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なかみがないかに

現場となったゴートリーさんの家に舞い戻ってきた。だがもうそこは、記憶に根付いていた光景とは違っている。

壁や床、家のあちこちに重い棒でも突っ込んだような穴が開けられている。まるでチーズだ。そしてそれらより歪なのは窓。窓縁ごと無くなり、太陽の光が流れ込んでいる。


ロテオは床に転がる木片を摘んで拾い上げる。全ての角度から観察し、静かな空間の中で答えを流した。


「人間にしては乱雑な動き、怪物が暴れた...。侵入路は窓。」

「さっきまであたし達がいた事を考えると、美の魔女が放った手先。運良くすれ違い、ゴートリーさんは運悪く出会ってしまって逃走したみたいな感じ?」

「現状を見るとそんな風に考えてしまうのは当然です。けれど少し早急だと思います。」


床に転がる幾多の木片が怪物が暴れたような情景を思い起こさせる。恐ろしいイメージに囚われていると、先程私達を呼びに来た若い牧師が走ってきた。


「人払いは済ませました。近隣住民には手近かな公民館に退避してもらっています。事情聴取も兼ねて。」

「この家に人間は?」

「術式により、人間はいないという計測結果です。先程の事なので実況見分は今から...」

「了解です。みなさんよく注意を払いながらよろしくお願いします。」

「はい。おい!!みんな入っていいぞ!」


雪崩込む黒色の服。静かな空間は音で覆い尽くされて忙しくなった。


「さぁどうしましようか。」


ゆっくり立ち上がるロテオは、荒れた部屋の中練り歩き出した。すると私はパノラマに違和感を感じ、それが何かがわかった。


「机がない。」


辺りを見回して見てもこれだけ木片が散らばる中で、机と思わしき破片が残っていない。窓ガラスも。それをロテオに教えようと視線を移せば窓がない吹き抜けとなった箇所を観察していた。


「窓の傷が外側に向かってそ反り立ってる...」


そして紐づいた。窓の鋭利な破片も、長い机も部屋にはない。窓を突き破って外へと吹き飛んだのだ。


「外に、机が...」

「ロテオ!!ゴートリーさんは誘拐されたんじゃないッ!!自分から消え____」





鐘の音が聞こえた。雲の上の祭壇から降り注ぐ、重苦しい鐘の音。それは加護の発動を知らせるものだ




気が付くと体は動き、手斧を持って、天井からロテオの脳天に向かって降る肌色の槍を切り払っていた。


「屋根に隠れてたのね____痛ッ!!」


だがそれは1本ではなかった。床には新たに転がっている肌色の三角錐と血溜まりが出来ている。それでも凌ぎきれなかった1本が、私の左腕を貫通して床に刺さっていた。


「いつみても凄いですね。自守りの加護は。」

「それをすり抜けてくる攻撃よ。あんたがいたら邪魔なのよッ!!」


ロテオを窓の外へと蹴飛ばせば、頭の中でまた鐘がなる。


「これくらい痛みッ___」


腕に刺さっていた槍を軸に、ポールダンスよろしく体を回す。次々に降りかかる槍は身体の軌跡を追って床に刺さる。刺さった端から斧で切り倒し、腕に刺さった槍も切り取った。


「____陣痛に比べれば何でもないのよ!!!」


勢いを殺さない。砲丸投げのように、蛇足を踏み台にして天所に向かって飛び上がった。


【足がぁ!!!ホジガッダンダァ!!!!!!】


天井の板が突然吹き飛んで、脚が現れた。綺麗な肌ツヤ。まるで産まれたばかりのその脚が、真っ直ぐ腹の真ん中に突っ込んできた。


口から吐きでる酸素とゲロ。空を舞う私の排出物の隙間から見えたのは、ゴートリーさんの顔だ。

屋根の割れた隙間から覗く老人の顔は、涙と血で濡れている。


【スマナイ】


どういうつもりで謝ったんだろうか。思考は微睡んで、意識が切れた。

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