1話 出会い、そして始まり
「待って!!・・・ってあれ?」
少年は叫びながら飛び起きた。
「僕、なんの夢見てったっけ?」
「ちょっと、一弥!!朝から大声出さないの!!」
「あ、ごめん!!」
少年・・・柊 一弥は下の階にいる母親に謝った。
一弥は小学四年生のごくごく普通の子供だ。
しかし、最近不思議な夢を見るようになった。
内容は覚えていないが、起きた時なぜか悲しい気持ちになる。
それは、小学生の彼には何も分らなかった。
「一弥?早く降りてきなさいよ。」
「あ、はーい!」
一弥はリビングに降りた。
「あ、おはようお兄ちゃん!!」
一弥の妹の彩が飛びついた。
「おはよう、彩。」
「一弥と彩は仲良しだな~。」
ははは、と父の幸一が笑った。
「ほら、みんな!ご飯出来たから、食べなさい!」
母の雪が、エプロン姿で出てきた。
こんな普通の生活を送っている一弥にこの後、人生を変える出会いが訪れる・・・
ご飯を食べた一弥は部屋に戻った。
「今日は学校休みだから、ゆっくり出来る~。」
一弥は、ベッドに飛び乗った。
すると、ドン!!とベランダで大きな音がした。
一弥はびっくりして、カーテンを開いた。
そこには、真っ白な服を着た女の子がいた。
その背中には、真っ白な翼を生やして・・・
「天・・・使・・・?」
一弥は恐る恐る窓を開けた。
金色の髪に、整った顔。
顔だけ見れば、外国人の女の子にしか見えない。
が、その背中には人には生えるはずの無い、翼が生えている。
「天使って、本当にいたんだ・・・」
一弥は、ゆっくりと天使に触れた。
すると、天使の目がぱっ!と開いた。
「うわっ!」
「ん~、地上だ~・・・って、うわぁ!」
天使も、一弥を見て驚いた。
「えっと・・・こんにちは。」
「こんにちは。・・・じゃなくて、私のこと見えてるの!?」
「う、うん。」
「はっきりと?」
「うん・・・」
すると、天使ははぁ~とうなだれた。
「だ、大丈夫・・・?」
「大丈夫じゃない・・・人間にだけは見られるなって、言われてたのに・・・」
「えっと・・・名前は?」
「・・・エルナ。」
天使は、小さな声でそう名乗った。
「可愛い名前だね。僕は、柊一弥。よろしくね。」
そう言って、一弥は手を差し出した。
「よ、よろしく。」
天使・・・エルナは一弥の手を掴んだ。
この二人は何も知らなかった。
この繋いだ手が未来を変えてしまったことを。
その未来がどんなに残酷なのかを。
この二人には知る由も無かった・・・
これが、一弥とエルナの出会い、そしてすべての物語の、始まりだった。