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音のない景色
なし
誰だ
携帯を鳴らしているのは
と思いながら
実は自分だったわけで
気恥ずかしい
携帯を止めようにも
船の幅がせまいので
あわててしまう
ごそごそする
パカッと
携帯を開く
着信は
母とある
とらずに
すぐ切る
あわてて
携帯を水に落とす
ところであった
危ない
船はゆっくり
また広い所にでた
最初のところだ
オハラの手をとって
降ろしてあげながら
携帯の電源を
復活する
通路を歩きながら
連絡する
「どうした」
「あんた今どこ」
いつも物静かな母だが
今日は
声がきつい
後ろには
空港の発着を知らせる
アナウンス
「おじさんが
亡くなったわよ」
ゴー
音のない景色
「もしもしもし」
続く声に反応出来ない私
なし




