手術前日
「神崎~。千景はまだ休みなのか?」
「ん?あぁ~なんか、季節早目のインフルエンザらしいみたいだし、少し時間がかかるって。」
「ふ~ん。そうか。いや・・・小耳に挟んだんだが・・・千景ってあの中央病院に入院してるって聞いてな。神崎に聞いたら確実だと思ってな。」
「お前、俺がいない三年間は麗華や凛ちゃんや青羽先輩と一緒に千景とつるんでたんじゃないのか?」
「いや・・・確かに、そうだが、さすがに日曜の出来事でそれが一瞬で変わったからな。」
「神崎君?本当に千景ってインフルエンザなの?」
「それは・・・」
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン
予鈴が鳴った。朝のホームルームがなっている。
「神崎。ちょっといいか?」
教室は行って早々、先生が俺を名指しで呼び出した。はて・・・?
「それと、亮、麗華。お前らも・・・他のものは次は俺の授業だが最初は自習にする。
ざわざわ。ざわざわ・・・
俺たち三人は進路指導室に連れてかれた。そこには泣き崩れてる凛ちゃんと気まずい顔の青羽先輩がいた。
「お前たちに話しておきたいことがある。」
先生が重い口を開いた。
「凛と優麗はさっき伝えたが・・・千景の事だ。」
俺は先走ったように、先生より声が出てしまった。
「白血病ですか?」
「神崎は知ってたみたいだな。そうだ。千景の白血病についてだ。」
他の四人は絶句していた。なにしろ、千景が休んで一週間。彼らにはインフルエンザで通していたから・・・
「白血病は骨髄移植で完治できる可能性のある病気は知ってるな。」
「はい。」
「でも、移植相手、つまり、ドナーがいないといけない。でも、見つからないらしく・・・」
「仲のいい俺たちの中でって話だな。」
「あぁ~。そういうことだ。先生の俺が言うのは変だが人一人を救ってやりたい。その気持ちはみんなと一緒だ。」
みんな、泣きじゃくる中、俺は平然としていられた。その態度にさすがに青羽先輩が切り出した。
「・んで教えてくれなかったんだよ!」
何を言ってるのかは途中からしか聞こえなかったが、目の前に拳が一発入った。
「青羽君!」
「いいんですよ、先生。騙してた俺が悪いんです。亮?お前もいう事はあるか?」
「先に先輩にしてやられたからな。俺はもう、怒る気にもなれない。」
亮は冷静を装っていたが、手は震えていた。俺を殴りたい気持ちなのか悔しい気持ちかはわからない。
まぁ~俺もいう事はあるし・・・
「先生。そのドナーに関しては心配しないでください。千景さんには黙った状態で、千景さんのお母さんには説得した状態で、骨髄テストを受けました。そうしたら、何の奇跡かはわかりませんが、俺と千景の骨髄の型が一致したんです。」
「「えっ?」」
「もちろん、手術をしても、助かる可能性は限りなく低いです。そればかりか、術後の回復や俺の体調も心配されます。でも、それを理解したうえで千景さんに骨髄を提供するとその場ではっきり言いました。
千景さんの両親にも反対をされましたが、俺も千景を救ってやりたいとい気持ちを精一杯伝えました。説得にも成功して、急ではありますが、明後日が手術日です。」
この場にいる全員が俺の行動に絶句していた。あきれていた?それはわからない。でも、全員が千景を救ってやりたい、それだけはその場て理解した。
「わかった。神崎。でも、明後日だと期末テストがある。それに合格しないとお前は進学できない。千景は事情が事情だけに先延ばしはできるが、お前は無理だ。だからこっちも急だが明日、お前の期末テストを行う。一教科でも赤があったら知ってのごとく、お前の冬休みはないと思えよ!
