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わかめサラダ

作者: sashimi


 金魚が自ら水槽の外に飛び出して、床でぐったりしていた。新品の赤い靴の横に、艷やかな金魚は残酷ながら美しかった。急いで水槽に戻したけれど、こんなことは今まで一度もなかった。死にきれなかった金魚は最初はぐったりとしていたが、少し経って、諦めたかのように再び水の中をひらひらと泳ぎ始める。


金魚の自殺未遂に終わった。きっと愛するパートナーがいなくなってしまったからだ。私は二匹いるうちの一匹を昨日、あげてしまった。

とても申し訳ないことをしてしまった。


 先日、甥っ子が失恋の相談をしに家に来た。とても傷いていた。


なぐさめようと、二匹飼っている金魚の一匹を、甥にあげた。前から可愛がっていたので、少しでも元気になればいいという気持ちで申し出た。

最初は断られるだろうと思ってのことだったが、甥の淋しさは限界だったようだ。


金魚の自殺未遂と向き合っていたら、晩ごはん用に置いていた鮭への食欲が失せてしまい、歩いて10分の近所のスーパーへ向かった。


スーパーは閉店間際だったので、人も少なく、仕事帰りのサラリーマンや部屋着のカップルがちらほらいるだけだった。刺し身のほとんどは売り切れており、お惣菜もほとんどない。このスーパーはわかめサラダが美味しいので、陳列棚向かう。


目の前を通った男性のカゴに目が入った。そこにはいちご大福と、私が欲しかったわかめのサラダが入っていた。彼は少し考えるように立ち止まって、わかめサラダを棚に戻した。

私はラッキーと思って、わかめサラダを自分のカゴに入れて別のコーナーは移動した。すると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと先程の男性だった。


「あの、わかめサラダ、返してもらえませんか。」


「え?」


「やっぱり、一度いらないと決めたものなのに、貴方に取られると取り戻したくなってしまいました。最初に食べたいって思った気持ちが忘れられなくて。」


これが出会いだった。


二年後、私は彼にこう言って別れを告げることになる。


「貴方は文学に堪能だしとても魅力的だけど、貴方の言葉は全部誰かの受け売りにみえる。なんだかとても心地悪いの。貴方は頭が良くて賢い人なはずなのに、自分のお気に入りのキャラクターの好きな部分をそれぞれ内面化して「あなた」という一人の人間になっているみたいなの。貴方はどこにいるの?サラダの前で出会ったとき、貴方は「この出会いはドラマみたいだ。流れにしたがった方がいいので今度出かけませんか。」と私に言って私達仲良くなったけれど、最初から貴方はどこにいるの?」


相手からの反論は、予想した通り何も返ってこない。


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