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「ずっと探してたんだよ?」
「悪いな、ちょっとたてこんでて」
ケイは嬉しげに笑いかけてくる少年と握手を交わす。縹色をした鳥多須岐文様のサーキュラーケープに黒のキュロット。黒のブーツという釦師特有の服装に身を包んだ少年は、ゆっくりと視線をユカリィへ向ける。
「はじめまして。フルニエスの釦師で、タカ・都基山と言います。お噂はケイからかねがね伺っておりますよ、リチャード・ルイスさん」
無邪気に手をさしだしてくるタカに、ユカリィも臆することなく手を握り、初めまして、と淡々とした表情で答えた。タカが、はあ、と感心したような声をあげる。
「さすがテルモアの釦師さん、本場の紳士はなんか違うなあ」
「そうか?」
内心どきりとしながら笑んで見せるケイに、タカも笑顔で答える。
「うん、なんかすごいよ。優雅っていうか、所作に無駄がないっていうか……。何より堂々としてるもん、さすがだなあ」
「ははは」
背中に嫌な汗が噴き出てくるのが分かる。早く話を変えなければ。そう思うケイを尻目に、ユカリィが尋ねてきた。
「ケイ、彼はケイの身内なのか?」
「ああ、従弟だよ。確か年は……」
「今年で十四になります、ルイスさん」
「そうですか、お若いのに立派ですね」
ユカリィの言葉にタカが首をかしげる。一瞬目を丸くして、火がついたように笑いだした。
「ルイスさん! それってもしかして冗談ですか?」
涙を拭きふきタカが尋ねる。
「いや、そんなつもりでは」
「僕らの職業は『六つになったら一人前』が常識じゃないですか」
それともテルモアでは違うんですか、と笑いをおさめ、本気で訊いてくるタカ。返事に窮するユカリィに苦笑しつつ、ケイは首を左右に振った。