「分かってますって先生。そう来ると思って毎日勉強をしてました。」
「ははっ!頼もしいな、んじゃ頑張れよ!勉強も手術も・・・」
「それと、わがままではありますが、今日は帰ってもいいですか?いろいろと準備がありますし・・・クラスのみんなには術日当日に伝えてください。」
「ったく・・・確かにわがままだが・・・そのかわり頑張れよ!」
「頑張るのは医者ですよ。」
「良し!話はそれだけだ。みんなは教室に戻りなさい!」
「それじゃ・・・先生・・・生きていれば一緒に千景さんと元気な姿で登校してきます。」
「神崎・・・さっきの話だが・・・」
亮が俺が早退する前に重い口を開いた。
「本気なのか?」
「本気じゃなかったらこんなバカな行動はしない。全くの他人だったら拒否をしていたかもしれないしな。」
「千景は他人ではないと・・・」
「俺の頭の構成では他人ではないな。」
「だってよ・・・いや・・・なんでもない。千景ちゃんと元気に通って戻って来いよ。」
亮はそれ以降、俺の話に来なかった。
「神崎君?」
「ん?どうした・・・麗華・・・って何で泣いてるんだ?」
「いや・・・言葉が見つからなくて・・・でも一言いいかな?」
「なんだ?」
「頑張って!」
「おう!」
そして、俺はクラスのみんなには検査入院という形で処理をした。本当の事は術日当日に知らされるけど・・・でも、皆からの応援が心に響いた。
家に帰って、勉強をした。いままでにないくらい勉強した。因みに、俺の両親からは、ビンタ等等、あらゆるDVを受け、勘当された。だから、今、俺は近所のカプセルホテルに居住している。そのことを知っているのは、亮、麗華、凛ちゃん、青羽先輩その四人だけだった。
次の日、俺の少し早い、期末テストが始まった。テストが終わった順から先生が採点してくれた。
結果は申し分なかった、全教科八〇点以上、高校生活での最高かもしれない。クラスの皆にばれないように、俺は帰宅した。
放課後、突然だが、青羽先輩から呼び出しがあった。場所は麗華の家。まぁ~兄弟だから普通なんだけど・・・
行くと、いつもの四人がBBQをしていた。
「おう!やっと来たな!」
「送別会や!」
「神崎君!早く食べよう!」
「千景ちゃんの事よろしくね!」
「お、おう!何か悪いな。でも・・・ありがとう!」
「辛気臭い顔すんな!早くしないと、肉なくなるぞ!」
「残念!先輩!それいただきです。」
「はっ!亮!彼氏だからって調子のんなよ!」
「気にしない!気にしない!先輩お詫びにこれどうぞ。」
先輩の皿・・・肉OUT ピーマンIN
「・・・目をつぶって歯を喰いしなれ!」
三十分後二人は壮絶?な肉採り合戦をしていた。その間、間の入るのを無視して、俺と麗華と凛ちゃんは、本当の送別会?をやって楽しんだ。
「本当に神崎君?大丈夫?」
「ん?あぁ~正直に言うと不安で一杯だ。親からも勘当を貰って、帰る場所もない。死ぬかもしれない。いろいろ考えると不安だけで押しつぶされそうだよ!」
「ちーちゃんは知ってるの?」
「術後に千景のお母さんから知らせるみたいだ。俺がドナーって知ったらあいつ手術を拒否するかもしれないし・・・」
「そうだよね。でも、私・・・まだ、みんなでまたこんなことしてみたい!」
「おう!千景が帰ってきたらまたやろうな!」
「神崎君もね。」
「そうだな。」
俺は今、この場を楽しんだ。いつも流行らないこともやった。たくさん話せた。悔いはない、そういったら嘘になる。でも、もう、吹っ切れた。俺はやる。そう自分の心に言い聞かせて・・・
「神崎。俺たちからの贈り物や!」
青羽先輩が亮と一緒に持ってきた謎の袋。男同士で少々気持ち悪いと思ったがいまはそんな事はどうでもよかった。袋を開けると、お守りだった。言葉は「安産祈願」だった。笑った。最高に笑った。
前日は楽しんだ。みんなにもお礼を言った。後は明日を待つだけだった。
「ねぇ~お母さん?私に骨髄を提供してくれた人って誰だろうね?」
「さぁ~分からないねぇ。でも、千景も頑張ってくれないと・・・提供してくれた人に申し訳ないよ!」
「そうだね。私・・・学校を卒業したいし・・・それに、かずくんともっと遊びたい!」
「かずくん?あぁ~神崎君ね。そうだね・・・どうせなら千景のお婿さん候補最有力になるといいね!」
「お母さん!冗談いうと怒るよ!」
「冗談じゃないよ。だって神崎君いい人じゃない。千景の体調をいち早く察知して、毎日、お見舞いに来て・・・」
「うん、私も、かずくんにお礼を言わなきゃ!退院したら私の気持ちを言ってかずくんの気持ちも聞いてみる!」
「そう。頑張るんだよ!・・・さぁ~明日は長くなるんだ!もう寝なさい。」
「うん。おやすみ。」




