日常
始業式が行われる体育館。
そこには床中、体育や部活で使用するコートの線がいくつもの色と長さで溢れている。
そして、体育館独特の匂い。
桃也達が通う学校にはクーラーなんてものはない。
そのため全校生徒が集まるこの体育館は、蒸せ返るような暑さだ。
窓を開けたところで、風が涼しいと感じることはない。
誰もが思う、早く終わってほしい校長先生の長い話。
いつの時代も、学生にしかわからない時間の流れがあった。
「相変わらず校長の話長すぎ!!何言ってんのか、さっぱりわかんねぇし。しかも暑いし。」
光樹は教室に戻り、口を開くや否や愚痴をこぼす。
「確かに話はちょっと長かったけど、わからないことはないよ。簡単に言えば、新学期も勉強やら、部活やら、行事に全力で取り組めってことでしょ。それに暑いのは仕方がないよ。夏なんだし。」
桃也の言うことはごもっともだ。
「さっすが、生徒会執行部副会長。言うことが違うね!!」
桃也のことを副会長を呼ぶのは、桃也と同じクラスで執行部メンバーの加藤瞬。
「瞬、お前先週のミーティングの議事録まだ提出してないだろ。佐伯先輩が怒ってたよ。」
桃也は瞬に言った。
「やっべ!!忘れてた!!あー、今日会ったら絶対怒られる!!もう、どーしよー!!」
頭を抱える瞬。
「ほら、お前ら席着けー。HR始めるぞー。」
教室に響く男性の声。担任の加賀谷先生だ。
桃也達の隣のクラスでは、女性の声が響いていた。
「来週はいよいよ文化祭ね。みんな、夏休みも準備のために朝早くから来てくれた人や、部活が終わってから準備を手伝ってくれた人、本当にお疲れ様です。最後までみんな、準備頑張って下さい!!」
咲也のクラスの担任、安藤先生が生徒達に労いの言葉をかけた。
「はーい。じゃあ、HRはこれで終わりです。明日から通常授業だからね!!!みんな遅刻しないように。いいわね、橘君と赤坂君??」
安藤先生が、咲也と赤坂を見た。
「俺、遅刻なんてしたことありませーん。」
赤坂はおどけて言った。
「········。」
咲也は何も言わず、窓の外を眺めていた。
「二人とも、遅刻の常習犯でしょーが!!!」
安藤先生は少し怒った口調で言った。
咲也はそんな安藤先生の言葉も聞かず、ただ外を眺め、早く帰りたいと思っていた。
また始まった学校生活。
そこにはいつもと変わらない日常が広がっていた。