第3話
第二話 「約束」
陸を私から離してあげなきゃいけないんだ。
もう私は陸に守ってもらうくらい子供じゃない。
これからは自分のことは自分で守らないといけないんだ。
ごめんね・・・陸。あの約束破って・・・
「おい!空行くぞぉ!学校!」
「あ・・・私これから1人で行くことにするから・・・」
「はあ?いみわかんねぇ・・・!!」
「ってか、私もう子供じゃないっっ!陸に守られなくたって!自分のことは自分でやるんだから!」
「はぁ?俺お前のこと守ってたわけじゃないし・・・!!」
「嘘つかないで・・・私全部知ってるんだから・・・陸の友達に全部・・・聞いたんだからっ!」
「友達って・・・だれだよ?!」
「そんなこと聞かなくていいでしょ!」
「教えろって!」
「じゃあね!陸・・・」
「ちょ・・・待てって・・・!!」
私は、ただ無我夢中に走っていた・・・陸に追いつかれる前に逃げ切りたかった。
陸を私から突き放すって決めた・・・ただの兄弟になりたいだけなんだ。
お願い・・・陸!わがままな私のいうこと聞いてよ・・・
ねぇ・・・陸は私のことばかり気にかけてないでいいから・・・
自分の恋愛と人生を気にかけてよ・・・
もうこれ以上自分の時間を私に使わないで・・・
私は陸にこう言いたい・・・
言いたくても声が出ない、そのかわり憎まれるようなことばかり言っちゃうんだ。
陸は私がいなければ・・・私がいなければ、自由だったのにね・・・
今までの陸の時間は無駄だったね。
私に振り回されてばっかりだったね。
ごめんね・・・陸。素直になれなくて・・・
陸が幸せになることを心の底から祈ります・・・
「おい!待ってて!なんで逃げるんだよ・・・」
私は陸に腕をつかまれていた。やっぱり私の足の速さじゃ追いついてしまうみたい・・・
「何?」
「俺なんか変なことした?」
「してない・・・」
「じゃあ何で逃げるんだよ!俺、今傷ついてるんだからな・・・」
「落合君・・・ほんとのこと教えてくれたの・・・」
「は・・・?落合が・・・何を?」
「なんか陸が1番大事にしてるのは私とか・・・」
「当たり前だろ!兄弟だし・・・」
「え・・・そうなの?」
「普通そうなんだけど・・・」
「私・・・勘違いしてたんだ・・・」
「何を?」
私は陸に今までのことを全部話した。
私は約束を破るのが怖かった・・・
でも今、陸と陸と話せた事・・・すごい安心感があったんだ。
それでも私は普通の兄弟になりたいんだ。
こんなにやさしい陸・・・それでも突き放す・・・
私はほんとにサイテー・・・
それでも陸の幸せを願いたいだけなんだ。
私も誰かと必ず幸せになります。だから陸・・・君も幸せになってください。
「じゃあ私・・・行くね?」
「うん・・・」
「陸は誰かと一緒にいきなよ・・・ねっっ?」
「おう・・・」
「じゃーね!」
「・・・」
「ばいばい・・・!!」
私はこれで陸を離したつもりだった。
でも・・・
「なに?どうしたの?陸・・・」
「俺・・・」
「?」
「空・・・あ・・・いや・・・やっぱいいや。」
「ちょっと!言ってよ!気になるじゃん」
「あ・・・あのさ。俺、彼女作らないから・・・」
「へ・・・?」
「俺。お前が必ず幸せになるまで、それまでは絶対彼女作らん。」
陸がすごいまじめな事言ってきた。
「え〜!じゃあ陸が幸せにしてよぉ!」
「え・・・空・・・それ本気?」
「うん!」
「じゃあ。俺必ず空を幸せにするから。」
「うん・・・」
「だから絶対一緒!わかったな?」
「う・・・うん。」
陸の様子が変だった。いつもはあんまり見ない・・・すごい嬉しそうな顔をしてた。
