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セーラとニコラス  作者: 岸野果絵
プロポーズ
2/8

プロポーズ 後編

「セーラ。オイラと結婚してくれるね」

ニコラスはセーラの額に自分の額をあてて言った。

セーラは真っ赤になってうなずいた。

ニコラスは満面の笑みを浮かべる。

「君はオイラの一番大切な宝物だ」

ニコラスはセーラをギュッと抱きしめた後、ローブのポケットをゴソゴソし、何やら探しはじめた。


しばらくすると、ニコラスは目的のモノを見つけたらしく、ニタァと笑い、手のひらに一対のブレスレットをのせた。

ブレスレットには複雑な装飾が刻まれ、普通の宝石とは少し違うような不思議な輝きをもつ石がはめ込まれている。


「一般的には指輪なんだけど、オイラたち魔術師の間ではこれが主流なんだ。いろいろ組み込むにはこれぐらいの大きさがないとね。指輪じゃ小さすぎるんだ」

ニコラスはそう言いながら、一つを自分の左腕にはめ、セーラの左手をとり、もう一つのブレスレットをセーラの目の前に掲げる。


「これ、一度はめたら、オイラにしか外せないけど……。正確には他の人でも外せるけどね。外すにはオイラ以上の術を使うか、オイラを殺すしかない。どっちにしろ、ほぼ不可能。めるなら今のうちだよ」

ニコラスはセーラの意思を探るように小首をかしげた。

その瞳の奥にゾッとするような光を感じ、セーラは思わず息をのんだ。

「覚悟はできてる?」

セーラは息を止め、ニコラスをじっと見つめながらうなずいた。

ニコラスはニヤリとすると、なにかをつぶやきながら、セーラの左腕にブレスレットをはめた。


カチッ


留め金がはまると、二つのブレスレットがぼーっと淡い光に包まれる。

ニコラスはセーラの左腕を左手の上に載せたまま、さらに呪文の詠唱を続け、右手をゆっくりと動かす。

ブレスレットの光ががだんだんと強くなっていく。


セーラは魔術を紡ぐニコラスをじっと見つめていた。


不思議だった。

セーラの知っているニコラスは、いつもご機嫌で、穏やかで明るい雰囲気を醸しだしていた。

でも、いま目の前にいるニコラスからは穏やかさは全く感じられない。

その表情からは感情が読み取れない。

ゾッとするような、凍りつくような冷ややかさを感じる。

いつものニコラスとはまるで別人のようだった。


ニコラスは右の人差指と中指を立てると、強い声で何かを言って、指先をブレスレットに向けた。

ブレスレットはパッと強く輝き、そして光が消えた。


「うん。いい感じぃ」

ニコラスはいつものご機嫌な声でニヤリとした。

セーラはほっと息を吐いた。

ニコラスは鼻歌を歌いながらセーラの右手をとると、セーラの左腕のブレスレットの上に重ねた。

「セーラ。なにかあったら、こうやってオイラの事を念じるんだよ。オイラ必ず、君の元に駆けつけるからね」

ニコラスはセーラをじっと見つめながら、真剣な顔をしてそう言うと、ニッコリ笑った。

セーラもつられて微笑みながらうなずいた。


「うーん。やっぱり指輪も必要だよねぇ」

ニコラスはセーラの左手を顔の前に引き寄せる。

「どんなのがいい? オイラ、奮発しちゃうよぉ」

嬉しそうにセーラの薬指を撫でながら、ニコラスは尋ねた。

「あなたがくれるのなら、どんなモノでもいいわ」

セーラの言葉に、ニコラスは瞳を輝かせる。

「それじゃ、明日にでも一緒に買いに行こう! 初デートだよ」

ニコラスはそう言ったが、セーラはちょっと不安だった。


ニコラスはいつものように乞食のような格好で出かけるつもりなのだろうか。


ニコラスはセーラの気持ちを見透かしたかのように、ニタァと笑った。

「大丈夫。オイラ、マトモな服もちゃーんと持ってるんだ。これでもTPOはちゃんとわきまえてるつもりだよ」

ニコラスはセーラの肩をポンと叩く。

セーラは「つもり」という言葉に引っ掛かりをおぼえながらも、とりあえず微笑んだ。

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