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王の匠  作者: 朝川 椛
眠らぬ夜の四重奏
5/101

1-5

「呼んだ?」


 女は錫杖しゃくじょうにまたがり、わざとらしくしなを作ってケイを見つめる。ケイは視線をそらし、明後日の方に目をやった。


「お前はまたそんな格好で」

「似合う?」


 ルージェが潤んだ藍紫しあん色の瞳を瞬かせ、顔を寄せる。

「性別なんてないくせに」


 ケイはそっぽを向いたまま半眼でぽつりと呟いた。とたんに、錫杖の先端をつま先にぐりりと押し当てられる。


「痛ってぇなあ! ホントのことだろ!」

「この世には言っていいことと悪いことがあるのよ」


 錫杖を鳴らして怒るルージェに、ケイは顔を顰めながら話を戻した。


「悪かったよ。でも今は一刻を争うんだ。『ロア』が出た」

「そのようね」


 ルージェは興味がないと言わんばかりにあくびをし、肩をすくめる。


「今どこにいるのか教えてくれないか?」

「イヤ」

「おい」


 ケイは眉間に皺を寄せ、即答したルージェを見つめた。


「あたしはあんたたちの言う『全ての事象の記憶(マインド・オブ・マインド)』なのよ? 他の奴らと違ってあんたに使役されてるわけじゃないんだから」


 ルージェは、物憂げな表情で長い黒髪を掻きあげる。


「だいたいそれくらいあんたなら訳ないはずでしょ、ねぇ? 『月の民レイラリア』の末裔にして『王に印を刻みし者』都基山螢ときやまけい。海に囲まれていたこの地が陸続きとなりし時、それを治めた誇り高き者たちの末裔よ」


 瞳を細め、ケイの肩にしなだれかかるルージェ。そのままケイの淡い焦げ茶色の髪を一房取って弄ぶ。ケイは顔をそむけ、鋭く吐き捨てた。

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