☆※第1廻「小鳥遊りなの相談~相談支援長、氷雨輪廻との出会い」
1.「氷雨 輪廻」
「氷雨輪廻相談所へようこそ」の主人公で、若き相談所の青年支援相談長。
見た目は17歳前後に見える、不思議な雰囲気を纏っている。
2.「小鳥遊 りな」
この物語のヒロイン、深刻ないじめに悩む17歳の女子高生。
ある日、下校中に相談員の猫嶋椿に声を掛けられ、カウンセリングもしている
氷雨輪廻相談所へとみちびかれる。
3.「猫嶋 椿」
相談所の相談員。ヒロインの小鳥遊りなを相談所へ導くりなと年齢の近い少女。
もう一人のヒロイン。
セミロングの黒髪に黒い瞳。小柄でほっそりとした体型のブレザー姿が似合う、高校二年生の少女、小鳥遊りな。その可憐な容姿とは裏腹に、彼女は高校生活でいじめに悩んでいた。
さらに、父親が抱えるラーメン屋の借金を返済する手伝いをして、彼女は喫茶店でアルバイトをしている。
オレンジ色の夕日に照らされたバイトの帰り道、家に帰る足取りも重い。
りなが悩みながら歩いていると「お嬢さん、大丈夫ですか?」一人の少女に呼び止められた。
りなが振り向くとそこには、黒髪のロングヘアで蒼と茶色の両目で色の違う
オッドアイの瞳をした朝顔の絵柄が入った、薄ピンクの着物姿の可憐な美少女が、立っていた。
年齢は、りなと近いようにみえるが、おとなしめで随分と落ち着いて見える。
「何か用ですか?」
りなは、警戒して怪訝そうに少女を見る。
その様子に少女は、少し困ったように眉を八の字にしながらも、名刺を渡しながら自己紹介をした。
「申し訳ありません、まずはご挨拶をすべきでしたね。私は“氷雨輪廻相談所”という場所の支援相談員、猫嶋椿と申します。お嬢さんが何かお悩みのように見えたので、つい声を掛けてしまいました。この相談所では、悩みを伺い解決のお手伝いをしております。もしご興味がございましたら、ぜひお立ち寄りください」と椿は優しく語りかけた。
「――私は、小鳥遊りなと言います。悩みを聴いて解決する相談所……?カウンセラーみたいなものですか?」
りなは、少し怪しげだと感じつつも、一日も早く辛い現状から救われたいという思いが心を支配していた。気づけば椿の言葉を素直に受け取り、行くだけでも行って見たいと思うほど、椿の言葉と雰囲気はそうさせる魅力があった。
「そうですね、カウンセラーのようなものです。まあ、私に付いて来てくだされば分かりますよ。支援相談長をご紹介致しますので、どうぞ、私の後に付いていらしてくださいね」
椿は柔らかく微笑むと、迷いのない足取りですっと路地裏の道へと進み始めた。
椿はどんどん、道を進んで行く。進んで行くうちにりなの目にはカラスの数が、増えているように感じた。しばらく進んで行くと路地裏の開けた場所に一軒のひなびた事務所が建っていた。
看板には「氷雨輪廻相談所」と刻まれ、周囲の静寂を破るように、瓦屋根には黒い羽を揺らす何羽ものカラスが並んでいた。
「こちらが氷雨輪廻相談所です。どうぞお入りになって下さい」
椿は、相談所の引き戸を開けた。今どき、ドアでないのは珍しいと思いながらりなは、椿の後に続く。相談所の中には、アンティークな机と椅子、
棚が並び棚には、たくさんの古書や日本人形などが飾られている。
年季が入っていそうなのに綺麗に掃除が行き届いており、机の上には一輪挿しが置かれていてサギ草が飾られていた。
デジタルテレビやエアコンなどがなければ、戦後位の昭和時代にタイムスリップしたと言われても、信じられるほどのおもむきがあるたたずまいだった。
椿が相談所の奥に向かって、声を掛ける。
「氷雨先生、ご相談者様がいらっしゃいました」
部屋の奥から、黒髪の短髪に切れ長の赤い瞳の青年が姿を現した。
黒い着物を着た17歳前後位のなかなかの美青年だ。
「えっ……!? すごい、かっこいい……」
りなは、思わず頬を染めて見入ってしまった。
青年は、その様子を見ると微笑を浮かべてりなに静かにおじぎをすると机の前の椅子に座り、手を組んだ。
