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王の匠  作者: 朝川 椛
フルニエス
40/101

3-12

「あれれ? この人しってる。この前のわるい人だね」


 無邪気に問うルーに、呼吸を整えながら碧仮面が小さく頷く。


「そうだ」

「ころしちゃっていい?」

「だめだ」


 小首を傾げるルーに、碧仮面が短く答える。ルーは露骨に顔を膨らませ、不服を露わにした。


「ぶう」


 碧仮面はルーの抗議を無視し、予断なくケイたちに視線を送りながら、短く言い捨てる。


退くぞ」

「はあい」


 元気よく手を挙げるルーとは対照的に、碧仮面はゆっくりとケイたちと間合いをとっていく。


「忘れるな」


 仮面の奥の瞳が妖しく輝き、碧仮面が低くうなった。


「いずれ時が来たなら、その時は間違いなくお前を殺す」

「ばいばあい」


 碧仮面は、手を振るルーをボタンに戻して飛び退ると、森の奥へ消えた。ケイは完全に気配が消えたことを確認してから、緊張を解く。ふいにまばゆい光が起こり、振り向くと元の姿に戻ったユカリィがいた。


「大丈夫か」


 ユカリィがケイの腕を見ながら問う。ケイは頷き、かすっただけだ、と答えた。


「それよりどうする。やっぱり君は帰った方が良くないか?」

「いや、まだだ。奴の言った『主』とやらが何者なのかがわからなければ、どこにいても同じだ」


 ケイは諦めを滲ませつつ、それでもやはり尋ねてみる。


「罠だとわかっていても、か?」

「言ったはずだ。私にはやるべきことがあるんだ」


 短く言って歩きだすユカリィ。ケイは両手を後頭部で組みながら、空を見あげた。雲一つない水色の世界。果てのない様は、これから起こりうる諸々《もろもろ》を映し出しているようだ。


「忘れてないさ」


 ケイは視線を戻し、ユカリィの後ろ姿を眺めぼやいた。


「忘れたかったことは確かだけどね」


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