夕焼け
夕焼けの光が廊下いっぱいに差し込む放課後。
食堂前の廊下で、ポスターを見ながら会話をする咲也と赤坂。
「はぁー。もういいや。帰る。」
咲也はそう言い、一人先に歩いた。
「当日になって逃げんなよ。この学校、行事サボると停学になるからなー。」
赤坂は背中を向けて歩く咲也に向かって言った。
「.......わかってる。」
小さく呟く咲也。
咲也達が通う学校は、普段はそこまで校則が厳しい訳ではない。
しかし、行事ごととなると話は別だ。
体調不良で休んだ場合は、病院の医師から診断書もらって提出しなければない。
そのお陰で、行事に関しての生徒の欠席者は常に皆無に等しかった。
「あ、咲也。」
後ろから声をかけたのは兄の桃也だ。
「もう帰んの??」
「ん。」
咲也は下駄箱で靴を履きながら応えた。
「だったらさ、帰りにスーパーでソース買って来て。」
「えー。」
咲也は一瞬で嫌そうな顔をした。
「さっき母さんから連絡来たの、帰りにソース買って来てほしいって。」
「だったら、トーヤが買って帰ればいいじゃん。」
「そうしたいけど、今日はこれから文化祭の会議で、帰り遅くなるの。だから、咲也が買って帰るって母さんに言っといたから。」
「は??」
「ごめん、会議始まるから!!じゃあ、頼むね。」
桃也はそう言い、廊下を走っていった。
そんな桃也の走り去る姿を、下駄箱で一人取り残されたかのように見つめる咲也。
夏の夕焼けは、オレンジ色の光が眩しいくらいに差し込み、その日の終わりを告げようとしていた。