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王の匠  作者: 朝川 椛
フルニエス
60/101

3-32

「ま、いいわ。一度しか言わないから良く聞いてね。タレアスクの『陽炎ヒートへイズ』があと数日で限界に達するわ」

「嘘だろ?」


 ケイは目を剥いてルージェに問いかける。だが、そんなケイの視線をすんなり受け流し、ルージェがごく真面目な口調で答えた。


「事実よ。私が嘘を言う存在でないことは知ってるでしょう。タレアスクのエリセーエフ家及び当主は『陽炎ヒートヘイズ』を維持するのが困難になりつつある。耐えてあと十四日といったところだわね。譲治はあなたに何が何でも女王を守り、『伝説のロア』の封印及び奪われた『陽蕾』を取り戻してほしいそうよ?」


 ルージェの言葉に、ケイは大いに慌てる。


「ちょっと待てよ。いくらなんでもそりゃ荷が勝ちすぎだろ。俺一人でどうやって他七個もの『陽蕾』を奪ったヤツと戦えっていうんだよ! だいたいこうなった以上、陛下はセント・エトランディアに戻るべきじゃないのか? この国にいる方がよほど敵に……って……」


 ケイは沈黙し、臍を噛む。楽しげに瞳を輝かせているルージェをひたと見据えた。


「それが狙いか」

「何が?」


 剣呑な響きを滲ませ問うケイに、ルージェがくすくすと笑う。


「ユカリィをおとりにするつもりなんだな」


 怒りをこめて確認すると、ルージェが大仰に肩を竦め訂正してきた。


「するつもりなんじゃなくて、してるのよ」

「何考えてんだ祖父さんのやつ」


 まったくもって忌々しい。ケイは苛立ちまぎれに思いつく限りの悪態をつく。するといつの間にか笑いをおさめていたルージェが、真剣な眼差しでこちらを見つめているのに気がついた。


「譲治はそういう人よ。レイラリアとしての誇りが彼のすべて。今のあなたに足りないものだわね」

「そんなもので生きていけるわけじゃない」


 吐き捨てるように呟くと、ルージェが小さく首をかたむける。


「でも人間にとっては必要不可欠なものだわ。いずれあなたにもそれが必要となる時が来る。その時までに、あなたなりのやり方で今出来る精一杯のことをしなさいな」

「それがお前の望むことなのか」


 軽い気持ちで尋ねたが、返ってくる言葉はなかった。

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