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王の匠  作者: 朝川 椛
終わる世界の中で
85/101

5-14

 先の見えない細い通路。整備はされているようだったが、これでは先へ進むのも一苦労だ、とケイは長針ニードルを取りだす。細い尖端に素早く金糸を巻きつけ、ファスナを呼び火を起こした。長針の先端に小さな明かりが灯る。それを頼りに奥へ進むと、俄かに空間が広がった。明りを高く掲げると、中央に丸く分厚い鉄板のようなものが浮いているのが見える。


「転送装置ではないか!」


 ジョージが珍しく興奮したように叫んだ。


「わしらでもまだ実験段階の物を。あやつは開発に成功しておったと言うことか!」


 心底口惜しげに呟くジョージを尻目にケイは円盤へ近づく。それをしげしげと眺め、一行に向き直った。


「どうやらこの先に行くにはこれを使うしかないみたいだな」


 断定すると一同は頷き円盤へ近づく。ケイは円盤に手で触れながらスイッチを探した。だが、それらしい物はどこにも見当たらない。


「どう使えばいいんだろう?」

「いいえ」


 首をかしげるケイに答えたのは予想していた声ではなかった。


「これ以上、先へは行かせるわけには参りません」


 声の主はエリオット公の側近にして腹心のロス・カルロスだった。ロスは二藍色をした輪無唐草りんむからくさのフラック姿で、ケイたちの前に立ちはだかる。


「お前の主がこの世界そのものを滅ぼそうとしていてもか?」


 問うジョージにロスが黙って頷いた。


「そうなればお前の主も無事では済まんのだぞ?」

「それが主の望みであればいたし方ありませぬ」

「そうか」


 言い切るロスにジョージが深い溜め息をつき、一歩前に進みでる。


「ならば、わしも相手をせぬわけにはいかんの」


 ジョージがこちらへ振り返り、真剣な表情でケイを見つめた。


「あやつはわしが相手をする。お前たちは先へゆけ」

「それなら、私が残るわ」


 言いながら進み出てくるチサに、ジョージが頭を振る。


「お前は駄目じゃ」

「なぜ? 私では信用できないということ?」

「それもあるが。わしはな、チサ。いや、ケイもじゃが、お前が何を考えておるのか大体予想できておるんじゃよ」

「だったら尚更!」

「いやいや。だからこそ、お前は先に進まねばならんのだよ。そして改めて考えるんじゃ。お前が真にどう在るべきかをな」


 ジョージがチサを見つめ、ふと瞳を和ませた。


「わしはお前と再会できたことを嬉しく思っとるよ。だが、それと同時に悲しんでもおる。お前にたくさんの血を流させたのは、わしのせいでもあるからの。また、お前を無事にここまで育ててきたのは他でもないカイトじゃ。その点についてはの、わしはあやつに感謝さえしておるのだ。あやつの気持ちもまったく理解できんわけでもないしの」

「ならばカイト様につくわけにはいかないの?」


 縋りつくように尋ねてくるチサを前に、ジョージが黙りこむ。ケイは黙するジョージに代わって口を開いた。

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