?:??【樹海】
僕は所謂虐待を受けていた。
生半可なモノでなく背中には当時の火傷の痕が全面に残っているし、指は不自然に太い部分があったり、腕には煙草を押し付けた痕もある。耳にはピアス穴が無数にあり口にもある。髪は黒染めしているが実は殆ど白髪だ。切り傷は小さなモノなら全身に複数。
これが僕の少年時代の結果だ。
親戚にも腫れ物扱いされるのも頷けるかも知れない。
何せ身だしなみに気をつけなければ僕はグレた少年にしか見えないだろう。
目つきも悪く猫背なのも一役買っているかもだけど。
『異世界なら僕でも何とかやっていけないですかね?』
コレは自分にも問いかけてる言葉だった。
割と諦め気味だった人生だが異世界なら悠々自適に生活出来るかも知れない。
現実に戻るという選択は…正直考えたくなかった。僕は所詮不要で邪魔な存在なのだと思い知らされる。
自分では過去を受け止めているつもりでもやはり何処かに現実への恐怖なんかが残っている。
『いいじゃろう。君の望む世界とはどんな世界かな?』
あっさりと肯定され暫し呆然とするも、僕は語った。
『魔法…かな、やっぱり。中世の様な街並みに…………モンスターが居て……………妖精や………伝説の剣なんかも…………。』
僕が終始夢中に喋っているのを老人は微笑みながらこくりこくりと相槌をうち聞いてくれた。
それが嬉しくて更に饒舌になり、いつまでも続く僕の物語を飽きもせず時折大袈裟なリアクションを取りながらも老人は応えた。
『よし、じゃあヘレネスという世界に君を転移させよう。』