でもまだ自分の心の中に突き放そうと思っている自分がいる。
陸は・・・
陸は・・・
私の大事な人なんだ。
だから・・・幸せになってほしいんだ。
だから、きっと突き放したいんだ。私。早く陸より大事な人を見つけたい。
陸なんていっそ忘れてしまうくらいその人のこと好きになって、幸せになりたいんだ。
「陸・・・話・・・長くなるけどいいかな?」
「お・・・おう。」
「私ね。陸に誰かと幸せになってほしいんだぁ。それでね、私も誰かと幸せになりたいの。」
「そっか・・・」
「だからね・・・陸に守られてばかりじゃ、自分から幸せなんて見つけられないと思うんだぁ。」
「うん・・・」
「だから、こんな言い方変だけど、私ね・・・陸から離れたいの・・・」
「え・・・」
「陸は私を幸せにしてくれるんでしょ?」
「あ・・・当たり前だし!」
「私の今の幸せはね・・・陸が幸せになってくれる事だよ!!」
「え・・・?」
「約束したよね?陸は私を幸せにしてくれるんでしょ?」
「そ・・・そうだな。で・・・でも俺は自分の力で、空を幸せに・・・」
「私は自分で自分を幸せにする!だから私にかまわないで!」
「でも・・・」
「私は陸が私を幸せにしてくれるって言ってくれたから・・・私の幸せを言ったんだよ?」
「そうだけど・・・」
「私も陸が幸せになってくれたら嬉しい。だって2人とも幸せになれるから。そうすれば2人で一緒にいれるでしょ?」
「そうだな・・・」
「私はあの約束を守れないかも・・・ってさっきまでは思ってた。でも私の幸せが分かったから約束を守れるよ。」
「わかった。俺は、必要ないってことだな・・・」
「違うよ。私は陸に今までたくさん迷惑かけた。これから私は自分で自分を試したい。だからお願い。」
「わかったよ。俺は空が・・・に。」
風が吹いた。陸はなんて言ったのだろう。私は陸に幸せになってもらいたい。
お願いします。わがままな私の言うことを最後に1回だけ聞いてください。
「ずっと一緒にいてね・・・」
私は聞こえないくらい小さな声で言った。でも精一杯の気持ちを込めて言ったんだ。
そして私は一歩一歩足を踏み出した。
学校に着いた。私は同じクラスの女子に呼び出されていた。
「アンタさぁ・・・陸君の、何なの?」
あぁ〜・・・ついにキターーー・・・やっぱ陸もてるんだ。どうしよう・・・
しかも兄妹って言ったら、さらに好感度が悪くなる。
「私ですかぁ?私は陸の妹ってだけで〜す!」
「お前・・・妹ってだけで陸君に喋りかけてんじゃねーよっっ!!」
「じゃあ言い返しますね〜!ただのクラスメイトってだけで陸に話しかけないで下さい〜」
「はぁ?」
「まあいいじゃないですか・・・私は陸の妹ってだけですからぁ!」
「ほんとか?」
「じゃあ、陸に聞いてみてください。私は失礼しますね〜」
「空ちゃんごめんっっ!」
「いいよぉ!別に気にしてないからぁ〜」
終わったぁーーーーー・・・・
私はとてつもなく疲れた。
女子の嫉妬ってとてつもなく恐ろしい・・・
陸・・・この中から彼女作るんだろうか・・・
私はそのことばかりが気になっていた。
私は陸を無理やり突き放した。
私の幸せは陸・・・・
陸が幸せになってくれること。でもどうしてかなぁ・・・すごい胸が痛いんだ。
辛いんだ。苦しいんだ。悲しいんだ。
陸は私のなんなのだろう。その答えはわからない。でもわかっている答えはある。
陸は私の「お兄ちゃん」それには変わりないんだ。
それがすごく悲しいことだったんだ。
「約束ってするのは簡単だけど、守るのは難しいね。陸・・・」
私は心の中でつぶやいた。