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高校

「では、行ってらっしゃいませ、お嬢様」


舞の執事であり、俺の父は舞と自分をいかにも富豪が乗っているような黒いリムジンから下ろす。


「ありがと、尚文」


「いえいえ」


俺の父は、舞に軽く頭を下げる。


その様子をボーッと見ていると、いきなり自分の方へ声がかかる。


「洋太郎、決してお嬢様を危ない目に合わすんじゃないぞ」


「え、は、はい!」


咄嗟に返事をするが、父はお気に召さなかったらしい。


「ボサッとするなっ!」


「は、はい! すみません!」


父の荒らげた声に、ダラっとしていた背筋を伸ばす。昔から怒鳴られ育てられてきた俺には反射的にそう体がなっていた。普通に、親父怖い。


「では、また迎えの時参ります」


さっきまでの喧騒はどこへやら。舞に万遍な笑みを見せると扉を閉め、去っていった。


「なぁ、舞、俺可哀想だよな?」


「日々の行いだよ」


「おい、俺なんかしてるか」


「んん、私にあんま反応してくれないし」


「してるわ!」


「そーゆーことじゃない」


舞は不満そうな顔でこちらを見る。


じゃあ、どーゆー事なんだ。そう思うが答えは絶対分からなそうだったので、話を変えることにした。


「よし、じゃあ、人も多くなってきたし、敬語でいくからな」


「え〜、やだ」


「いや、流石に周りの目がある中で執事が主人に敬語じゃないはダメだよ」


昨日から、舞のお世話係として働いている俺。昨日は、入学式だったのでほぼ舞以外の人と関わることは無かったので、タメ口で良かったが、今日からは普通の学校生活だ。舞に友達などが出来た時、支障が出てしまう。


「うう…」


渋々、舞を納得させ、俺達は桜の花びらがひらひらと舞っている学校の門をくぐった。




私立高嶺(たかみね)高等学校。


これが昨日舞が入学した学校である。いつも学校の前には高級そうな車が並んだり、気品が高そうな人々がいたりする。


普通の高校と比べると明らかにおかしい。しかし、この高嶺高校では、普通の光景。


なぜならここは、古くからの名門学校であり、尚且つ通っている学生の9割は、何かの財閥の息子、娘や医者の院長の子供など。


つまり、優秀でお金持ちな超人が行くところなのである。


そんな高校に俺は、舞の執事として舞に何かないかなど確認するため一緒に通わせてもらっている。学費は、全て蝶ヶ崎家から出してもらっている。古くからの信頼関係からだ。





クラス表を見ると、当然のこと、俺と舞は一緒だったので、俺達は早速教室へと向かっていた。


「洋太郎、緊張する」


「大丈夫ですよ、舞お嬢様」


「敬語やっぱやだぁ」


周りには、学生が沢山いる。小声で喋っているが油断は禁物だ。


「ダメです、舞お嬢様。お嬢様は、学年代表でさらに日本の一、二を争う財閥の家ですので、しっかりされなくては困ります」


「うん、分かってる」


まあ、この点に関しては安心だろう。舞の中学での振る舞いは、素晴らしいものだった。気品もあり、ユーモアもあるような。


「もうすぐです」


そう言って、俺達は教室へと着いた。


入口に貼ってある座席表を見ると、俺と舞は隣同士であった。場所的には、廊下側の1番端の前。


「では、行きましょう」


「うん」


教室に入ると、一気に周りからの目線が強くなった。舞の目付きも変わる。


絶対他の人だったらこんなに目線をいかないだろう。なぜなら、舞は日本を代表するであろう財閥家の娘。


どんな人があの蝶ヶ崎財閥の娘なのか、それはみんな知りたいことである。


舞と俺は、黙って席に座った。


周りのクラスメイトの空気は明らかに俺達が入る前と違う。しーんとしている。



そんな中、1人が舞に声をかけてきた。



「あ、あの、よ、よ、よろしくお願いしま…あ、あぁぁぁ!!」


どたんっ。


「い、いてて…あ、あはは…」


周りをきょろきょろしながら、誤魔化すように笑う茶髪のボブの目がクリっとした彼女。


「大丈夫?」


舞を見ていた周りの生徒が突然の舞に声をかけに行く勇者に唖然としている中、舞はそう尋ねた。


「あ、ぜ、全然大丈夫ですっ!」


「そう、良かった」


舞は、彼女を見ながら安堵していると、彼女は続けざまに言う。




「あ、あの、わ、私と友達になってくれませんか?」


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