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ブルーボーイリーダー

蹴られた箇所が痛む。あまりの痛みに意識が飛んだ。内務職の緩んだ腹筋を易々と貫いて、意識をかきとった。これだから暴力女は嫌いなんだ。


日の下に蹴り出された私は、芝生に手をついて起き上がる。


「文句の1つでも言わないと気が収まりませんね。」


目の前のボロ小屋と成り果てた家からは物音が聞こえてくる。戦闘と言うにはあまりに一方的な音の連なりに、ロテオは安心していた。


「____まぁ良いでしょう。数え切れない神達の寵愛を受け、その身に余る加護を使って勝利を送り届けるな___」


直後に屋根が吹き飛んだ。粉塵が吹き出し雲を作るが、風がそれらをさらっていく。現れたのは「怪物」だった。

まるでアラクネのような姿。人間の下半身に蜘蛛のような足を取り付けた怪物が屋根を突き破って出てきたのだ。それだけならまだやりようがある。だが肩には気を失ったカトウマリアがいる。我々の最大の攻撃の要がだ。


「なっ___何、気を失ってんだおまぇえええええ!!!」


怒号が出てしまった。聖職者あるまじき。

声に反応して怪物は私を見た。その顔は皺が刻まれた老人、ゴートリーさんその人のものだ。


「やっぱり...あなたのようなみたいな人でも負けてしまうのですね。」


だからなんだと言うのか。私は両手を後ろに組んで、胸を張り、顎を下げる。自衛隊式で言う安めの姿勢を取った。

大地に直立するこの足は、指揮系統の堅牢さを示す。これが動く時は状況が動く時だ。


「懐かしいですね。この姿勢も記憶に古い。」


風が吹く。日が視界を埋める。怪物がこちらを見ている。

だからなんだと言うのか。私の持てるものは何だって使って使って勝ってやる。貴様ら怪物に対抗する手段が彼女だけだと思うなよ。


「来なさい。さぁッ!!!」


それに怪物は答えた。視界に捉えられないほどの速さは、屋根の木材を粉砕する。

轟音が耳に届く頃には私の身体に穴が空いているだろう。


「あらあら。」


だがそうはならない。


【??】


鋭利で尖った脚が1本、首元まで伸びて止まっている。微動だにしていない。何やら不思議そうに首を傾げる怪物が間抜けに見えて仕方ない。


「耐久力3トン越えの極細ワイヤー約200本。細さで言えば蜘蛛の糸より薄い。それを予めここに仕掛けて起きました。捕獲の為にね。」


目では見えない糸が怪物の体に巻きつき、陽の光で煌めいている。


【コッ____ォオオ】


呻き声を上げながら身体を前へと進めようとするも、そのかい虚しく阻まれる。後ろに下がろうとするが糸が絡んで身動きは取れない。


「私はその方に乗っている女とは違い、転生者です。産まれてこの地に足を伸ばしてからというもの、前世の技術を再現しようと研究し続けた。」


私は指を鳴らす。パチンと弾ける音が響くと、ワイヤーの張りが強まっていき、怪物の肌にくい込んでいった。


「私は科学技術官であり自衛官。あなたのような怪物退治は自分の夢でもありましたので、このまま退治させていただきますよ。」


その瞬間だった。糸が怪物を細切れにする前に、先に限界が来たのは耐久性だった。張り詰めていたが糸が切れて地に落ちる。その身を縛るものはなくなり、再び槍は喉元へと進み出した。


【スマナイ】

「聞きませんよそんな言葉。」


風の中で研ぎ澄まされた音が弾けた。銃声だと認識する頃には肌色の槍が砕け、真っ赤な花を散らした。砕けた断面には白い骨と血が滴る肉が露出している。


「中身は一緒ですね。」


続いて何処からか発砲音が2発響く。今度は先程のより近く大きい。直後に怪物の肌には無数の穴が穿った。


「狙撃、それから散弾による制圧。対怪物行動ならまだ弱いですね。それにあなたはまだ折れていな____」

【ォオオオオオオオ!!!】


血が吹き出し、もう槍として機能しない肉の丸太を、怪物は力任せに突き進んだ。無論無意味では無い。ささくれ立つ骨の棘が喉に刺されば一溜りもないだろう。そんな事考えれば分かる。

だから私の右手には拳銃が握られていた。6発装填のリボルバー。金型製造からかなり難航したものだ。だがらこれは6発限りの高銃口。


手首を返して銃口を空へと向け、引き金を引いた。衝撃が手首を無理やり押し返す。


「グッ!!!」


銃弾は顎を貫けず、顎の先端から右側半分を持っていき、空に血肉が舞い上がった。


「クソッ!!!仕留め損なったッ!!」

【オッ____ぉおアアアア!!!!】


痛みに怪物が悲鳴を上げると、赤い霧が吹き出した。


「血を滾らせて煙を作った___逃げるか!」


風が吹けば煙が消える。そこに怪物の姿も、カトウマリアの姿もない。


「クソッ。また仕留め損ないましたね。」


静けさはない。耳に響くのは心臓の跳ねる音しか届いておらず、腰に貼っていた緊張が解けた。

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