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第3廻「鬼塚大和と小鳥遊りな」

 8月、日本の夏は、高温多湿で暑い。もう暦の上では、秋が始まっているが。まだ真夏の時期で温暖化のせいもあり、とにかく暑いのだ。




 異空間にある、氷雨相談所も例外ではない。現在は、空間を日本に繋げている為、夏から秋に掛けて蒸し暑いのだ。

「若~っ、ただいま帰りやした。ふーっ!あっちィ~ッ!」

 外から、汗だくの青年が帰って来た。このガタイの良い赤髪の青年は、鬼塚大和。

 正体は、地獄の鬼神である。



 それに気づいた。相談所の長、輪廻が声を掛ける。

「ああ、大和。お帰り。ご苦労だったな。それで?りな…。小鳥遊りなのその後の様子は、どうなっている?」

 その言葉を聴いて、椿も台所から、おぼんに乗せた麦茶を持って出て来た。

 輪廻の机の上と、大和の座っているテーブルの上に麦茶を置く。



 コップを掴み、一気に飲み干してテーブルにまた、コトリと置く大和。

「か~!うめー!!椿、サンキュ~」

「どういたしまして。それで、小鳥遊さんの様子は?」

 落ち着いた大和は、りなの様子を話そうとした。


 その時、インターホンの電子音が鳴った。

 椿が、玄関の方へ行き、ドアを開けるとそこには、件の女子高生、小鳥遊りなが立っていた。

「猫嶋さん。こんにちは~!氷雨さん。いますかぁ~」

「小鳥遊さん。いらっしゃいませ。お待ちしていましたよ。」

 椿は、にこりと微笑むと以前の明るさを取り戻した。りなを招きいれた。


「こんにちは。氷雨さん!って…あれっ?この人は…」

 初対面のりなと大和の目が合う。すかさず、輪廻がフォローする。


「この人は、僕の所の支援相談員、鬼塚大和さんですよ。鬼塚さん、りなさんにご挨拶して。」

「猫嶋さん、りなさんに麦茶を持って来てくれますか?」

「はい。氷雨先生」


 それぞれに指示する彼。椿は、台所に麦茶を取りに行った。

 三人掛けの草色の木枠ソファに座る。りなに大和は、少し、頬を染めて慌てて挨拶する。

「あーっ、えっと。俺…じゃない。僕は、支援相談員の鬼塚大和…と申します。小鳥遊さん。初めまし…」


 そんな、言葉がたどたどしい大和を見て。りなはにこりと微笑み、「はじめまして」と挨拶を返そうとするが。大和は、突然、頭をガシガシとかくと深呼吸をし、「俺は、鬼塚大和っす!敬語使うと、気持ち悪くなるんっすよねえ~!敬語無しでいいっすか。りなさん!」



 それを見た。輪廻と椿は、溜め息を吐いたが。りなは、プッと吹き出し笑い出した。

「あははっ!面白い人。良いですよ。お願いしますね。大和さん!」

 りなは、親しみがありそうな大和に、名前呼びをして彼に向かって握手を求めて来た。


 大和は、ばあっと笑顔になると、服で手を拭いて「よろしくっす!」

 とにかっと笑い。りなと握手をする。

 そんな、大和とりなの様子を無意識に、ジト目で見ながら頬杖を着き、人差し指で机を何度もつつく輪廻だったが。


「氷雨先生!」と椿に声を掛けられて、はっと我に返った。

「どうぞ」

 すました顔で、麦茶のコップをりなの前に置く、椿。

「ありがとうございます。」

 冷たい麦茶を一口飲み、少しうつむく。


「それで、今日はいかがなされたのですか?」

 輪廻が、いつも通りの様子で、りなに聞いた。

「えっと…ご相談があるんですけど、その前に。」

 りなは、黄色の小鳥が刺繡された白っぽい色のトートバッグの中から、紫色の包装紙で包まれた菓子折りをテーブルに置いた。



 包装紙には、“和菓子のみちゆき堂”と印刷されている。

「あっ、みちゆき堂の包装紙じゃないっすか!」

 大和が、嬉しそうに聞く。


「そうなんです。あの、行列が出来る和菓子屋のみちゆき堂です。どら焼きと水羊羹がやっと、買えたので氷雨さんへのおみやげに。この前のお礼もありますしね。」

 そう言うと、椿が冷静にりなを見て言った。



「すみません。小鳥遊さん。うちは、ご依頼料のみで品物やお金などは一切受け取れないのですよ。」

「良いではないですか。僕も、甘いものは好きですしね。その方が、相談しやすいのなら、受け取りますよ。しかし、今回のみですが…ね。」



 輪廻は、机の上で軽く手を組み、目を細めて微笑を浮かべる。

「ありがとうございます。」

 りなは、嬉しそうにぺこりとおじぎをした。

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