだ・・・」
「そうだよ。陸なんて好きじゃない。だから安心して?」
そういうとサラはまた泣いてしまった。
泣きやんでしばらくしサラはこう言った。
「空・・・。私ね。陸君が1番好き。これからもきっと・・・」
「うん・・・」
「でもね、いつまでもくよくよしてたらしょうがないから陸君を振り向かすことができるような女になるんだ!」
そう言い切ったサラは今までで1番きれいで女の子らしかった。
これが恋なんだって改めて思った。
陸の好きな人が私・・・?それはありえない。
サラには嘘を付いたんだろう・・・。
全く・・・陸はやることがばればれだって・・・
「陸ー?ただいまーーー!」
「よぉ。」
「ねー・・・私のこと好きってほんと?」
「はぁ?!意味わかんねー・・・」
「・・・。サラに聞いたんだもん・・・」
「そっか。あれ嘘だったのに。古嶋信じちゃってるんだな。」
「陸のバーカ!嘘なんてバレバレですぅ。」
良かった。やっぱ嘘だった。
サラ・・・。陸と両思いになったら毎日のろけ聞かせてよね〜。