冒險1 別れと旅立ち(ランフォス)
■2015/12/25 ① 冒險1アップしました(∩´∀`)∩バンザーィ
二年前に書いてた『冒險の相棒 ~世界最弱最強の魔物~』のリメイクです!!
前を読まれた人は「内容全然違うじゃん」って激しく突っ込まれそうですが……
冒険10位まで進めば、やっとこさ前の話しになる予定なのでもうしばらくお待ちくだされ( *´艸`)ゥフフッ
再スタートするのにクリスマスなんてロマンチックだと思いませんか?(笑)
今日中にあと二本程アップするんで、ぜひよろしくお願いします↓ペコペコ
ヴァサァアァーッ
ワレは翼を限界まで広げきる。
飛ぶ為ではない。
命ともいうべきこの翼をすべて捧げたワレの祈り。
顔を空に向け、天を貫くように叫ぶ。
「キュオォォオォーッ……」
悲しみを込め声の続く限り、尊敬を込めて涙が枯れるまで、別れの言葉が我が主へと届く事をただ願って。
我が主はもうこの世にはいない。
主の亡骸は、この目の前にある石の下へと埋められた。
これを人間は墓と呼ぶらしい。
魂が眠り安らぐ場所だと考えているようだが、人間とはつくづくおもしろい事を考える生き物だな。
……だが、嫌いではない。
「ゆっくり休んでね……今までありがとう……」
墓の前で別れをつげ、共に涙を流すこの人間もワレが認める存在である。
本来ならば人間などという下等な生物は、胃袋におさめるにもあたいしないゴミ程の価値しかない生き物だ。
だが、我が主とこの人間だけはワレにとって特別な存在なのだ。
「ランフォス、この場所をどうかよろしくね……」
ふん。
言われるまでもない。
ワレは主から頂いたランフォスという名に誓って、この墓を守り続けていくつもりだからな。
「うんうん、ありがとう。本当にありがとう……」
……あいかわらず不思議な人間だ。
目を見つめただけだというのにワレの心が見透かされる……
いや、この思いをすべて感じてくれていると言うべきか。
この黒い瞳でまっすぐ見つめてくる視線は嫌いではない。
「ランフォスが好きだよ」
ワレの足にしがみつく小さな小さな人間。
動くだけで壊れてしまうか弱き人間。
なんともあったかいものだ。
人間に触れられているというのに嫌な感じ一つしない。
つくづく特別な存在だと感じさせられるな。
だからこそ、我が主にかわってワレがこの小さくか弱き人間を守っていかねば……
「私は大丈夫。……この谷から出て、ギルドに行こうと思うから」
「クゥッ?」
「本気だよ。私もね、ジルおばぁちゃんがやってた事をやってみたいの」
我が主、ジルブァ=フレアハート。
そしてワレは相棒であるジズ一族の末裔、ランフォス。
ちまたから巨大怪鳥なぞ呼ばれているだけあって、ワレより大きな生き物などそうはいないだろう。
まぁ普段はできるだけ小さくいるように心がけてはいるが……
それでも大きすぎるらしい。
だが、この大きさだからこそワレはジズなのだ。
ワレは背中に主を乗せて空を舞う事を誇りとしていた。
ありとあらゆる世界に主を連れていける、それこそがワレの喜び。
行く手をさえぎるものがあればこの嘴で貫くのみ。
ドラゴンが襲ってこようともこの爪で引き裂くのみ。
雨のように矢が降ろうともこの翼があればかすりもさせない。
主を傷つける存在などワレが許しはしない。
ワレと主はいつしか最強の空王騎乗師と呼ばれるようになっていたのだ。
「私もこの子と騎乗師になりたい……ジルおばぁちゃんに負けないような……」
やはりそうなるか……
我が主はいつかそうなる日が来ると言っていた。
しかし、そいつを相棒にして騎乗師を目指すとは
複雑な気分である。
まぁそいつしかいないのも分かってはいるのだが……
うーむ。
正直にワレは心配だ。
そいつはスライムなのだから。
「だけど、普通のスライムじゃないの知ってるでしょ?」
それは分かっているが……
主がいたならなんと答えているのだろうか?
きっと……
そうだな……
我が主ならこうするだろう。
「キュゥウーッ」
頭を低く、体を下げる。
少しでも乗りやすいようにしてやろう。
「もしかして、送ってくれるの?」
「クゥッ」
人間のそんな小さな足では一番近くの町でさえ何日かかることやら。
ワレならば遠くだろうとひとっとびですむからな。
「応援してくれるの?」
心配に変わりはない。
だが、主が生きていれば間違いなくこうするだろうからな。
我が主、ジルヴァ=フレアハートが信じたように、ワレも信じよう!
この人間、ティア=フレアハートの事を!
だからワレの背中に乗るがよい!
「ジルおばぁちゃん、いってきます」
本当に不思議な人間だ。
主に向けたその笑顔を見ているだけで、ワレの胸がキュッとなったぞ。
人間なぞに興味はないはずなのだが……
「いこう」
よし、ワレの背中に乗ったようだな。
主と同じ場所に乗れている事を誇りに思うがいい、ティア=フレアハート!
そいつとの冒険に祝福あれ!!
