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第5話 現状のすり合わせを行ってみた

「先ほどは取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」


薄っすらと赤く染まる目じり。

申し訳なさそうな表情でネルさんが頭を下げてきた。


ひとしきり泣いた後、彼女は我を取り戻したようで。

あらためて事情を話してくれた。


因みに今いるこの空間。

彼女の能力で創造された『ちょっとしたお屋敷の応接室のような場所』だったりする。


(…スゲーな)


「コホン…それで、俺がその『ノアーナ』なんだね。まあ、何となく――その記憶っていうか、感覚があるから……なんかごめんね?その…期待外れ…みたいで」


ネルさんから聞いた話。

とてもじゃないが、俺とは思えないほど『ノアーナ』は桁外れだ。


「いえ、ノア…失礼いたしました。――光喜様が悪いのではありません。悪いのは忌々しい光の眷属と、あの泥棒猫で偽者の光神ルースミールです」


なんか新しい名前出てきた!?


(…光神――ルースミール!?)


チクリ


僅かに痛む俺の胸。

…何か引っかかる?


「あの泥棒猫どもが、事もあろうにノアーナ様、いえ光喜様の御心を…」


わなわなと怒りに震えるネルさん。

そして瞳の色が消えていく。


「ふ、踏みにじったあげく――自分たちの立場可愛さに、あなた様にひどい所業をっ!」


バキンッ!!


ネルさんの怒りの波動が部屋の一部を弾き飛ばす。


「っ!?ネ、ネルさん?お、落ち着いて?」

「も、申し訳ありません!」


深呼吸をし、何かしらつぶやく彼女。

消し飛んだ空間が元の応接室へと戻る。


「…それで、俺はどうしたらいいのだろう?一応説明してくれたから、現状はある程度理解した……まあ納得はできてないけど」


つい頭を搔き、愛想笑いを浮かべてしまう。


「…というか内容が壮大すぎて…脳が理解することを拒絶している感じがするんだよね。まあ、こうなってしまったら、しょうがないのだろうけど」



俺は少し冷めてしまった紅茶を飲んで、ため息をついた。



※※※※※



あらためて。

俺は“魔王”だった。


しかも所謂勇者に倒されるといった『キャラ』としてではなく。


絶対的な魔王だ。


この世界は魔法というか魔素というか。

現代では認識されていない元素で構成された世界のようで…


俺は『それらを統べることができる唯一の存在』らしい。


(魔王って…普通“悪役”だよね?)


何しろ聞いた話はとんでもない。


この星のみならず。

多くの星を創造し?


(おいおい!?)


6柱の神を創造し世界を運営。


不老不死で公明正大。

すべての言語・文化の創造。

すべての種族の父であり、始祖であり、創造主。


(ハハハ、ハ。なにそれ?チートどころじゃないじゃん!)


俺は驚くというよりも呆れてしまう。



そして。


ネルさん、いやネリファルース・ツワッド。


ガチの恋人。

そして俺の為の存在(汗)


秘書であり、専属メイドであり、近衛団長。

妹で姉で。


彼女で……


そ、その

――夜は……うあ。


――マジで?


(ゴクリ…ネ、ネルさんが…お、俺の?!!)


やばいやばい。

こ、こんなに可愛くてきれいな子が…


お、俺と…?!!


――つい視線が彼女の女性らしい場所を追ってしまう。


(えっと……信じていいんだよね!?)


コホン。


とまあ。

非常にハイスペックで魔導に通じ。

物理面も俺を除けば神々であろうと引けを取らない強者で?


みずみずしく可憐。

芸術品のごとく究極な美を併せ持つ『完璧な存在』なのだとか。


何でも俺がかつて暇すぎて戯れで(おいっ!!)

自分の理想を詰め込んで創造した一族の末裔。


運命的な出会いを果たしたのだとか。


種族的には魔族とハイエルフのハーフらしい。


(…何やってんの俺?)


改めて。

改めて俺をものすごく物欲しそうに見つめてらっしゃるネルさんに視線を向ける。

結構な時間話をしたからなのだろう。


最初の威圧と言うか…

硬い雰囲気は霧散しているのだけれど…


(すっごく可愛いし、色っぽい…ゴクリ)


年齢イコール彼女なし童貞には――色々な意味で直視しにくい存在だ。


「はうっ!?熱い瞳…ノア…光喜さま♡」


あー、うん。


…改めて話を再開したとき。

ネルさん俺の隣でべったりだったんだよね。


感触やら、めちゃめちゃ良い香りで…

全く話が入ってこなかったので対面に移動したのだから。


ざ、残念とか思ってないんだからな。

本当だぞ!?



※※※※※



何はともあれ。

少し情報をまとめよう。


うん。


究極の魔王で創造主のノアーナ。


(極帝魔王と名乗っている?…なぜに中2臭い?)


この星どころか全宇宙を創造。


(うん。もう何も言うまい)


何万年前だかに星間大戦争、いわゆるリアル版スターウオーズが勃発。


多くの生物や星が滅びに瀕し。


使ったらいけない兵器や、肉体ではなく魂を直接滅ぼすような武器やら。

まあ禁忌に触れたものが続出した。 


そんな状況に辟易した俺は、多くの星々を別次元へ飛ばしたらしい。

所謂『管理者責任を放棄』したとのこと。


(ほんと何やってんの俺?――面倒になったんだな。うん)


とまあ、そういうわけで。

今はこの星がバランスよく存在できるように調整したらしい。


あーなんか?

まあ…そうか。


で、俺を頂点に6人の中間管理職、じゃなくて!

『火・水・土・風・光・闇の神々』がこの世界を統べていたようだ。


ベタだな。


まあ、うん。


(なんかおなかいっぱいです)



※※※※※



ちなみに先ほどまで居た『東京』での話もしておいたよ。


紆余曲折あり人を信じられなくなったこと。

ごくわずかだが、信頼していた人がいたこと。

34歳で仕事一筋。結婚などはしていないこと。

(彼女なし、童貞は言わなかった!言えないんじゃない、言わなかったんだ!)


特に優れた能力もなく、人を引き付けるようなカリスマもなかったこと。

超過密な仕事をしていたが異様に体が丈夫で、12年間一度も体調を崩したことがなかったこと、など。


どうやら呪いを受けた状態でバラバラに飛ばされたらしい。

おかげで人として不完全。

不幸体質だったようだ。


親父、おふくろ、ごめん。

遺伝は関係なかったらしいよ!


なんか、話してる最中のネルさんの同情するような目が痛かったが……


まあ。

今はなんか15歳くらいの黒髪銀眼の中性的な美少年だけどなっ!


悔しくなんてないんだからな!?



俺は正直。

疲れ果てていたよ?



もう寝てもいいですかっ!?


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