「小鳥遊りなさん、初めまして僕は、氷雨輪廻。この相談所の支援相談長をしている者です」
赤い瞳を細めてにっこりと微笑みを浮かべると、りなを見つめて来た。
その目はなぜか、りなの心の奥まで見透かすような光を持っているように感じた。
「えっ? 私、名前をまだ、言ってないのに……」
りなが驚いていると、輪廻はまた、目を細め笑って見せた。
「僕は、心理学の読心術をたしなんでおります。お辛いなら、話さなくても大丈夫ですよ。僕がお心を読んでも良いならさあ、その椅子に座って貴女の目を見せてください」
「はい話すのはちょっと、辛いです。でも、読んで貰えるなら……どうかよろしくお願いします」
椿が、りなに椅子を勧めると彼女は椅子に腰かけ、輪廻と向き合った。
「うん……、心根の清い良い眼をしている。だが、その奥底には悲しみや怒り、葛藤が渦巻いているな」
輪廻はさらにりなの心の奥底を読み込んでくる。
「学校でのいじめ、それに、お父様の借金返済の手伝いか。お母様は、既に亡くなられているとこれは、お辛かったですね……」
輪廻は優しい表情でりなを見る。
りなは、輪廻の穏やかな印象と言葉で、うるうると瞳を潤ませた。
「そうなんです、本当に辛いんですよ。でも、話したからって解決出来る物でもないので、それを解決出来るってどうするの? 氷雨さん」
「一晩お時間をいただけますか? 必ず良い方法を見つけてみせますよ」
輪廻は、りなの前まで歩いて来て、彼女の手を取り勇気づけた。
―――その夜。
赤い髪の、赤色の着物を着た。筋肉質な青年が輪廻に問う。
「話しは大体、理解しやしたけど。それで、若、今度の件はどうするので?」
「引き受けるよ、椿が連れて来た相談者だ。事情も、視てしまったしな。服の下にはアザが無数にあると。俺は、ああいうのを放っておけないタチなんだ。それに、親父の命だしな」
赤髪の青年に若と呼ばれた。輪廻は、昼間とは打って変わって口調も雰囲気もだいぶ、変わっていた。
椿が輪廻と青年に言う。彼女には、黒色の猫の耳とふたまたに分かれた尻尾が生えていた。
「それでは、輪廻さま、鬼塚大和さん。参りましょう。小鳥遊りなさんのご依頼先へ」
◇◆◇
一方、小鳥遊りなをいじめている、少女グループのリーダーは、自室でイヤホンを耳に入れ、MP3プレイヤーで音楽を聴いていた。
ふと、思いつき少女は、ニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべる。
「あっ、そうだ。明日、あいつが困るように今のうちにクラスのヤバい奴に話しといてやろ! 小鳥遊の奴、明日絶対、あいつにボコボコにされるからっ。あははっ!」
少女は、邪悪な笑みと企みを巡らせながらスマホで、クラスの名簿を見て電話を掛け始めた。
その時、突如部屋の電気が点滅し始めた。
「あん? なんだ。停電か」
『お前は、性根が随分と腐っているようだな。俺が、地獄へ落としてやろうか?』
電気が、点滅を繰り返す度に輪廻と椿、大和が突如、部屋の中に現れた。
「誰だ! お前ら、勝手に他人の家に入ってきて! お父さーん、変な奴らが……」
少女が叫ぼうとした時、大和が背後に現れ、口をふさいだ。
「往生際の悪い女だ。おとなしく、若に裁かれな!」
大和は、額に二本の角が生えていた。
「ひっ!」それを見た少女は、青ざめる。
その瞬間、大和は少女を金棒で頭から、グシャリと叩き潰した。
激しい激痛が襲い血液が飛び散る。少女は、自分は殺されたと思った。
しかし、次の瞬間には元の体に戻っていた。
夢、否、これは夢ではない。その証拠にあの三人は今も、部屋にいる。体にも記憶にも、あの死の恐怖と激痛を覚えている。少女は、蘇らせられたのだ。
なんのために。
「小鳥遊りなの痛みを、嘆きを体と心に覚えさせるためだ。このくらいで、死んでもらっては困るからな」
輪廻は、少女の頭を掴み、口元にさげすむような笑みを浮かべた。
「貴様には死後、死すよりも辛い永久の地獄が待っている。極寒の炎で震えて逝け!」
ゴウッ!!!