「ギャウゥッ!」
ヴァサッヴァサッ、ヴゥザァァアーッ――――
【冒險用語辞典】……この冒險においての設定です( ..)φメモメモ
ぶっちゃけて趣味みたいな場所なので、読まずにとばしてもらっても本編に影響はまったくありません|壁|д゜)チラリ
【相棒】……この世界に存在する『騎乗師』という仕事において必ず必要となる存在。
騎乗師である人間側ではなく、騎乗師が乗る魔物の方を指す。
町や村や大陸や環境によって、様々な数多くの魔物が相棒として選ばれているのだが……
モノを運んだり、護衛をしたりするので、必然的にある程度の大きさや強さやスピードを要求される為に、Dランク以上の魔物である事が暗黙の条件となっている。
【騎乗師】……『相棒』と呼ばれる魔物と心を通い合わせ、行動を導き、指示し、乗りこなせなくてはいけない仕事。
特別な資格などはなく、実力や実技が重視される傾向がある。
運送や護衛などは毎日おこなわれる仕事なので、どんな小さな村や町にも必ずいる程に騎乗師は多く存在するが……
中型か大型程の大きさをもつ相棒の食費、装備費、健康維持、滞在する場所の納屋代など……出費が多すぎる仕事として有名。
その為か、望んで騎乗師を目指す者は少なく、世間的にも過小評価され見下されやすい仕事だともいえる。
【ジズ】……巨大な鳥の姿をした、全ての鳥を統べる鳥の王といわれるSクラスの聖獣。
六枚の羽をもち、空と同化する程に美しい空色の体をしていて、胸元や羽先に入っている真っ白な模様が特徴的。
頭には耳のような羽が六枚生えていて、背中や翼の至る所や長い尻尾にはフワフワとした雲のような真っ白な毛が生えている。
大地に立つと頭が天に届き、翼を広げれば太陽を覆い隠す程の大きさになれるのだが……普段は10m程の大きさに抑えて生活中。
鳴き声一つであらゆる肉食の鳥をびびらせて動けなくしたり、翼を広げるだけで嵐を静めてしまう程の力を持つ。
このモデルはユダヤ教における巨大な鳥『Ziz』からです。
旧約聖書に出る、陸の『ベヒモス』海の『レヴィアタン』に並ぶ空の『ジズ』として三頭一対の巨大な怪物として書かれている……はずが!?
実は誤解釈やゾロアスター教の影響で生み出されたと噂されていて、かなり知られられていないマジ地味な怪物だともいえる。
ベヒモスとレヴァイアタンだけで二頭一対としてガンガン売られているせいで、まともな文献が残ってないのだが……
設定的に、やはりこの三頭共に世界の終焉時、人間のご飯として食卓に並べられる悲しい宿命を背負ってる事は間違いないらしい。
太陽を覆い隠す大きさや、鳥をびびらす力ってのは本当の事で……
南からの暴風から世界を守っているらしく、ジズがいないとその暴風に世界は耐えられないらしいから……みんな感謝しようね!
基本は世界の秩序を守るイイ奴なんだけど……卵を落として割っちゃった時には、流れ出た卵の中身で60もの町を壊滅させ300もの杉をなぎ倒したっていうおちゃめな一面もあるみたい!
【ランフォス】……ジズにつけられた名前。
ランフォスはオスで、まだ103歳というジズの中でもかなり若手。
『ジルヴァ』に卵時代から守られ、孵化して、育ててもらっている。
だからといって人なつっこいわけではなく、認めた者以外に対しては容赦なく瞬殺してしまう残酷な面もあったりなかったり。
趣味は毛づくろいで、大好物は兎の丸呑み。
【空王騎乗師】……背中に人はほぼ乗せず、大きな足の爪で鷲掴みしてモノを運ぶ。
城砦用の岩運びや、海を渡る大陸輸送など、巨体と翼を生かした仕事と得意としていた。
大型のドラゴンとも互角にやりあう実力をもっていて、世界中の騎乗師が目指そうとしたのだが……ジズは気高く、また捕獲がほぼ不可能な為、空王騎乗師として活躍した前例があるのはジルヴァとランフォスだけである。
【ジルヴァ=フレアハート】……身長155cmと小柄な、瞳が青紫色の133歳という驚異の長生きお婆ちゃん。
長い髪を束ね三つ編みにしていて、若かりし頃は髪の色も青紫色だったのだが、60歳を過ぎた頃から藤色のように薄くなってしまった事をかなり気にしていた。
それ以上に気にしていたのは胸がないことらしい。
『空の女神』という二つ名を持っていて、現役時代はこの大陸の五本指に入るSSクラスの騎乗師として『死の谷からの生還』『王の護衛』『ドラゴン退治』……数えきれない程の功績をあげている。
76歳の時に現役を退き、人目を避けて草木も生えない死の谷へと移住して、生涯独身を貫いた……と思われていたが、しかし!?
120歳の時に死の谷で黒髪の少年と少女と出会い……遅咲きの母性本能に目覚め、親代わりに育てる事を決意する。
残念ながら少年と決別してしまい、連れ戻さなかった事を後悔していたのだが……
最後は胸の病で倒れ、ティアやランフォスという家族が出来た喜びをかみしめながらこの世を去った。
【ティア=フレアハート】……身長156cm、16歳の黒髪、黒い瞳の美少女。
この物語の主人公!!
3歳の時に兄と一緒にジルヴァに拾われて育てられた。
幼かったせいで昔の記憶は一切なく、ジルヴァの事を本当の母親のように思っている。
誰よりもジルヴァがいなくなった事を悲しんでいるが……ジルヴァの残した言葉と思いを胸に、最高の騎乗師となるべく冒險にでる事を決意する……