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「消えた小麦袋」

街の小さな探偵団


第一話「消えた小麦袋」

朝の市場は騒がしかった。

パン屋の前で怒鳴り声が響いている。

「ちくしょう、よりにもよって!」

パン屋の主人が頭を抱えていた。

警備兵のジルが面倒そうに聞く。

「何だ?どうした?」

主人は店の奥を指さした。

「小麦だよ!」

袋が置かれていた場所。

「小麦が盗まれたのか?」

警備兵はあきれた顔で主人を見る。

「大事な小麦だ!」

「ふすまの皮を全部取り除いた上等な真っ白な小麦粉だぞ!」

警備兵が眉をひそめる。

「そうか」

「頼む、難しいことはわかってる。それでもどうにか見つけてくれないか?」

警備兵は腕を組む。

犯人が中身を知ってるかはさておき、夜の間にパンじゃなくて小麦を奪っている。

証拠隠滅しやすいから正直犯人を見つけるのは難しそうだな・・・。

「わかった、探してみるよ」

警備兵の答えに期待は持てないが、主人は見送るしかなかった。



パン屋を離れると孤児たちが近づいてきた。

「今日も警備ごくろうさまです!」

ミルが言う。

「小麦泥棒が出たんでしょ?」

サラは楽しそうに聞いてくる。

「そうだよ」

孤児たちは警備兵の宿舎の掃除や洗濯を手伝ってくれる。

宿舎勤めの連中からしたら子供のような存在だ。むげにはできない。


「お手伝いするからパン買って!」

「犯人がわかったらな」

ミル

「じゃあ、こっち!」


ーーーーー?

一瞬理解が追いつかなかった。


サラ

「今日は何のパンにしようかな~」

ミル

「上等な小麦って言ってたからきっとおいしいパンを焼いてくれるわよ」


もうすでになんのパンにするかの話をしている。

子供たちの駆け足についていく。


そして

路地へ走る。

サラが言う。

「ほら」


まさか・・・

孤児たちの指さす扉に白い粉がわずかについていた。


お前たちは後でパン屋に来い。


扉をノックし開けると商会の男が出てきた。

「へい、警備のもんが何の用で?」


ああ、まじかよ

正直この反応は経験から言ってあたりだ。

念のためカマをかけてみる

「今日市場で盗みがありまして。今いろいろ聞いているところでして」


「はあ、そうですか大変ですねえ」

「なんでも貴重な小麦だそうで、商館で働いている方なら何か知らないかと思いまして」


「そうなんですか、うちの商館でも小麦は扱ってますが、何せお客も種類もたくさんありますので」

「そうですか・・・、そういえば今日は朝ごはんは食べました?」

「ああ、朝は食べないんですよ」


「そうなんですか?パンでも食べて元気を出さないと!一番のパンなんかとっておいしいですよ。」

「そうですね、今日は災難だったようなので、また食べに行きますよ。」



・・・・・・。

「災難?」

警備兵のジルの問いに男の眼が泳ぐ。

「そうですね、ここで長話してもあれなのでまたすぐ裏手の庭を探させてください。

 もしかしたら、泥棒が落として忘れていったかもしれませんので。」


バタン

そういってジルは家を出る。

少し離れたところで空を見上げる。


すると、扉を開ける音がして少しの物音。そして扉が閉まる音がした。

裏手に周ると、大きい麻袋とその上に銀貨が少しおいてある。


「ご協力ありがとうございました~」と扉の向こうに聞こえるように声を出す。



パン屋に戻ると店主はたまげて喜んだ!

「どこにあった!」

「それはちょっといろいろね」

一応聞いたパン屋は目の前の喜びですぐに奥に持って行った。


そしてにっこにこのサラとミルが駆け寄ってくる。

「やっぱりあったでしょ!」

「まったくだ」

孤児たちは照れる。


奥から嬉しそうな店主が「好きなパンを持っててくれ!」

と気前の良い笑みを向けてくる。

「今回はこの二人に手伝ってもらったんだ。二人にえらばせていいか?」

「もちろんだ!偉いな二人とも!」


そういわれて満足そうな二人は熱心にパンを選らぶ。

ただ、小麦が見つかったのはいいとして、犯人の男も借りを作ったことで後で反省してもらうとして。

この二人はどうやってあの扉の粉を見つけたんだ?


懐疑的な目で二人を眺めていると、二人はニコニコしながらパンを食べていた。

今は野暮か・・・

「探偵ごっこはいいが、あまり危険なことはするなよ」

パンをほおばる二人を撫でながら午前の仕事が終わった。



その夜。

街は静かになる。

役所の小さな部屋。

一人の男が作業している机の上。

灰色のラットが座っている。

「解決しました」

書類を書いていた男が顔を上げる。

「小麦袋のやつ?」

「ええ、犯人は商会の在庫管理のモットです。あの程度我々のネットワークなら楽勝です!」

誇らしげに語る小さなラットを見て男は不敵に笑う。

「孤児たちが見つけたんだろ?」

ラットは答える。

「そういうことにしておきましょう」

壁の向こうで

小さな足音が走る。

ラットたち。

街の

屋根裏

下水

壁の中

を走る

小さな影。

誰も知らない。

この街には

もう一つの

小さな探偵団がいる。


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