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第27話 天使族の災難2

【ファルスーノルン:新星歴5023年4月30日】



レナードが途方に暮れていると、蹲っていたダルテンが立ち上がりレナードの肩に手を置く。

深いため息をついて覚悟を決めた力強い目で真直ぐに見つめてきた。


「…王に謁見を申し込みたい。頼めるか?」

「っ!?…承知いたしました。大至急整えます」


レナードは術式を解除。

大きな声で部屋の外へ向け号令を出した。


「王への謁見を申し込む。これは特級案件だ。各員直ちに行動を開始せよ。尚内容は『神級』である」


「おう!!!」


部屋のすぐ外で複数の返事が聞こえ、あわただしく駆け出す気配が伝わる。


「あいつら、すぐ近くで待機していたな。まあ今回は都合がよいが。懲罰物ですね。団長」


レナードは茶化すように団長へ問いかけた。


賽は投げられた。

落ち込んでばかりはいられない。

何よりルースミールが宣言したのだ。


3日後には滅んでしまう。


「ああ、できる事をするぞ。情報が欲しい。おおばば様を呼んできてくれ」

「それには及ばないよ」


タイミングよく、先ほど走り去っていったラナーナが、おおばば様、大賢者ルミナラス・フィルラードを連れて、団長室へと入ってきた。


大賢者ルミナラス・フィルラード。

数多の秘術を操り、大精霊龍と契約を交わしたモンテリオン王国の守り神。


齢300を数え、いまだにその瞳には知的好奇心が失われていない。


天使族には珍しい黒髪、高齢のためか白髪が混じる。


右目が金色で左目が銀色のオッドアイ。

その眼光はいささかも衰えてはいない。


ダルテンも幼少のころ、よく泣かされたものだ。


存在値は1,500を超える。

まさに生きる伝説だ。



「ダル坊、背中をお見せ。話はそれからじゃ」

「おおばば様、ダル坊はちょっと…」


「うるさいね。はやくしな!」


ダルテンはおとなしく上着を脱いで包帯を取り、ルミナラスに見せた。

背中を見て、ルミナラスは魔力をたぎらせた。


古の古代魔法を紡ぎだす。


『氷上に浮かぶ理・闇のしずく・アガンドの偉大な大岩・輝く咆哮・顕現する青い炎・すべからく健やかな涼風――聖復術式展開』


まるでつぼみが開くように優しい緑色の光が沸き上がる。

――傷が癒えていく。



「まったく、あの小娘、やりたい放題だね。アルテミリス様は何やってるんだい?」


ふいに零れるルミナラスの言葉。

ダルテンたち3人は、冷や汗をかく。


「し、師匠?今の発言は、まっ、まずいのでは?」


なんとかラナーナは言葉を絞り出す。


もし光神ルースミールに聞かれたら、八つ裂きでは済まない。


『小娘』発言も問題だが『アルテミリス様』は禁句指定されている。



「はん、問題ないさね。ノアーナ様に力を使ったからねえ。全然力が戻ってないんだよ。そんなことも分からないのかい。大体あの小娘なら、戒律があろうがなかろうが、屁理屈こねてもっと好き勝手にやるさ。――国が残ってるのが証拠さね」


やれやれ、とルミナラスは椅子に座る。


「それよりも、準備しな。皆早く最上位霊装を身につけな。何なら大サービスでババが展開してやろうかねえ」


「「「っ!!!!!」」」


刹那――

かつてない、体全体が押しつぶされるような魔力が、ぎりぎり認識できる限界を超えるような速さで近づいてきた。



「…まったく、相変わらずせっかちだねえ。『フォールンクロス×4』」


4人の体を清廉な魔力が包み込む。

光輝く聖装が施され、同時にルミナラスは跪いた。


「はやくしな!不敬じゃ」


混乱の最中のダルテン達。

本能的な怖気にルミナラスに倣い、跪いた。


「「「っ!?」」」


切り裂かれる空間。

圧倒的――いや、感知すれば気を失うほどの膨大な圧。


本能が拒絶する、原初に刻まれた恐怖と崇拝。




――伝説の降臨



極帝の魔王ノアーナと等星の極姫ツワッド嬢が、4人の前を見下ろしていた。

想像を超える凄まじい魔力を、その身にまといながら。



※※※※※



――数刻前:グースワース――



ネルとの幸せな共同作業の余韻が残る中。

湯あみを済ませたネルがいつも通りきっちりとメイド服を身に着け、はにかんだような微笑みを浮かべながら自然と至近距離に近づいてきた。


自然に腕を組み柔らかい感触に幸せを感じ、光喜は気になっていることをネルに尋ねる。


「俺は力を取り戻したい。でもネル、俺の愛はお前だけのものだ。信じてくれるか?」


俺はこれから、相当に屑なことを、本当に愛しているもはや“半身”たるネルに告げなければならない。


「――皆を、抱く」


ネルはすっと組んでいた腕からすり抜けると、少し拗ねたような顔をしてから寂しそうに笑い美しすぎるカーテシーを披露した。


「光喜様の御心のままに」


一瞬の静寂。

それを破るように、突然ネルは俺に抱き着く。


「イヤです。わたくしだけを見てください………とは言えませんね」


表情の抜け落ちた顔が。

光をなくした視線が、突き刺さる。



(…美人の無表情、やべー)


死ねる。



※※※※※



「光喜様は、真面目なのですね。そんな宣言せずとも、わたくしは信じております。それにノアーナ様は、もっと意地悪でした。わざわざ閨を見せつけるのですから」


思い出したのだろう。

ネルは眉間にしわを寄せ、小さくため息を零す。


「……わたくしが嫉妬するのを楽しんでおられましたよ…まあ、一番寵愛をいただけていたのは理解しておりましたから」


うわー。

ノアーナ、やっぱクズだわー。



頭の中にいるであろうノアーナが抗議の無言の圧を送ってきた。


『!?っ!!!!!っ!!!』


…ごめんて。


そして俺は。

コロン・ロロンを呼び、さらなる力を取り戻すのだった。



※※※※※



えっ?詳細?


……………まあ。

……………………ねえ?


とりあえず二人は『一緒じゃなきゃイヤなの』って言われ。


まあ、3人で、ね。


………………ふう。

…………………ふおお!


うん。

ドラゴンの体力舐めてたわ。


人としては最低だと思うよ、うん。

でも、めちゃくちゃ可愛かったし最高だった。


事後、嫉妬にかられたネルに猛烈にアピールされ。



今夜の予約は完了しましたとさ。



※※※※※



「光喜様の倫理観は承りました。こちらではそこまで厳格ではありません。この世界の常識では妻の人数には決まりがありませんから」


紅茶を飲み寛いでいる俺に、ネルはジト目を向ける。


「でも、コロンとロロンには、その、もっと優しくしてあげてくださいませ…激しいのは、えっと、そ、その…わたくし…だけにしてくださいませ♡」


少し拗ねて顔を真っ赤にし、俺の服の裾をちょこんと摘んで。

うるんだ瞳で上目使いのネル。



はい!優勝です!!!!



※※※※※



コロンとロロンから力を吸収し存在値が13000を超えた俺は。


ネルとともにモンテリオン王国に飛ぶのであった。



俺を滅ぼした光神のおひざ元。

まずはその真意。


――見極めるとしよう。


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