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First Love  作者: きっちゃん
3/5

手術当日

手術当日。俺は、千景のいる病院に向かった。そして、手術をする医者から説明もされた。

「今日、手術をする高槻です。千景さんの病気はご存知ですね。」

「はい。」

「この手術は成功の可能性は高いです。しかし、術後の回復で命が途切れてしまいます。もし、そうなってしまった場合、どちらかを助ける方法を選びます。それでもよろしいですね。」

「分かりました。それで白血病は治るんですね!」

「千景さんの場合は本当に稀です。再発して転移もしてないなんて奇跡としか言いようがありません。再発後はもし、回復傾向に向かった場合は完治と言っていいでしょう。多少、副作用的なものとして風邪が長引いたり、高熱が出る恐れがありますけど・・・それも最初の一~二週間がいいとこでしょう。神崎君にも同様の事が言えます。」

「つまり、手術が成功して、いい傾向に向かった場合・・・千景さんは完治という事で普通の生活ができるという事ですね?」

「そうですね。千景さんの場合は二,三ヶ月通院してもらうかもしれませんが・・・完治します!これだけは絶対と言っていいでしょう。」

「分かりました。ありがとうございます。そして、本日はよろしくお願いします。」

俺は、千景のお母さんと一緒に医者の話を聞いた。

「それで、千景さんは?」

「彼女なら、麻酔をして眠りにつきました。今から神崎君にも麻酔をします。その後、骨髄移植、その他で最低手術時間は六時間と予想します。」

「六時間?」

「もちろん、あくまで最低時間です。長引く恐れもあるので覚悟してください。」

「でも、六時間って・・・」

「お母さん、安心してください。術中の時間は長くても、神崎君と千景さんは私が救って見せます!」

「本当によろしくお願いします。」

「こちらこそ。・・・それでは神崎君。こっちへ・・・」

「はい。」

「神崎君!」

「どうしたんですか?おばさん。」

「本当にありがとね!」

「いえ・・・それより、おばさん!俺たちが治ったらおばさんのカレーライス食べたいっすね。」

 俺は精一杯の笑いで千景のお母さんの方向を見た。

「いくらでも、食べさせてあげるわ!一杯でも二杯でも・・・」

 千景のお母さんには涙でいっぱいに見えた。

 俺が手術室に向かった。でも後ろで・・・

「一輝!」

 振り返ると俺のお袋だった。千景の一件以降、両親とは全く話をしていない。勘当もされ、合わせる顔がなかった。

「んだよ!お袋!いきなりなんだよ!」

「一輝!手術が終わって目が覚めたら連絡して!」

「何でだよ!」

「勘当しようと、私の息子だもん。とにかく頑張って!」

 急すぎる言葉に俺は声も出なかった。たった一言・・・

「頑張るのは医者たっつーの!」

 俺は素直になれなかった。でも、お袋の言葉が嬉しかった。

「最後に神崎君、後悔はないね!」

「ないですよ!早くやりましょう!千景も体力勝負ですから。」

 これが手術前の最後の言葉なった。


「おばさん!」

「あれ?亮君と麗華ちゃんじゃない?どうしたの?」

「俺たちも、千景たちの事が心配で・・・」

「でも、今日ってテストじゃなったかしら?」

「テストは途中退室可だったので、いち早く終わらせてここに来たんです。麗華も俺と一緒に・・・」

「そうだったの?ありがとう!」

「いいえ。おばさん!んで・・・千景と神崎は・・・?」

「さっき、手術が始まったわよ!後は私たちは祈るしかないみたいだね。」

「そうですか・・・」

「おばさん!」

「どうしたんだい。麗華ちゃん?」

「私・・・こんな時どうすればいいかわからなくて・・・とにかく頑張ってください。」

「ありがとう!まぁ~せっかく来たから、お願いがあるの!」

「なんですか?」

「そちらの親御さんが許してくれるかどうかわからないけど・・・手術が終わるまで、ここにいてくれるかい?どうもわたしや神崎君のお母さんだと寂しくて・・・」

「それならお安いご用ですよ!ねっ!亮君!」

「もちろんですとも!遅れてからですが、青羽兄弟も駆け付けるそうです!彼らは受験生ですから!」

「凛ちゃんたちの事かい?・・・グスッ!」

「どうしたんですか?おばさん?」

「いや、千景って愛されているんだなと思ってなんだかうれしくて・・・」

「おばさん!その涙は千景たちが成功した時用にとっておきましょうよ!」

「・・・ありがとう!」

 俺たちが病院に着いたのは千景たちが手術を始めて三〇分しか経ってなかったらしい。俺はいつ終わるかわからない手術をじっと待っているしかなかった。そして、午後二時になると青羽先輩や凛ちゃんは駆け付けてくれた。おばさんが俺たちに言ったこととほぼ同じ説明だったが、娘の命がかかっている状況でこの精神力は正直凄かった。その隣で、神崎のおばさんも息子の生死にかかわることで精一杯祈っていた。親から勘当されたと聞いていたがそのようには見えなかった。そして・・・

 ガラガラッ!

「手術室の扉の音が開いた!」

「千景は?」

「一輝は?」

 ほぼ同時に千景と神崎のお母さんがお医者さんに投げかけた。返答は・・・

「最善は尽くしました。手術も成功しました。」

 ここにいるみんなが安堵した。しかし・・・

「後は、彼らの体力次第です。目が覚めたら私に連絡してください。」

「それはどういう?」

「順を追って説明します。千景さんと一輝さんのお母さんはこちらへ・・・」

 俺たちは、赤の他人なため、その説明は聞けなかった。でも、何かが引っ掛かった。成功したのに・・・

 一〇分後、千景と神崎のお母さんは、まだ顔が強張っていた。それは、手術時間七時間二〇分の疲れではなく、何かが迫っているそんな顔だった。

「おばさん?千景ちゃんたちは・・・?」

 五分間の空白があっただろうか?もっと長かったかもしれない。呼吸を整えて、俺たちは現実を見ることに専念した。

「手術は成功!それは間違いないって・・・でも、七時間超の大手術だったから体力が戻るか心配だって・・・」

 俺は、息をのんでその後も沈黙を貫いた。

「千景は多分、問題ないって。二,三日すれば元気になるでしょうって・・・」

「千景はって神崎は?おばさん!答えてください!」

 神崎のおばさんに返答を求めた。でも、それは残酷な事だったかもしれない。

「一輝は・・・特定疾患の病気にかかっているの!」

「「えっ?」」

「いや、特定疾患といっても、普段通り生活できるものよ!ただ、一般成人男性より耐性がなくて、体力がないの!だから、私もこの手術に反対だったの。」

 俺は衝撃の事実を聞いた。

「千景さんの奥さんの前で言うのは何だけど、他人のために命を張ることじゃないって・・・だから私たちは勘当なんてしたの!他の人よりも死ぬ確率が高いって・・・」

「それで、神崎の生存確率は・・・」

 俺は恐る恐るだが聞いた。結果は・・・

「五分五分だって・・・三日後に回復しない場合は脳や体に影響が出るかもしれないって・・・」

「・・・そんな」

 ある程度覚悟はしていた。しかし、現実はもっとつらいことだった。

「おばさん!一週間後、また来ます!」

 心無い言葉だったかもしれない。しかし、俺より、辛いやつが今、懸命に回復を願っている。だから、俺も、生きていてほしいってその事だけを考えていた。


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