少女は、青白い極寒地獄の凍てつく炎で千度、焼かれて。また、蘇らせられることを繰り返された。
少女は、ふらふらになり、震えて涙を流しながらたずねた。
「あんたは何なんだ!? もう、いじめはやめる。だから、許して。あいつが、こんなヤバい奴らとかかわりがあったなんて!!」
「俺は、十王の一柱、閻魔王の息子。貴様の名は、既に閻魔帳に書いてある。罪を軽くするには、これからいかに悔い改め、善い行いをして行くかだ。一生、罪は消える事はない。せいぜい、苦しみながら励むんだな。俺はいつでも、お前を視ている」
輪廻が鋭い眼光で、冷たく言い放つ。
「ひいいっ!!!」
あまりの恐怖に少女は、顔面蒼白になり、気絶してしまった。
「若、いいんですかい? こんな奴を生かしておいて」
大和が横目で、少女を睨みながら、輪廻に聞く。
「ああ、こんな娘に今から、こちらへ来られてはたまらないのでな」
すると、椿が言う。
「これが、輪廻さまの温情なのです。さすが、次期、閻魔大王さまっ」
椿が、ほうっと頬を薔薇色に染めて、手を胸の前で組んでほくほく顔で輪廻を見つめながら、尻尾を振る。
「それに……りなも、夢見が悪いだろうしな」
輪廻は、少女の家を後にした。
◇◆◇
次の日、輪廻はりなを相談所に呼び、真実は隠して、報告をした。
「と言うことで、少しばかり、まじないを掛けてみました。もう、あの人は、りなさんをいじめて来ないでしょう。お父様の借金問題は、りなさんやお父様も頑張っておられますので。これから、追い追い解決して行くと思いますよ。また、何かありましたら、こちらの番号まで」
輪廻は、電話番号が書かれたメモを手渡し、人差し指を唇に当てウインクをする。
「若! ご相談解決も、営業スマイルも、完璧っす!」
鬼塚大和は、物陰から見守りながら、感動の涙を流した。
「何をしてくださったか、分かりませんが。今日のあの人が、妙におどおどしてて。優しくなったような気がするんです。他の人もいじめをしなくなったし……それに、私を見ると怯えるようになったような?」
りなが、疑問符を浮かべながら嬉しそうにしている。
「良かったですね、りなさん」
その笑顔を見た輪廻も、嬉しそうに微笑みを返した。
「氷雨 輪廻」
主人公、見た目の年齢は、17歳前後位に見えるが、23歳。相談所をしている。
本業は、あやかし達と共に悪人に罰を与え、時には地獄流しを行う。
正体は、地獄の十王の一柱、閻魔大王の息子。
「猫嶋 椿」
もう一人のヒロイン、年齢16歳。
輪廻の側近の少女。正体は、ねこまたと人の半妖。
「小鳥遊 りな」
本作品のヒロイン、輪廻の相談所に訪れる17歳の少女。
いじめをされている上にラーメン屋の父親の借金を返すためにバイトをしている。
相談所で輪廻に救われた、輪廻が気になっている。
「鬼塚 大和」
輪廻の友人・側近の青年。18歳。正体は、鬼神。
連載が始まりました。
ペースは、遅めですが気長によろしくお願いいたします。