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王の匠  作者: 朝川 椛
終わる世界の中で
88/101

5-17

 嫌な汗が額をつたう。エリオット公と対峙したケイは奥歯を噛みしめ、ともすれば震えそうになる両手を叱咤した。その足元に、サーマが寄り添う。近くにいてくれるのはありがたいが、少し動きがとりづらい。


(仕方ないか)


 何処かに行かれてエリオット公やチサに捕えられてしまうよりはましだろう。ケイは腹を括り、ユーリへ視線を送った。こちらの視線にユーリが頷き、ユミの所へ向かい駈けだす。アーナとルーも彼女の後に続いた。


「行かせんよ」


 走り出したユカリィたちに気づいたエリオット公が薄く笑う。ロングソードと金糸を引きだし剣に絡ませ格子状に虚空へ縫いつけた。ケイと四人の『伝説のロア』たちは一様に吹き飛ばされ、倒れ込んだ。痛みをこらえながら起きあがりすぐに体勢を立て直すと、四人のユカリィたちもそれぞれに立ちあがるのが見える。ケイは胸を撫でおろしながら長針ニードルで素早く幾何学模様を描いた。その横からユーリが矢を放ち、アーナとルーもエリオット公に向かっていく。

 硬く高い鋼鉄の音がして、アーナの繰りだす斬撃をエリオット公が受け流した。背後から襲いかかるルーも金糸で払いのけ、鳩尾に肘を撃ちこむ。まともに攻撃を受けたルーはこちら側へ飛んだ。


「ファスナ! イリュー!」


 ケイが叫ぶと、緑色の道化師姿の男と茶色い服を着た小太りの老人が現れた。


「頼む」


 言葉短かに長針を掲げると、風と炎の記憶は深々と礼をし、ケイの長針へ炎と風を絡ませる。前方では、アーナとエリオット公の激しい剣戟が続いていた。


「アーナ様!」


 ケイがアーナに呼びかけると、声に反応してアーナもエリオット公から飛び退る。その隙にルーがエリオット公の両足を掴んだ。ケイは即座に幾何学模様を虚空へ縫いこみ、風と炎を纏わせた長針をエリオット公に投げつける。エリオット公がそれを剣で退けようとする瞬間、ケイは金糸を両手で回転させた。


「何っ!」


 突然目の前から長針が消えたかのように見えたのだろう。エリオット公が瞠目する。


「ユーリ様、アーナ様! 今のうちに!」


 こちらの言葉に反応して、ユーリとアーナがユミのもとへと走った。儀式を行っていたチサがそれに気づき、金糸をユーリたちへ投げつける。ケイはその隙に長針をエリオット公の後ろに回し、強く金糸を引き戻した。長針が、纏わせた風によって高速でエリオット公の背後を狙う。しかしながら、不敵な笑みを浮かべたエリオット公がロングソードを真下にいるルーへ向かい突き立てる。


「わわっ!」


 ルーが慌てて飛びすさるのと同時に、エリオット公がケイの長針を打ち払おうと剣を引き抜き、背後を振り返ってきた。

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