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王の匠  作者: 朝川 椛
眠らぬ夜の四重奏
3/101

1-3

 魚が小さな水音を立てて海へと落ちていく。

空には月が輝き、星が瞬き始めた。女王ユカリィが眠りに就き、夜がやって来たのだ。


(早すぎる)


 ケイはほぞを噛み、眠りについてしまった少年を静かに船へとおろす。

船上の人々も皆深い眠りに就いていた。早急に船を何とかしなければ。

ケイは『風の記憶マインドイリュー』を呼ぶ。


「船を無事港へ送り届けてくれ。俺は一足先に街へ行く」


 ケイの言葉にイリューは姿を見せず、かしこまりました、としわがれた声のみで答えた。


「『ロア』ですか?」


 イリューの問いに、ああ、とケイは苦々しく頷く。

「急がなくちゃならなくなった」

「しかし、この船の大きさではコントロールが難しいかと感じますが。貴方様の精神力が持つかどうか」

「持たせるよ」


 苦言をていするイリューにケイは確信を持って答えた。

「貴方様がそう言われるなら何も言いますまい」

「ありがとう、イリュー」


 礼を言って空へ駆けあがる直前、ケイは眠っている少年を振り返る。

何の夢を見ているのだろう。幸せそうな笑みを浮かべ静かな寝息をたてている少年に、そっと呟いた。


「やれるだけはやってみるよ」


 セント・エトランディア。みんなの、そして己の故郷だ。ケイは気合いを入れ、暗闇の中明りが点在する前方の陸地を見やった。明日という日常が、朝がやって来るように。この人たちの笑顔をまた無事に見ることができるように。今はとにかく、自分のできることをやる。


(本当は、まだ帰りたくなかったんだけどさ)


 少しだけ往生際の悪い本音を内心で吐露とろすると、ケイは夜空を駆けて一路地上を目指した。



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