野バラ
なし
街としては
大きすぎ
高層の建物が多いが
そこはかつて
避暑でよく何週間も滞在した
ニースに似ていた
坂や意外に多い緑が
そういわせたのか
しれない
坂をのぼると
教会が見える
わざわざ
出迎えてくれた理事長は
まさにシスターであり
フランスから
異国の地
日本に来た
彼女に優しかった
学校は伝統ある
お嬢様学校であった
その進学先は有名な
Tをはじめ、K、A、J大など
幅広かった
普通科2年に編入され
彼女の新たな高校生活がスタートした
さすがに何回も
外国からの
転入生がきており
珍しくないのか
帰国子女のオハラは
すぐに
とけ込むことができた
が
やはり母仕込みの
ジャパニーズが
ものをいったらしい
まわりを取り巻く友人は
一様にフランスでの生活を
聞きたがった
彼女はきわめて
丁寧にかつ親切に一人一人に
応対した
全くえらぶるところはなかった
夏の入道雲 猛暑がさり
残暑とよばれる暑さが
続き
季節は秋になろうとしていた
その日
いつもどおりに
彼女は登校した
残暑ながらも
過ごしやすい季節になってきた
朝、いつものように
グッドモーニングと
言って教室に入室する
が
その日に限って
彼女の周りには
いつもの友だちはこない
軽い違和感を感じながらも
いつも通りに授業をうけた
しかし
休み時間は2、3人の子が
話に来てくれて
自分の心配は杞憂かと
思った
ところが朝は
次の日も同じであった
そして
休み時間は
誰も話しかけてこなくなった
こちらから話にゆくと
なんとなくさけられている
感じがした
ある日の音楽の時間
わらべは~みいたあり~
のなかのばあらあ~
宝塚のような
かといってどこか懐かしい
歌を歌い終え
みんなが教室を出ていった後
オハラは女教師に
呼び止められた
音楽教師は若い臨時の先生で
外国での留学経験があるらしく
なぜかとても氣さくな女の先生だった
何度か彼女と話をしたことがあったが
呼び止められたのは
はじめてだった
彼女は誰もいなくなると
こう言った
「野バラよ」
「野バラには氣をつけなさい」
その事をつたえると
何事もなかったように
彼女は準備室に去った
まだ
その意味が彼女にはわからなかった
なし