偶然再会
あれからどれくらいの年が経ったのだろう。
町中であの瀬里香を見てしまった。あろうこと、彼氏らしき男と口論している。その光景に目を奪われ、足が止まった。瀬里香は相変わらず美しかったが、その表情にはかつての輝きが失われているように見えた。彼女の声が聞こえてくる。
「もう限界よ、こんな関係続けられないわ。」
彼氏らしき男は苛立った様子で手を振り上げたが、すぐに下ろした。周囲の人々も気まずそうに彼らを見ている。
「瀬里香…」
思わず名前を呼んでしまった。彼女が驚いてこちらを振り向き、その瞬間、時間が止まったかのように感じた。彼女の瞳が一瞬大きく見開かれたが、すぐに冷静さを取り戻したようだ。
「…あなた、どうしてここに?」
彼氏が不機嫌そうにこちらを睨みつける。瀬里香は一歩後ずさり、距離を取った。
「ただの知り合いよ。もう行きましょう。」
彼女は彼氏の腕を引っ張り、その場を去ろうとした。だが、その背中にはどこか疲れた様子が感じられた。
「瀬里香、待って!」
思わず声を張り上げてしまった。彼女は再び立ち止まり、振り返ることはなかったが、その肩がわずかに震えているのが見えた。
「お前には関係ないだろう、黙ってろ。」
男の冷たい言葉に、一瞬言葉を失った。だが、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
「瀬里香、本当に大丈夫なのか?」
彼女は一瞬立ち止まり、そして深呼吸をした。振り返ることなく、ただ一言だけ言った。
「ありがとう。でも、これは私たちの問題だから。」
そう言って彼女は男と共に歩き出した。その背中はどこか決意に満ちていたが、同時に哀しみも感じられた。
あれからどれくらいの年が経ったのか。彼女がどんな人生を歩んできたのか、私は知る術もない。ただ、一つだけ確かなことがある。瀬里香はもう私の知っているあの瀬里香ではないのだということ。




