【第11話】「存在意義の領域へ――目覚めの扉」
静まり返ったメモリーシティに、ひときわ異質な空間が現れる。
その中心に、真っ白な巨大ゲートがそびえ立っていた。
手を触れると、まるで鼓動を持つかのようにゲートが脈打ち、ゆっくりと開きはじめる。
中から広がるのは、神殿のような荘厳さと、深海のような静けさを併せ持った空間。
無数の光粒が舞い、足元に広がる水面は、心の記憶を映し出す鏡のようにゆれる。
めもりんが、すぐ隣で歩みを止める。
「ここが、君の"存在意義の領域"――すべての問いが集まる場所だよ、未来くん」
未来は、ただ黙って先を見る。
この世界を形作っていた「後悔」や「逃げ続けた日々」が、すべてこの場所に辿り着くためだったと気づいていた。
中央に、一本の光の柱が立ち昇る。
《ようこそ。ここまで来たね、未来》
聞き覚えのある声。それは、まるで自分自身の奥底から響くようだった。
《私は、君の深層意識。その心のもっとも深い核だ》
《君は今、生と死の狭間にいる。あの日、全てを終わらせようとした君の意識が、この修復世界を作り出した》
未来は、静かに目を伏せた。
現実逃避でも空想でもなかった。
これは、自分を救おうとする最後の足掻きだった。
《君の肉体は、いま病室のベッドに横たわっている。だが、まだ選べる。生きることも、眠り続けることも》
「……なんとなく気が付いていた。俺は自分の命を……」
小さく、震える声で呟く。
「でも、やっぱり生きたいんだ……」
あの日、飛び降りるように自分を断ち切ろうとした裏側に、確かに“生きたかった気持ち”が残っていたのだ。
めもりんが微笑む。
「ここまで来られたのは、君の中にその想いがずっとあったからだよ」
光の柱が、問いかける。
《未来――君は、何のために生きたい?》
未来は目を閉じる。
あらゆる場面で、自分は何かを失ってきた。
でも、失ったままで終わりたくはなかった。
「……後悔しても、失敗しても、逃げてもいい。でも、それでも未来に向かって歩いていきたい」
「自分を、少しずつでも許しながら」
「……誰かを愛して、そして、自分を愛して、生きていきたい」
その瞬間、空間が震えた。
光の柱がまばゆく輝き、声が響く。
《最終修復 完了》
《修復率:100%》
《目覚め準備プロセス 開始》
めもりんが、小さく手を握る。
「おめでとう、未来くん。君はもう、大丈夫だよ」
「ありがとう、めもりん。……本当に、ありがとう」
光が満ち、意識が浮かび上がっていく。
これで終わりではない。
ようやく、始まるのだ。自分を取り戻した“本当の人生”が――。




