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第51話 神の矜持

【ファルスーノルン過去:4817年4月23日】




この前の封印術式。

――凄く綿密に練られた術式だった。


存在値を落として。

おいらたちとほぼ変わらないところまで下りてきたノアーナ様。


足りない力を補うために、事象の再現を『聖言』で賄い見事に完成させた。


きっとおいらたちの魔力がなくても、自分一人でできたはずだ。

アグアニードは体を投げ出し大の字になって寝ころんだ。


「なんか近くなったのに―、もっとずーっと遠くに感じる―」


つい零し、自分の真核に意識を集中させる。



◆◆


アグアニード

【種族】神

【保有色】(深紅・金)

【存在値】13,980/100,000

【固有スキル】『神化覚醒』『権能(力・減退)』


◆◆


ノアーナ様はもっと詳しく見られるらしいけど。

おいらにはこれが限界だ。


存在値「13,980」


生まれてからおよそ12,000年。

ノアーナ様に見つけてもらって『神』へと存在を上げてもらったのが約5,000年前。


(…確かに強い)


おいらより強いのはエーちゃんとノアーナ様だけだ。


『存在値が全てじゃないぞ?熟練した技は力量を凌駕する場合があるんだ。あまり数値に囚われない方が良い。だから苦手なことにも取り組んでみろ』


色々わだかまりがあり伸び悩んでいたおいらにノアーナ様は教えてくれた。

だから結界を任せてくれた時、涙が出るほど嬉しかったんだ。


きっとノアーナ様はおいらの努力を知っていた。

そして皆に見えるところで褒めてくれたんだ。


(…もっと力をつけないと…おいらは…)



『欠片事件』の時――少し気が緩んでいたのだろう。


モーちゃんにさんざん注意されていたのに。

慢心からわざと強化させて挑んで殺されかけた。


悔しくて情けなくておいらは後で泣いていたんだ。


『お前たちの方が大事だ。危なくなったら逃げろ。最悪星を捨ててもいい』


きっとあれは本音なのだろう。


ノアーナ様が分からない位の想像を絶する時間をかけて作り上げたこの星。


それよりも、おいらたちのことを想ってくれているんだ。

ノアーナ様は知らないけど、あの後皆で泣いたんだ。



おいらはノアーナ様がいる隠れ家へ、許可をもらって飛んだ。



※※※※※



ノアーナ様はお気に入りの紅茶を飲みながら、凄い量の書類に囲まれていて。

それなのに暖かい笑顔で迎えてくれた。


「珍しいなアグ。どうした?…緊急な事態ではなさそうだが?まあ俺も暇していて、いつもお前たちに任せっきりだからな。相談くらいは乗らせてくれ」


っ!?…この人はいつもいつも…

おいらたちを喜ばせるような物言いを…


「ノアーナ様―『極魔の惑星ゲルラギード』に連れていってください」


「っ!!!?」


「おいらはもっと強くなりたい…ノアーナ様の役に立ちたい!」


ノアーナ様は立ち上がって、おいらの肩に手を置いた。

思いやる気持ちが手のひらから伝わってくる。


おいらはじっとノアーナ様を見つめた。

――想いを込めて。


「ふう。条件を付ける。強制帰還の術式を組み込む。――いいな?」

「!?…おいら、がんばるっ!!」



※※※※※



『極魔の惑星ゲルラギード』

地獄だ。


存在値10,000越えがゴロゴロ存在している魔境。

ノアーナ様が以前作られた『禁忌地』の一つだ。


よく分からないけど「わーぷ」とかを実現したくて色々な概念をこねくり回していたら偶然にも成功したらしい。


そしてありとあらゆる凶悪なモンスターを創造。

勝手に進化したモンスターが跋扈する魔境が出来上がったそうだ。


「いいかアグ。ここは俺が放置してもう数万年になる。下手するとかつての俺より強い奴がいるかもしれない」


腕を組み難しい顔をするノアーナ様。


「…まあ強制帰還も組み込んだし、最悪お前たちは再創造できるようにはしてある。だがな、真核を縛られたら終りだ。どうしようもなくなったら自害しろ。真核だけは渡すなよ――こんな無茶はしてほしくないが」


ノアーナ様は大きくため息をついた。


「お前の覚悟を受け取った俺は、尊重したいからな。頑張れよ」


そういっておいらを強く抱きしめて、ノアーナ様は転移していった。



よしっ、鍛えよう。

おいらが納得するまで。



※※※※※



おいらの少し前のノアーナ様への尊敬が吹き飛んだ。


「馬鹿なの?ねえ、ノアーナ様絶対馬鹿でしょー?」


おいらは死に物狂いで逃げ回っていた。



※※※※※



はじめは存在値10,000~20,000くらいのやつを苦労しながら倒していたんだ。

おかげでおいらの存在値もあっという間に15,000を超えた。


だけど…


何故か見るだけで名前と存在値が分かる魔物たち。

おいらの後ろから追いかけてくるのは…


『暗黒を纏いしヘルライダーナイト:存在値75,000(初期)』


「クアアアアア!!!!」


やつが悍ましい咆哮をあげると、おいらの前に触れただけで生気を吸い取られるような壁が一瞬で構築された。


幅20m。

表面に気持ち悪い顔が張り付いき、怨嗟の魔力が吹き上がる。


「くっ、『神化覚醒』!!…うおおおおおおお!!!!!」


右手に魔力を集中させ、すべてを滅ぼすつもりで壁にたたきつけた!!


「どん…ぼこっ」


最大の一撃。

しかし壁からは気の抜けた音がし、2m位の穴が何とか開いた。


「くそっ、こいつも衝撃吸収型か?!」


一瞬立ち止まったおかげで暗黒を纏い…


って、めんどくせー。

「奴」でいいや。


奴がおもむろに4mはありそうな斬馬刀を、おいらめがけて振り下ろしてくるのが目に入った。


「っ!…『神壁』!!…!??ぐわあああ……?!!」


防御壁をまるでバターを切るように何の抵抗もなく切り裂く。

おいらは肩から袈裟懸けで切り裂かれた。


「ぐう、ギイイヤアアアアアア!!!!!??―――――」


意識が飛ぶほどの痛みが全身を貫く。

呪詛がすさまじい勢いでおいらの体の中を侵食していく。


消えかける意識の中――

何とかおいらは「リターン」とつぶやいて意識を手放した。



※※※※※



何やら話をしている声が聞こえる。

殆ど体に感覚がない…


ふいに温かい魔力がおいらを包み込んだ。

経験したことのない快感が包み込む…


そして。

おいらの意識は暗い場所へ落ちていった……



※※※※※



「ん、もう平気…馬鹿につける薬はないけど、取り敢えずいい。不敬」

「ああ、ありがとうエリス。助かる」


そういってノアーナ様はわたしの頭をなでてくれる。

思わず顔がほころぶ。


バカニードが無茶をした。

禁忌地へ行ったらしい。ホント馬鹿。


気持ちはわかる…

あの術式は、あり得ないほどの高みにあった。


きっと誰も紡げない。


わたしたちの創造主様はいつでも優しい。

そして私たちを一番大切にしてくれる。


きっと自分が死にそうになっても、わたしたちを優先させるんだろう。


(もっと強く。――なれないのは不敬)


わたしは呟いて転移した。


自分の国へ。

ルイースフットへ。


一人の馬鹿な神の行動。

いや矜持は。



――皆に大きな影響を与えた。


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