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第一話

第一話 「空と陸」 


「空〜!早く行くよぉ!」


「陸〜!ちょっと待っててぇ!」


私、花岡 空。16歳。今日から高校2年生!

ごく普通の高校生。


「女って制服着るのそんな時間かかるだ?」


コイツは双子の兄の陸。私と同じ高校2年生。


「早く行くぞぉ!おいてくぜぇ?!」


「え・・・ちょっと待ってよ!」


最近、陸がやけにかっこよく見える・・・

どうしてかなぁ?


「おいおいーー・・・なに見てんだぁ?!空?」


「何も見てないよぉ!陸こそさっきから・・・」


「俺、お前のことみてたわけじゃないし・・・」


「私だって陸のこと見てたわけじゃない!」


「・・・」


「・・・」


「俺らわかりすぎだよな・・・」


「そだね〜・・・」


私たちは、いつだって一緒だと思ってた。

離れることはないと思ってた。


「お・・・おなじくらすぅ〜」


「おー!まじで〜?!」


「初めて一緒になったぁ^^」


「おもしれーあはは^^」


「あの約束覚えてるだろ?」


「うん。」


『ずっと一緒!!』



兄妹のくせに仲がいいとは思う。でも私たちは好きという感情を持っているわけではない。お互いただの兄妹。そう思ってるだけ。

私は、陸のことをかっこいいと思うことはあっても、決して好きって思わない。そんな感情私にはもてない。

でも・・・



「ん・・・よく寝たぁ・・・」


あの夢は・・・なんだったんだろう。

いまさら、あんな夢見て・・・

「兄妹」

そんなの分かってる。

分かってるから好きになんかなれないの・・・

少女マンガだったら兄妹の恋なんてよくある。でもね。現実ではそういうわけにいかないんだよ。

現実でどっちかがどっちかを好きになったら、どっちかが傷ついてどっちかが傷つかせることになるんだ。

だから私たちはその手前までしかいかないんだ・・・分かってるからお互いのこと好きになんてならないんだ。

もし付き合ったりしたら周りから変な目で見られるだろう。付き合ったらお互いが傷ついて2人で笑い合うこともできなくなるんだ。

だから私たちは好きになったりしないんだ。


そう・・・絶対に・・・

一つ目の約束


「好きにはならないけどずっと一緒・・・」


これが私たちの気持ちを抑えられる言葉だったのかもしれない。



「陸〜!今日暇ぁ?」


陸への女子の声が絶え間なく聞こえる。

同じクラスになってからというものようやく、陸はもてるんだなぁ・・・と思った。

今までは同じクラスじゃなかったから、分からなかった・・・


「お〜い!空ぁ?!帰るぞぉ?」


陸・・・もう高校2年生だし・・・一緒に帰らなくてもいいじゃん・・・

私、かなりの女子に睨まれてるんだけど・・・


「ごめん!一緒に帰れないや・・・先帰ってて!」


「はぁ?なんで帰れないだぁ?」


「生徒会の用事で遅くなるから・・・」


「はいはい。わかりましたぁ。帰ればいいんでしょ、帰れば。」


「そうそう。帰っててくれればいいの!」


あえて私は「待ってて!」とは言わなかった。

しかも生徒会・・・今日は用事ないし・・・

私はこの歳になって初めて陸に嘘をついた。今までなんでも言い合えたのに。もててる陸を見たらほんとのことなんて言いたくなくなった。

っていうか怖くて言えなかったんだ・・・


部活が終わって昇降口を出ると陸が女子と仲良く笑ってる・・・



チクッッ



胸にすごい痛みを覚えた。陸と女子が仲良く笑ってるところを見たとき・・・すごく痛くて辛くて悲しかった。

この痛みが何なのかはよく分からない。でもすごく辛いし悲しかった。



私はしばらく座り込んでいた。ずっと黙って・・・


「大丈夫か?空?具合でも悪い?」


「落合君・・・」


「ちょっと保健室行くか?」


「だ・・・大丈夫だよ。」


「いや・・・顔色悪いし・・・」


声をかけてくれたのは、同じクラスの落合 和輝君。陸上部のエース。落合君ももてる。陸の親友の1人だ。

でも、陸のこと見て辛くなったとは言いたくなかった。

だってそれじゃ私、陸のこと好きみたいじゃん・・・


「そういえば・・・今日、生徒会あるんじゃないの?」


「陸には嘘ついといたの・・・」


「なんで?」


「女子のこともあるし・・・もういい加減、一緒に登下校しなくていいとおもったんだぁ・・・」

 

「確かに陸はもてるし、それは分かる・・・でも陸は・・・」


「え・・・?」


「陸は空以上に大事にしてる人はいないよ・・・」


「わ・・・私?」


「うん。だって空が男子と出かけた時だって絶対ついていくじゃん。あれは空が変なことに巻き込まれないようにって・・・」


「陸は彼女作りたいもん・・・って言ってたよ・・・」


「まぁ、陸は空がよっぽど大事なんだよなぁ。だから一緒に登下校するんじゃないのか?」


「そっかぁ・・・私ずっと陸に守られてたんだね。」


「陸は、空をちゃんと守ってくれる人が現れるまでは俺は彼女いらないってさ。」


「じゃあ・・・私早く彼氏つくろっと・・・」


「そっか。じゃあそろそろ空は彼氏をつくるんだな・・・」


「うん。陸にそういっといてねぇ・・・」


「うん・・・じゃあな!空。」


「ばいば〜い!」


今日はじめて落合君と話した。

いい感じの人だった。いつの間にか痛みはおさまっていた。


「空〜!一緒に帰ろう?」


「優香・・・うん!一緒に帰る〜!」


そして校門を出ようとした時、陸に呼び止められた。


「なぁ・・・一緒に帰ろうぜ?」


「ヤダ!友達と帰るから陸だって帰ればいいじゃん・・・」


「俺はお前としか絶対帰らない!」


「優香行こう?」


「うん・・・」


私はちらっと陸の顔をみた。すごく悲しい顔をしてた。

私のやってることはサイテーなこと・・・

でも陸に早く幸せになってほしいから。陸に幸せになってもらうには私から陸を突き放してあげなきゃいけないんだ。

だからこれから陸を私から突き放すことにする。

私いけないことしてないよね・・・?




『ずっと一緒』



だからこの約束はもう守れないよ・・・


ごめんね?陸・・・











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