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「つまり、ユカリィ女王が『伝説のロア』を発現させていると、メリル・マルソーニの封印されたボタンが復活する以上に危険ってことか?」
前方で歩みを進めていた祖父に問いかける。
「そうじゃ。そして、それだけではない」
ケイは眉を顰めた。祖父が立ち止まりちらりとルージェに視線を送る。ルージェは頷きケイへ向き直った。
「ユカリィ女王は『伝説のロア』を発生させるだけではなく、太陽力を一つに束ねるだけの器を持った方だということです」
「じゃあ女王はメリル・マルソーニの……」
「そうです。かつては『愛の蕾(ボターナ・オブ・ズィ・ラブ)』と呼ばれ、今は『血の蕾(ブラッディ・ボターナ)』と恐れられるメリル・マルソーニの記憶を封じたボタン。彼女はそれを身に着けられるだけの器を持っているのです。しかしながら困ったことに、『血の蕾』の鍵となっている王のボタン『陽蕾』が七つも相手方に盗られてしまった。このままでは『血の蕾』の封印が解かれるのも時間の問題です」
厳かな口調で紡がれた言葉に沈黙がおりる。いつの間にか来ていた林の中で、重い空気が周囲を包んだ。
「でも」
沈黙を破ったのはケイだった。
「それって、逆に制御も可能なんじゃないのか?」
「確かにその可能性もあります。けれど、同時にそれを試すのにはそれ相応の覚悟も必要でしょう。器があるというだけではどうにもならない。ユカリィ女王にすべての記憶と力を制御するだけの精神力があるかどうかが問題なのです。今の彼女にそれだけの力がありますか?」
言葉を切ったルージェは、先頭で控えていたロスに問う。ロスは長い沈黙の後、首を横に振った。
「残念ながら」
「まあ、なにしろ『伝説のロア』を発現させておるくらいじゃからな」
溜め息混じりに呟くジョージに、ケイは唇を噛みしめる。
「つまり事態を終結させるには、『伝説のロア』を封じるか、『陽蕾』を守るしか方法がないってわけか」
「そういうことじゃな」
頷きながらジョージがケイへ近づき、その頭に手を置く。
「まずは碧仮面と『愛情』様の捕獲が先決じゃよ。碧仮面の持つロスタルムはわしらの使っているものとは違う」
確かに、あのロスタルムはケイたちのロスタルムとは違い、碧く輝いていた。しかもどんなにやっても封じられなかった『愛情』を、たやすく封じてしまったのである。『伝説のロア』を封じるためには、絶対にあのロスタルムを手に入れなければならない。そこまで考えて、ケイはふと妙案を思いついた。




