5-14
先の見えない細い通路。整備はされているようだったが、これでは先へ進むのも一苦労だ、とケイは長針を取りだす。細い尖端に素早く金糸を巻きつけ、ファスナを呼び火を起こした。長針の先端に小さな明かりが灯る。それを頼りに奥へ進むと、俄かに空間が広がった。明りを高く掲げると、中央に丸く分厚い鉄板のようなものが浮いているのが見える。
「転送装置ではないか!」
ジョージが珍しく興奮したように叫んだ。
「わしらでもまだ実験段階の物を。あやつは開発に成功しておったと言うことか!」
心底口惜しげに呟くジョージを尻目にケイは円盤へ近づく。それをしげしげと眺め、一行に向き直った。
「どうやらこの先に行くにはこれを使うしかないみたいだな」
断定すると一同は頷き円盤へ近づく。ケイは円盤に手で触れながらスイッチを探した。だが、それらしい物はどこにも見当たらない。
「どう使えばいいんだろう?」
「いいえ」
首をかしげるケイに答えたのは予想していた声ではなかった。
「これ以上、先へは行かせるわけには参りません」
声の主はエリオット公の側近にして腹心のロス・カルロスだった。ロスは二藍色をした輪無唐草のフラック姿で、ケイたちの前に立ちはだかる。
「お前の主がこの世界そのものを滅ぼそうとしていてもか?」
問うジョージにロスが黙って頷いた。
「そうなればお前の主も無事では済まんのだぞ?」
「それが主の望みであればいたし方ありませぬ」
「そうか」
言い切るロスにジョージが深い溜め息をつき、一歩前に進みでる。
「ならば、わしも相手をせぬわけにはいかんの」
ジョージがこちらへ振り返り、真剣な表情でケイを見つめた。
「あやつはわしが相手をする。お前たちは先へゆけ」
「それなら、私が残るわ」
言いながら進み出てくるチサに、ジョージが頭を振る。
「お前は駄目じゃ」
「なぜ? 私では信用できないということ?」
「それもあるが。わしはな、チサ。いや、ケイもじゃが、お前が何を考えておるのか大体予想できておるんじゃよ」
「だったら尚更!」
「いやいや。だからこそ、お前は先に進まねばならんのだよ。そして改めて考えるんじゃ。お前が真にどう在るべきかをな」
ジョージがチサを見つめ、ふと瞳を和ませた。
「わしはお前と再会できたことを嬉しく思っとるよ。だが、それと同時に悲しんでもおる。お前にたくさんの血を流させたのは、わしのせいでもあるからの。また、お前を無事にここまで育ててきたのは他でもないカイトじゃ。その点についてはの、わしはあやつに感謝さえしておるのだ。あやつの気持ちもまったく理解できんわけでもないしの」
「ならばカイト様につくわけにはいかないの?」
縋りつくように尋ねてくるチサを前に、ジョージが黙りこむ。ケイは黙するジョージに代わって口を開いた。




