第14話 懐かしい仲間たち1
和やかな歓迎の宴は終わりを告げた。
途中すべての仲間、いや。
違う、家族だ。
愛すべき、俺のかけがえのない家族。
そして浮かぶ涙。
(…うれし泣き…いや……なんだ?)
よくわからない、胸が張り裂けそうになる悲しみ。
この時俺はその意味、まだ理解できていなかったんだ。
※※※※※
今回の宴は、話すことがテーマだ。
だから俺は時間の許す限り、全員と話をした。
まずはコック長をしてもらっているミナト。
彼女は、
「料理長はやっぱり日本人だろ?だからお前『ミナト・イズミと名乗れ』」
と。
かつての“俺”に任命され、それが世界に概念として認識されていた。
この世界の料理人は基本『日本人みたいな名前』と付随するスキルが発動する。
うまい料理を作ることができるためのルールらしい。
はあっ。
…つかなんで日本人!?
ミナトはヒューマンと魔族のハーフ、
死にかけのところを俺に助けられ、料理を叩き込まれたとの事。
『ずっとうまい飯を作ってくれ』と言われ魔改造。
ああ、うん。
まあ、本人が良いならいいか。
何でも「死にたくなったら死ねるようにはしておいた」らしい。
本人は「光喜様が死ぬまでは、ずっと料理作りますからね!」と宣言されておりました。
各種助手のノニイ、エルマ、カンジーロウ。
そして調理助手のカリン、ミュールスたち。
彼女たちはかつて存在していたドルグ帝国が引き起こした戦争のさなか、ムクとナハムザートが保護してきて育てた戦争孤児の子供たちだ。
ある研究施設で実験体として捕えられていたらしい。
グースワースで保護した当初は心を閉ざし、眼の光は消え、死んだようにうずくまっていたそうだ。
体の傷は回復系の魔術で直したが、心の傷についてはかつての俺が、
「自分で克服しなければ、永遠に傷が残る。俺がお前らに永遠をくれてやる。だからいくらでも時間をかければいい。俺が一緒にいてやる」
と、数年かけて寄り添いながら直したらしい。
そして研究施設を建設していたドルグ帝国は、現在では人の寄り付かない自然いっぱいの動物たちの楽園になっているそうだ。
…何をしたか聞いたが。
誰も詳しくは教えてくれなかった。
まあ、想像はできる。
…なんだよ。
破天荒でわがままで、俺様で飽きっぽくて。
女性にだらしなくて、どうしようもない奴だと思っていたが……
意外といい奴じゃんかよ、俺。
そんなこんなで回復した彼らは、恩返しのために働きたいと申し出たそうだ。
※※※※※
そんな彼女たちとも俺は再会を喜び合った。
まずはノニイ。
彼女は元々サキュバス族の少女だ。
カーキ色のシャツとモスグリーンのキュロットパンツがとてもよく似合っている。
「光喜様、おかえりなさい」
「…ただいまノニイ。…200年、待っていてくれてありがとう」
「っ!?…ぐすっ…うあ…会えた…本当に…光喜様っ!」
15歳前後に見える可愛らしい彼女。
ピンクがかった髪、たれ目がちな大きなルビーのような赤い瞳。
震える手、湧きだす感情。
俺は優しく抱擁し、彼女の体温を感じる。
俺の中の記憶が呼び覚まされていく。
――保護当時、彼女は種族特性を暴走させられていた。
サキュバス族の特性――催淫。
本人の希望で封印したんだ。
「もう…衝動は無いのか?」
「は、はい。…でも…」
「ん?」
うっとりとした瞳。
あふれ出す妖艶なオーラ。
「光喜様は特別ですから♡」
「あ、えっと…コホン」
…ジト目のネルに睨まれてました。
※※※※※
次はエルマ。
彼女はコーンラット族と呼ばれる少数民族だ。
カテゴリー的には鼠獣人になる。
白ワイシャツにグレーのズボンをサスペンダーでとめた、格好良い姿。
――女子高とかならメチャクチャもてそうだ。
「ただいまエルマ。相変わらずお前はイケメンだな」
「おかえりなさい。光喜様。…もう。イジワルですよね」
可愛く微笑む彼女。
エルマの種族は両性具有。
もっともグースワースでは常に女性形態だ。
そして身長は140㎝くらい、やや手が短い印象がある。
「俺の部屋、お前がいつもきれいにしてくれていたんだってな。ネルから聞いたよ」
「え、えっと。私の種族特性、覚えておれらますか?」
「もちろんだ。…お前の嗅覚、あてにしている」
彼女たちの種族は非常に鼻が利く。
それもあってか掃除スキルは完璧だ。
もちろんそれだけではない。
彼女はスキルではなく、本能で嘘を見抜く。
だから。
実はこの時、俺の脳裏に警鐘がなっていた。
「…偽物…」
なぜかよぎったその言葉。
俺は聞こえないふりをしていたんだ。




