第15話 懐かしい仲間たち2
懐かしい再会。
俺の心は踊る。
まあ。
もちろん痛みだってある。
だって…
※※※※※
次に話が出来たのはカンジーロウ。
彼は、唯一自分の名前を憶えていたそうで保護当時一番年長だった。
もともと武術をたしなむ武家一族。
戦争が始まる数年前に拉致られ、非道な実験により両腕と右目を喪失していた。
ムクが「よく生きていた」と感心していたことを思い出す。
「…久しぶりだな、カンジーロウ」
「ええ。ぐすっ…あの事件以来です…200年――長かったですよ」
カンジーロウは狐獣人で、見た目は25歳くらいの好青年。
非常に整った顔をしている。
茶色に一部赤が混じる髪の毛を短く刈り込み、しっかりとした眉に意志の強そうな深緑色の瞳が、俺に真直ぐ視線を向ける。
「…ノア…光喜様…あの時…」
「すまない。もう少し待ってくれ――まだ俺はすべてを思い出せていないんだ」
「…すみません。待ちます。いつまでも」
「ありがとう」
妖狐と呼ばれる伝説の大妖の血を引く彼。
様々なショックの中、本人は忘れてしまっている。
身元を確認するために、全員に『聖言』を使用したときに判明したと、ネルが教えてくれた情報だ。
(…大分思い出してきた――違和感も強まってくる)
俺はカンジーロウとグラスを合わせながら、そんな思いに囚われていたんだ。
※※※※※
次に話をしたのがカリン。
彼女はヒューマンとエルフのハーフで見た目20歳くらい柔らかい雰囲気の美人さんだ。
落ち着いたグレーの背中まで届く髪は三つ編みで一つにまとめてあり、切れ長な濃い青色の瞳が涼しげだ。
種族特性の長めの耳が可愛らしい。
「ただいま。カリン」
「グスッ…うあ…こ、光喜…さま」
泣き崩れるカリン。
俺は優しく抱擁する。
彼女は珍しい精霊魔法の使い手だったことから、研究対象とされていた。
比較的まともな対応をされていたらしいが、救出直前に……
胸糞な記憶。
俺は軽く頭を振り、柔らかい笑顔を浮かべる。
「カリン、俺は戻って来れたよ。お前たちが守ってくれていたグースワース。俺は嬉しい」
「は、はい。光喜様。…えっと」
「うん?」
「…大好きです♡」
うあ。
えっと。
(ううう、正直記憶、朧気なんだよな…でもこの距離感――あの野郎、絶対してるだろ!?)
全開で吹き上がる、俺への想い。
嬉しいそれは。
同時に申し訳なさだったんだ。
(もう少しだ…きっと…)
皆と会話するこの時間。
俺の能力、封じられていた力。
それは徐々に、回復していったんだ。
※※※※※
そして最後12人目。
ミュールスは角が特徴の可愛い魔族の女の子。
18歳くらいの見た目をしている超絶美少女。
煌めく紫色の腰まで届く長い髪をツインテールにし、その上には白い角がみえている。
大きな目には煌めくローズ色の瞳が鎮座している。
華奢な体躯にややアンバランスなふくよかな胸。
白い襟がワンポイントの薄ピンクの、スカート丈の短めなワンピースに、花柄の刺繡が施されたエプロンがよく似合う。
「ミュールス…ただいま」
「おかえりなさい…グスッ…光喜様」
彼女は幼少期に暗黒召喚魔法が固有スキルとして発現。
里を追放されたところで攫われていた。
「相変わらず、凄い魔力だな」
「う、うん。ノア…光喜様の指導のおかげです」
よぎる思い出。
確か彼女――うん。
「…まだ俺を殺したいか?」
「っ!?んっ、もう。イジワル!…そんなこと、もう思ってません」
そう言い俺に抱き着くミュールス。
ヤバイ。
煽り過ぎた。
彼女色気を全開にし、俺に密着してくる。
柔らかい感触と本能を刺激する女性の良い香り。
急激に上る血に、激しく脈を打つ鼓動。
「…そこまでです…光喜さま?よろしいですね!?」
鬼が立っていた。
うん。
美しい、額に青筋を浮かべるネル。
そして恐怖で顔を引きつらせるミュールス。
すんませんでした!!
※※※※※
何はともあれ。
そんなわけで皆と交流ができた。
ちょっと。
いやかなり、魔王ノアーナに対する俺の印象が変わった。
「至高で究極な能力を有する伝説級な存在」から、
「至高で究極な能力を有する慈悲深く馴染みやすい感情豊かな存在」へと、
俺の中でジョブチェンジしたのだった。
確かに少し気は楽になった。
一方で。
なんだか映画を見ているかのような『自分で体験したのではない』という違和感。
ますます強まるそれが俺を包んでいた。
皆と話をしたその恩恵。
徐々に取り戻していく幾つかのスキル。
そして俺はついに手に入れた。
『魔神眼』
チート級スキル。
いわゆる鑑定の上位版。
俺は早く色々確認したくて一人になったんだ。
幾つかの謎がついに紐解かれる。




