登校
長かった夏休みも終わり、今日から新学期。
双子の兄、橘桃也。
双子の弟、橘咲也。
二人は同じ高校に通う高校2年。
「おはよう!!桃也、咲也!!」
「おはよう、光樹。」
「おはよ。」
二人に明るい挨拶をしてきたのは、幼なじみの一宮光樹。
「桃也は夏休み中、学校でちょくちょく会ってたけど、咲也は終業式以来だな!!!元気だったか???」
光樹は咲也の肩を軽く叩きながら言った。
「うん。元気。だから触んないで。」
咲也は光樹の手を払いよけた。
「咲也は相変わらずクールだねー。」
光樹は気にせず咲也に話しかける。
「そうそう!!今年のミスコンお前ら二人とも候補に挙がってたな。」
光樹は笑顔で言った。
それを聞いた咲也は
「は??何それ??」
一瞬で不機嫌。
「え??咲也、お前自分がミスコンの候補に挙がってるって知らねーの??夏休みになってから、校内中にポスター貼ってあったじゃん。」
「ポスター??知らない。」
咲也は基本、学校行事に全く興味がないためポスターの存在すら知らなかった。
「トーヤは知ってたの??」
「知ってたよ。一応執行部だし、文化祭の出し物は把握しておかないといけないからね。」
落ち着いた口調で話す桃也。
桃也達が通う学校の文化祭では、毎年ミス・ミスターコンテストが行われる。
全校生徒の中で、学年問わず、最も可愛い人や恰好いい人、もしくは綺麗な人、知的で品がある人を候補者に推薦し、その中から選ばれた人がミス・ミスターになれる。
今年は、そのミスコンの候補者に桃也と咲也が推薦されたのだ。
「誰が推薦なんてしたの??」
咲也は少しイライラしながら聞いた。
「たぶんって言うか、絶対女子だろーな。」
光樹は断言した。
「それはどうかな??先生かもしれないよ。」
二人の少し先を歩く桃也が言った。
「教師が推薦してどーすんだよ。学生の行事だろーが。」
光樹は桃也に言った。
「先生だって、なんだかんだ言って行事好きだから、そういうのにすぐ参加するんだよ。それに、ミスコンに推薦されると本人の意思に関係なく、強制的に参加させられるから、サボりそうな生徒を推薦して逃げられないようにできるしね。」
淡々とこたえる桃也。
「策士だな。」
光樹はその時、教師の怖さを知った。
夏休みが明けて、最初の登校日はとても晴れていた。