祝 60話 映画のラストシーン
なし
はるか向こうの
グランドに
遠くで
一人佇む人がいる
背が高く
すらりとしている
オハラだ
うちらの姿を
見て
すごく大きく
手を振る
何度も何度も手を振る
本当に一生懸命
手を振っている
泣いているんじゃないか
だいぶ近づいたら
オハラが向こうから
駆けだしてきた
そんなに急いで
転ぶなよ
すごい勢いだ
息せききって
やってきた
大丈夫
はっちゃきのたんかに
駆け寄る
はっちゃき
ニコッと笑って
大丈夫
オハラも
力がぬけたようだ
肩でわかった
私の方を見る
よかった
目でそう合図しているようだ
何もしゃべらない
でもその目に
きらりと光るものが
あったのは
見間違いだったか
たんかと並行して
歩きながら
はちゃきに
言葉をかけている
そのまま医務室に
行くらしい
明るいところで
もう一度みてみるそうだ
よかった
あとは二人にまかせよう
どんぐりと並んで
見送る
いいムードだ
よくある映画の最後のシーン
ここで
主人公は
いつもかっこいい
氣のきったことを
ぼそっと言うんだ
おれもなんか
どんぐりに言ってやろうと
考える
しばし沈黙
俺が言おうとする
そこへ
先に口をはさむ
どんぐり一言
メシだ
ムードもなにも
あったもんじゃない
がっかりだ
私の落胆にかまわず
どんぐり
宿舎と反対の方に
歩き出す
どこへ行くのだ
なし