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本当にどういうこったい。

洞窟を出ると月は地平線に沈む1歩手前といった感じ。夢中になれる仕事と言うのは時間を忘れさせてくれる。

広大に広がる荒れた土地は月明かりで陰り、不気味さを感じさせていた。魔女の住処と言えばそのイメージにピッタリハマる。ただ一点。銀ピカで金髪の騎士が立っていることを除いて。


「またですか魔女狩り。」


騎士は完璧な顔が崩れる程、歯噛みして私を睨みつけている。知るか。老人の生首を鷲掴みし、私は無視して騎士を通り過ぎる。


「じゃあねお坊ちゃん。」


なんでか私は挑発してしまった。このお坊ちゃんにはムカついて仕方ないのはそうだが、意図したものでは無い。いや、ちょっとはあるか。


「貴様ッ____」


激情。殺気。手柄を横取りされ、下に見ていた女に挑発された騎士は腰に携えたロングソードを抜いた。目には見えない瞬足抜刀。

魔法で底上げされた速度は、剣の重みを乗せて私の首を狙って走る。


鍔迫り合い。夜に咲く火花。私は手斧で剣の刃を止める。左手は老人の首で塞がっているので片腕で申し訳ない。


「舐めているな魔女狩りィッ!!両手を使え、行儀が悪いぞッ!!」

「あらごめんなさい。手が塞がってて。」


煽るな私。


「何故毎度、私の前にいるのだッ!動けども先回りせども、いつだって私の邪魔を!!」


こんな簡単な話すら理解できないなんて、本当子供。


「だがそんな澄まし顔はここまでだ!知ってるぞ魔女狩りよ!!!月夜に加護を受ける月光の石で鍛造されているその斧は、もうじきに夜が明けて膂力を失う事をなァッ!!!」


そこまで調べているのは流石に引く。まるでストーカーのよう。なら少し強気を見せないといけないな。


「私がいつ加護を使ったって?」

「何ッ!単純な膂力だとっ!!そんな怪力___」


ムカついたので加護を使ってやった。魔を蹴散らし、光さえ遠く吹き飛ばす激昂の斧。特段加護の表出的なものはなく、単なる力の増幅で、私は目いっぱい斧を振り抜いた。

まるでボーリングのピンのように吹き飛ぶ騎士は、地平線を転がり飛びながらどこかへ消えていった。


「デリカシーの欠片もないわ。」


居なくなった騎士の事を考える暇は無い。私はぬかるんだ地に足を進めた。




















もう夜明け近い酒屋には人気があまり無かった。テーブルで寝る奴、まだ酒盛りを続けるヤツ、色々居るもゴールデンタイムに比べれば静かな方だ。店全体を見渡せる2階のカウンターから眺めるこの光景も、もう慣れて何も感じなくなってしまった。


「おい。カトウ。聞いてるか?」

「あ、ごめんなさい。」


カウンターに入ってるのはガタイの大きな黒人のゴルド。彼は私の前に樽のジョッキを置いてくれた。


「いつものだろ?」

「ありがと。ねぇゴルド、あなたあの坊ちゃん騎士に居場所教えた?」

「また黄金騎士にあったのか。見る目ねぇなあの坊ちゃ____分かった分かったそんな目で見るな怖いわッ!!教えてないないッ!」

「そ。命拾いしたわね。」

「...いやまぁ言わなくたって噂は出回るだろうなぁ。なんたって有名だからねぇ、魔女狩りさんよ。」


基本的に魔女討伐はかなり難易度が高い。それを限定的に1人で狩る女冒険者となると私以外はありえない。


「いい迷惑よ。」


有名になって嫌な気はしないが、だからといってストーカー行為は困る。まぁそれに関してはおいおい対処しよう。

頭を切り替えて、要件を聞こう。


「それでアレについてはどうなの?」

「おおぅ。そうだそうだ。これ返すぜ。」


ゴルドから1発の銃弾を受け取った。


「この金属のドングリの複製は、難しいそうだ。」

「そっか。」


この世界に来てからというのも、この銃弾の複製をできる鍛造師を探しているが未だ見つかっていない。


「一応火薬も金属の型は作れそうなんだが、その雷管?とか言うのは特殊過ぎてどうにもってよ。」

「まぁどこ行ってもそうだったし、仕方ないわ。聞いてくれてありがとう。」

「いいってことよ。娘を救ってくれた恩もあるし、気にすんなよ。」


今宵も特に収穫はなし。私の中にある時計の針が、進まないことに苛立ちを覚える。それをまやかしにするために樽に唇を添えて、ビールごと流し込んだ。


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