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王の匠  作者: 朝川 椛
フルニエス
50/101

3-22

「これがリチャード流の会話術ってやつなのさ。それよりお前、店の方はいいのか?」


 こちらの問いかけに、タカが肩をすくめる。


「こんなご時世だからね。開店休業ってやつだよ。おじいちゃんとこの本店もそうだろ?」

「まあ、確かにそうだが。でも、叔父さんたちは? もしかしてお前が城に上がったのか?」


 尋ねるケイに、そういうこと、とタカが自慢げな表情を浮かべた。


「まあ、僕は城付きになったばかりだから。今は父さんと兄さんが外回りを担当してるってわけ」

「よく継ぐ気になったな」


 ケイは心からの感嘆を込めタカを見つめる。するとタカは、フルニエ侯がお優しい方だからさ、と照れたように頭を掻いた。


「だから、できるだけお側でお仕えしたいと思ったんだ。それに、ユミ様も心配だったしさ」


 紡いだ言葉がとりわけ優しく感じるのは気のせいだろうか。ケイは頬が赤く染まるのをごまかそうとそっぽを向く従弟の姿に、口元を緩める。このまま何もかも忘れて、この宴を心ゆくまで楽しんでしまおうか。脳裏をそんな思いが一瞬霞め、ケイはゆるゆるとかぶりを振った。


「ケイ?」

「どうした?」


 ユカリィとタカが問う。二人同時に心配されて、ケイは思考の迷路から舞い戻った。今は情報だ。ケイはでき得る限りに陽気な笑みを浮かべると、タカへさり気ない口調で尋ねた。


「お前、ユミ王女と親しいのか?」


 タカは造作もなく頷き、だが少し戸惑ったような表情を浮かべる。


「小さい頃から、一緒に遊ぶ機会が多かったから」

「今のユミ様のご様子をどう思う? お前とは、お会いすることがあるのか?」


 ケイの畳みかけるような口調に、タカが首を横に振った。


「ううん、まったく。いつも御部屋の前で門前払いさ。御声でさえまったく聞かせてはくださらない状態だよ」


 タカが沈んだ声で足元を見つめる。やがて顔をあげると、打って変った明るい笑みで、けど、と言葉を続けた。


「あんまりその事に関しては心配してないんだ。ユミ様が御籠もりになるのって、実は二度目だし」

「どういうことだ?」


 眉根を寄せケイは訊く。タカは記憶を辿るように斜め上を見あげつつ答える。


「確か、三年前だったかな? ちょうど今回みたいに何ヶ月も御部屋に籠もって、誰ともお会いにならなかったんだよ。それを案じたカレン様の意を汲んで、侍女の一人が一計を案じ、見事ユミ様のお心を溶かしてみせたって話だよ」


 誰だったっけ、と腕を組んで考えこむタカに、ケイが助け舟をだす。


「ディアか」

「あ、そうそう。その子」

「ディアも小さい頃からこの城にいるのか?」


 重ねて尋ねるていると、斜め後ろから声がかかった。

≪お礼≫

ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。

新たにお気に入り登録してくださった方、初めて読んでくださった方、

そして当初からずっと読んでくださっている方がた、本当にほんとうにありがとうございます。

これからもがんばっていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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