【第3話】「初ステージクリア」
メモリーシティの広場へと戻ってきた俺の目の前に、突然ホログラムの閃光が走った。
「おつかれさま〜!初ステージクリア、おめでとーっ☆」
浮かび上がったのは、小さなマスコットキャラ。
桃色のボディに大きな目、ヘッドセットのような耳飾りを揺らして跳ね回っている。
「……めもりん……」
思わず、懐かしさに声が漏れる。
《MEMORY RECONSTRUCTOR》でアシスタントキャラとして人気を博したナビゲーター、それが「めもりん」だった。
「うんうんっ、ちゃんと覚えてくれててうれしいよぉ〜。あたしはこの世界の案内役、めもりんだよ☆」
軽快な口調とは裏腹に、どこか機械的な雰囲気も残している。
「さてさてぇ〜、次に進む前にやることがあるよっ♪」
「……やること?」
「そう!君、まだプレイヤー名を登録してないんだよ!」
その瞬間、空中にホログラムキーボードが出現した。
《プレイヤー名を入力してください》
めもりんが小さな体を傾けながら覗き込んでくる。
「ねぇねぇ、どんな名前にする?現実の名前でもいいし、ぜんぜん違う名前でもいいよ?」
俺は少し迷って、ふとある言葉が心に浮かんだ。
「……未来で」
「あっ、それって……未来に希望を込めてる感じ?かっこいい〜!登録完了〜っ☆」
《プレイヤー名:未来》
《現在の修復率:5%》
《現在の武器:インサイドブレード》
「それじゃあ、“未来”くん。次のステージに向かう準備はいいかな?」
めもりんがくるりと回転し、次のステージパネルを表示する。
「次の記憶も、たぶんけっこう深いよ〜。でも未来くんなら、きっと乗り越えられるって信じてる!」
その声に、ほんの少しだけ心が温かくなった。
この世界に来て初めて、誰かに名前を呼ばれた。