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第19話 光の一味

【ファルスーノルン:新星歴5023年4月30日】



レイノート大陸。

神々の住処と呼ばれるこの星最大の大陸だ。


禁断の地、神の塔ギルガンギル、そして5つの国。


それぞれが神を奉りながら、かつて極帝の魔王の定めた戒律を遵守。

小さな諍いはあるものの人々は笑顔を浮かべ暮していた。


そのレイノート大陸の南部に光の神を奉るモンテリオン王国がある。


人口はおよそ70万人。


敬虔な光教の信者がほとんどを占め、天使族を中心とした多種族国家を形成していた。


国を治める王は血筋ではなく4年に一度の『王の調』と呼ばれる国民大会で選出される。

以前の血族支配が戒律に触れたため、300年ほど前に改善されていた。


王の調は基本競い合うもの。

武力や芸術や知力人気投票の時もあったそうだ。


現在の王『ガウウィン・エイン・リーデン』は、武を競う大会で選出された天使族の武闘派の元公爵の当主。

意外にも平和主義者なため現在3期目、11年ほど王の座についている。


存在値は公表として450。

世界ではかなりの猛者だ。


そんな一見平和に見える王国。

不穏な噂により緊張に包まれていた。


原因は国の最南端にある『レイトサンクチュアリ宮殿』

そこの主、光神ルースミールだ。


長年の時と労力をかけて行った儀式が失敗。

『天使族に対し激怒している』と城下町ではまことしやかにささやかれていた。



※※※※※



「ダルテン・ブリントル。貴方の話はつまらないのだけれど。せっかくのお茶に招待したのに先ほどからうずくまってばかりで人の話も聞きやしない。いったいどういうおつもりかしら?」


『這いつくばれ!』と強制の魔法で縛っている神その本人が、そんなことを言い出す。


光神ルースミール。


白く輝く腰まで伸びる美しい髪をサイドでまとめ。

切れ長で大きい目には神聖とされる青色をまとった銀眼が輝く。


手足はすらりと伸び、魅惑的なスタイル。

均整がとれていて、細い腰は庇護欲を湧きたてさせる。


神話級の装飾品に彩られた聖なる法衣に包まれている絶世の美女だ。


存在値は1,700。


そんな彼女が、ここレイトサンクチュアリ宮殿の中庭にあるガゼボにいた。

季節の花が咲き乱れ、美しい調和のとれた至高である庭園はその様相を変化させる。



緊張の原因が、いつにもまして傍若無人に荒ぶっていたからだ。


「まったく。優秀だからとお使いを頼んでみたものの、言われたことすら満足にできないなんて。愚かにも程がありません事?」


熱い紅茶の注がれた茶器を、おもむろに投げつける。


「っ!?」


跪かされ、先ほどから嫌がらせを受け続けているダルテン・ブリントル。

彼は建国より続く元侯爵家『ブリントル家』の当主で、現在王国第一騎士団の団長を務めていた。


武勇に長け『金剛不落のダルテン』の二つ名を保持する才能の持ち主で、その存在値は500を超える。


原初の天使族の直系であり聖魔力が高く、歴代の王からの信頼も厚い。


2mを超える立派な体躯に、金の混ざった茶色の頭髪。

意志の強そうな赤みを帯びた紫色の瞳は見る者を魅了する。


容姿の優れた天使族の中でも相当な美丈夫だ。


神と謁見するためにあしらわれた正装に身を包んでいた。



だが。

人の世の功績などいくら積んだところで、絶対者である神には逆らえない。


ルースミールは跪かされ耐えているダルテンの様子を、面白くもなさそうに冷めた目で見ながら、先ほどからずっとこんな調子で何度も茶器を投げつけたり、足蹴にしたり、ぐちぐちと嫌味を言い続けていた。


「恐れながら、ルースミール様。それはあまりにも、グッ!?」


見ていられないと第一騎士団副団長のエリル・ディービッドが進言しようとした刹那、神の眷属第2席であり勇者の称号を持つ、シルビー・レアンの右足がエリルの腹部をえぐるように突き刺さった。


「誰が発言を許可したのかしら?ねえエリル。はあっ、これだから戦うことしか能のない下賤な天使族は美しくないのよねえ。見栄えはよくても、性根が腐りきっているからなのかしら?…そんな種族、必要かしら?」


ルースミールは手にした扇子のようなものを閉じ、唇をわずかに吊り上げる。

思わず背筋が凍り付くような、ぞっとする声で囁いた。


「っ!?大変申し訳ございません!すべての罪はこのダルテンにございます。どうかっ、どうかっ、此度の失態、わが命をもってご容赦いただけないでしょうか?」


堪らずに、跪いているダルテンは、本能的な怖気に対しとっさに口を開いた。


跪かされているものの、何とか体は動く。

どうにかエリルをかばうように体の位置を入れ替えた。


自分の命はもうないだろう。


先の失態により、この場に呼ばれた時点で覚悟を決めていた。

そもそも今回の任務は送還時の警備が主な仕事で、一番重要な儀式の間には、彼ら天使族は立ち入りすら許されていなかった。


一番の責は、眷属第3席のルリースフェルトにあることは明白だ。

つまり、これはただ『とばっちり』を受けているだけなのだ。


当然光神ルースミールも承知している。

ならば自分一人の命で釣り合うのではないか?と考えていたのだが。


しかし、このままエリルまで不敬を買ってしまえば。

天使族すべてが滅ぼされてしまう。


それだけは避けなければならない。



(くっ、不味い…何とかしなければ…)



ダルテンの想い。

そして振る舞い。


それはいやらしい笑みを浮かべるルースミールにとって。



まさに最高の暇つぶしに過ぎなかった。


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