とある権力者の憂鬱 猫耳もふもふ猫尻尾は、人類の複音である。
一寸短くなってしまいましたが、ゾンビ物より平和です。
N氏は、鏡のなかの自分を見詰めて深い深い溜息を付いた。この年になって、猫耳カチューシャ擬きを付けた姿は、一国の首相の者とも思えない姿だった。此れを付けた顔は、何時もの国民から毛嫌いされている物より、更に気味悪く見えていたからである。
思えば、先だって、お楽しみのために、若い女の子と遊んだのが間違いだった。その子は、猫耳、猫尻尾のコスプレを為て居る。変わり種のお遊びの相手だ。
うちの官僚達は、何処でこのように娘を捕まえてきたのか分らなかったが、兎に角可愛くて若々しい肌は、N氏の好み似合っていたので、底辺喜んで、一晩遊び倒したように思う。
勿論、こう言うご時世なので、可笑しな遊びをするわけにも行かず。一晩、色々なことについてお話を為ていた訳なのだが、側にはちゃんと秘書官を置いてだ。万が一、何処かのタブロイド紙に嗅ぎ付けられても、木賃と言い訳が出来るようにしてだ。どうにも成らなかったら、秘書官が遊んだことにするつもりである。
それから、一週間がたたないうちに、この症状が現れたのである。つまり、彼女が付けていたのは、猫耳カチューシャでは無く、本物の猫耳だった。あの娘から、可笑しな病気を貰ってしまったらしい。
N氏の頭のある、猫耳カチューシャは身体の一部になってしまっていた。そして、今は目立たないが、尻にも尻尾が生えだしている。更に、時間がたつに従って、自分の背が少しずつ小さくなってきているのだ。
今や、N氏の姿に政治家としての威厳など存在しない。鏡の前にいるのは、単なる変態叔父さんの其れである。元々無かった、N氏のプライドも、この猫耳が打ち砕いてしまった。
其れだけではない。N氏の周りでも、奇怪な現象が起こりだしたのである。先ず、秘書官が欠勤し始めたのである。当然のことながら、N氏の代わりに周りに対して、根回しをする物がこのていたらくではどうしようも無い。
N氏も、この成りでは人前に出るわけにも行かないので。携帯を使って、彼の所に電話を入れると。その秘書官も、何と同じ病に罹患してしまっていた。あの猫耳娘は、そう言う病気を持っていたと言うことに成る。
此れまで、知られていない病気だから、一流な医者を呼んで、診て貰ったのだが、彼らは簡単に匙を投げ出した。なんと言うことだろう。けしからん事だ。
この上級国民である、N氏のような人間の病に対して、見捨てるとは医者として失格ではないのだろうか。だが、やがてその怒も、恐怖へと変換した行く。何故なら、N氏と接触した人間の全てが、猫耳、猫尻尾になってしまったからである。
それどころか、最近ではテレビを付けると、猫耳、猫尻尾のタレントが、下らないゲームを為て見せている。いつの間にか、この奇病は世界中に蔓延してしまっていたのである。
因みに、首相官邸から出ること無く。この経緯を見守っているだけの、N氏の部屋には、一匹の不細工な猫が残されているだけだった。
それから、一年もたたない頃。世界中の人間は誰もいなくなった。地球に残されたのは、無数の猫と使い方の分らない機械の類だけだった。
その可愛らしい猫のなかにあって、一人とある学生の手によって、この世界に召喚された。猫耳カチューシャのような物と、ミニスカートに隠れて見えないが、猫尻尾を付けた可愛らしい娘がたたずんでいるだけだ。彼女の足下には、彼女を召喚した学生のなれの果てが、なでれと言っている。
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