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王の匠  作者: 朝川 椛
疑惑と旅立ちと
27/101

2-14

「フルニエス城へ同行させて欲しい」


 瞬間、ケイは固まる。周囲に緊張が走るのがわかった。唾を呑みこみ、女王の両目を見つめる。


「冗談で言っているのではない」


 女王は立ち上がり、ケイの前へとおりる。


「余はフルニエス城に行かねばならないのだ」

「お受けできません」


 ケイは女王の瞳から目をそらすことなく、はっきりとした口調で拒絶の意を表した。


「なぜだ」

「危険だからです」

「余は武術にも多少の自信があるぞ」

「私どもでも敵うかどうか分からぬ相手。陛下が敵う相手とは思えません」

「どうしても駄目か」

「はい」

「これでもか?」


 はい、と即答しようとした時、ユカリィ女王はおもむろに取りだした短剣で、綺麗に巻かれた翡翠の髪をざくりと切った。


「なんてことを!」


 エリオット公が叫び立ち上がる。だが、慌てて止めに入るエリオット公ら配下の目の前で、女王はあっと言う間に豊かな巻き毛を短髪へと変えてしまった。


「余の覚悟だ。これでは不足か?」


 呆気にとられたケイを淡々と見おろし、女王が問う。押さえつけてたたいてしまおうか。ケイはふつふつと湧きあがる怒りに震えながら、それでもなんとかこらえきっぱりと言い放った。


「駄目です」

「これでもまだ足りぬ、と?」

「足りるとか足りないとかの問題じゃあありません。こんな茶番につき合っていられるほど、こっちは暇じゃあないんですよ。貴女は狙われているんだ。わかりますか、女王」


 腰を上げながら、声を荒げて女王に詰め寄る。ああ、と事もなげに頷く女王を見て、舌を打ち、やってられないと踵を返した。


「これじゃあ、死んだ父さんも浮かばれやしない」

「父さん? 父親のことか?」


 小さな呟きを聞きとがめ、問い質す女王。その声を無視して、ケイは一人謁見の間を後にした。

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