双子
今日は始業式のため、授業は一切ない。
各クラスHRも終わり、生徒達は部活に行ったり、文化祭準備を始める。
「そう言えばさ、咲也今年のミスコンなんだろ???」
そう言ったのは、同じ遅刻常習犯の赤坂裕之だ。
咲也は朝、光樹にもそんなことを言われたことを思い出した。
「らしいね。今日知ったけど。」
咲也は不機嫌そうに言った。
「橘兄弟がミスコンに出たら、女子の注文の的だな。お陰で、俺が目立たなくなって助かったわ。」
赤坂は椅子から立ち上がり、バックを持って帰ろうとした。
「······目立たないって、もしかして赤坂も出るの???」
「そ。俺も自分が出るなんて、ポスター見るまで気づかなかったけどさ。」
赤坂は帰る足を止めて言った。
「そのポスターって、どこにあんの??」
咲也は赤坂に聞いた。
「んー。廊下。一緒に見に行く??」
「うん。」
二人は一緒に教室を出た。
食堂前の廊下。
二人は並んでポスターを見ていた。
「他にも、職員室前とか、下駄箱のとこ、あと第二校舎の廊下はこっちよりも大量に貼ってあるよ。」
赤坂は詳しく話した。
「はぁー。本当にめんどくさい。」
咲也はボソッと呟いた。
「咲也ってさ、桃弥君と真逆の性格だよね。」
赤坂は咲也の顔を見て言った。
「当たり前でしょ。双子だからって、性格まで似てたら気持ち悪い。」
咲也は桃弥と比べられることが、とても嫌いで少しムッとした。
「今、桃弥君と同じこと言った。」
「は??」
咲也は意味がわからない。
「俺、1年の時桃弥君と同じクラスだったんだけど、その時、桃弥君が『双子だからって、同じ性格だったら気持ち悪いでしょ。』って言ったことあってさ。今の咲也と同じこと言うから、やっぱ兄弟なんだなーって。」
赤坂は笑って言った。
咲也はその時、なんとも言えない気分になった。
今までは何かに付けて、桃弥と比べられることばかりだった。
勉強やスポーツ、生活態度だったり、発言や行動まで。
それは、自分という存在がないがしろにされているようで、一人の人として見てもらえない、そんな気がしてた。
それが今、比べられる訳じゃなく、兄弟として見てもらえた。
咲也は初めて、嬉しいような、気恥しいような、言葉に出来ない不思議な気分になった。