第117章 兄と妹
聖騎士団と、タロットカード「恋人」の魔王との戦いの行方は何処?
フレイザー兄妹が居るお菓子の城の玉座の間へ急ごうとする聖騎士団は、幻惑に惑わされています。
「なんか、同じところをずっと回ってないか?」
「そうだな。たった今玉座の間へ行く所に入ってから、さっき通った場所を行ったり来たりしているし、ケントは一体どこに居るんだ?」
「皆いい? 私達から離れないで。脳がおかしくなってしまいそうだから」
ケントとソフィアを探す際に、リドリー達が姉妹からはぐれないように言うジュリエットだったが、ギネヴィアが居ないことに気付いていなかった。
ケントとソフィアは、聖騎士団が居るところを探さんと、クラインから逃げようとする。
「いいかソフィア、この幻惑を破って、リドリー達を探すぞ」「えぇ、そうするよお兄ちゃん」
「なにがあっても、俺から離れるなよ」
その頃、聖騎士団は、同じところを回っていることに戸惑いを感じ、移動をやめていた。
「ケントは、どうしたんだよ。一体どこなんだ?」
「あまり動くな、魔王相手に戦えなくなる」
「ジュリー、それよりもジーナが心配だ。皆からはぐれるなんて」
そこに、ケントとソフィアが来る。
「待ってたよ」
「ケント、心配してたぞ」
「大丈夫?」「ソフィア、おかげで助かった」
「ん? ギネヴィアは何処に居るんだ? ギネヴィアは一緒じゃないのか?」
ジュリエットは言う。「一緒に付いて来るはずだったんだけど、途中で見失って」
ケントは、覚醒した17代目の力を頼りに、ギネヴィアを探すことにした。
ケントは、幻惑を破るように、ギネヴィアの居場所と玉座の間へ向かう。
何かが落ちてきて、ケントの足元に転がってきます。
ケントは、転がってきた何かを拾う。
「なんだこれは?」
恐る恐る、包まれていたものを取ると、エレミアの首でした。
「んー。暗くて何も見えませんでしたわ」
エレミアはケントとソフィアを見ると、「あぁっーーーー!!」と叫んだ。
「なぜ貴方がたは、わたくしの夢世界にはいなかったのですか?」
「知るか! お前の悪夢などに惑わされねぇ」
「それで兄様を殺すつもりで行こうとしたのですか? そんなのわたくしが許しませんわ」
「そんなことよく言うわね。首だけのあんたは、私とお兄ちゃんを殺そうなんて、出来ないよ」
首だけのエレミアは、フレイザー兄妹相手にはできないのでした。
ケントとソフィアがお菓子の城の玉座の間に行っていたことを聖騎士団に伝え、ギネヴィアを探す。
聖騎士団は、ギネヴィアを見つける。
ギネヴィアは、放心状態であり、ジュリエットが彼女の手を掴み握る。
聖騎士団は、玉座の間にたどり着いた。
「フンッ! また来たようだな。今度こそ、貴様らを……、あぁっ? エレミア! なっ……、なにがあった?」
「お兄様。こんなみじめな姿にされましたわ」
「貴様ら、俺の妹に何をしあがったんだ! もう許さんぞ、一人残らず、俺の手であの世送りにしてやる! 覚悟しろ!」
クラインは、妹のエレミアを倒した聖騎士団に対し激怒した。
「お前に言われる筋合いなどない。俺達はな、いつだって覚悟は出来てる。例え命が尽きようが、尽きまいがな。お前を倒す」
クラインと聖騎士団の激しい交戦が始まる。
クラインは、エレミアの首を取り込み、肉体を変化させる。
「げっ! こいつ、合体して恐ろしい姿になっていやがる」
それもそのはず、エレミアの首を取り込んだクラインは、半身男女と多数の腕と多数の脚と角の付いた二つの首に翼と尾を生やした恐ろしい姿をしているのです。
ケントとソフィアは、身を退き荒い息を立てる。
クラインは、肉体の一部を切り取ると、切り取られた肉体の一部が鈍器に変化した。
「うわ、奴の肉片が変化した」
「その通りだ。この肉片は、どんなものにも変えられる」
ケントが、クラインに斬りかかるも、防がれてしまう。
クラインは、鈍器に変えた肉片を投げる。
「危ない! 皆伏せろ!」
エリンシアの掛け声で聖騎士団は、身を伏せて避けるも、放心状態のギネヴィアに当たる。
「ジーナ!」
ギネヴィアは、意味不明な独り言を言い始めた。
「カードゲームやってる? プラモやって、おかけになった電話は、立直一発ツモドラ裏ドラ国士無双。マヨラーのカップ焼きそばは、一人歩きでアニメ見た。音楽聞いて、異性装。人外育成、縮めるものは嫌だから、電脳世界の忍者。漫画読みたい、西から東へ。学校行事は全部最悪だから、人形集めする。皆ひどい人だから、好きなことして遊びたい。私のものを全部取られてしまったからもう怒った。電車で映画見にいこう。あー家族なんて大嫌い! 焼肉、寿司、天ぷら、すき焼き、ピザ、ハンバーガー、カレー、とんかつ、ラーメン食べたい。頭使うソシャゲはいいね」
「何を言っているのだお前」
クラインは呆れてしまい、ギネヴィアの言っていることが理解できなかった。
ギネヴィアは千鳥足で、クラインの方へ向かって行きます。
「近寄るな!」
クラインは怒鳴るも、ギネヴィアは制止が効かず、クラインの方に頭から倒れこみます。
ギネヴィアは石頭だった。
「痛っ! こいつ、頭が硬い」
ギネヴィアは、地面に倒れても、余裕の表情を見せます。
エリンシアとジュリエットは妹のギネヴィアをおかしくさせたクラインに対し、怒り心頭になり、剣を抜きます。
無数に増えたクラインに対し、エリンシアとジュリエットは斬りかかるも、幻影に惑わされます。
エリンシアとジュリエットはクラインの反撃に遭い、体力を削られます。
(早く何とかしないと、奴にやられてしまう。どうするんだ俺? 何か方法があるはずだ)
ケントは、クラインを倒すにはどうするかを考えていた。
(何としても、奴を倒さなければならない。それよりも、ギネヴィアの姉達を死なせてはいけない)
「こうなったら、炎の痣の一族の力を使うしかない」
ケントは、咄嗟の判断で、エリンシアとジュリエットに言います。
「エリンシア、ジュリエット! 俺の所に来るんだ」
「ケント君、本当にそれでいいの?」
「あぁ、俺を信じるんだ。俺は奴を倒せる方法を見つけた」
エリンシアとジュリエットは、ケントの所に来て、ケントが覚醒した17代目の能力を頼りに、クラインの本体と弱点を探します。
「奴の本体と弱点が見えた」
ケントは、クラインの本体と弱点を見つけました。
「行け!」
エリンシアとジュリエットは、クラインの攻撃を避け、本体と弱点を探し当てました。
「何? 躱されただと? なぜバレた?」
クラインは、動揺します。
「見えた! そこだ!」
「行きましょうエリン姉」
「あぁ」
エリンシアとジュリエットは、息を合わせ、クラインに斬りかかります。「ブレイドハリケーン」「ギムレットサンダー」
クラインは、姉妹の攻撃を防ぎきれず、体を斬られました。
同時に、タロットカードが破壊された。
2つの首が転がる。
「兄……様……」「エレミ……ア……」
クラインとエレミアは、首だけになり、互いの顔を向かい合わせた。
こうして聖騎士団は、タロットカード「恋人」の魔王である双子の兄妹、クラインとエレミアを倒した。