異伝2 「正義」のタロットカードを持つ魔王
フレイザー兄妹が学校に在籍していた頃、校長に呼ばれて、とある話を耳にする。
フレイザー兄妹は、士官養成学校での生活に慣れた頃、炎の痣を持っていることに対し、自身に起こり得る事をこの先知らない。
「俺の手には炎の痣があるが、これまで俺の身に何が起きたのか、記憶が薄れていく」
「お兄ちゃん、何かあったの?」
「いや、何でもない」
そこに校長が来て、校長が「君たち、ちょっといいかな? 来てくれ」と声をかける。
校長に呼ばれたフレイザー兄妹は、校長室に入る。
「座りたまえ」
フレイザー兄妹は、座る。
「では、話をしよう。かつて私が、聖騎士だった頃、あるものに会っていた」
「校長、なぜ今ここで話すんですか?」
「それは敵対する魔物ではないことを思い知ってしまったからだ」
オズベール校長が聖騎士だった頃、タロットカード「正義」の魔王と遭遇していた。
オズベールは、眼の前に魔物が居れば敵として、倒さねばならないという信念を持っていた。
オズベールは、タロットカード「正義」の魔王に向かって斬りかかるも、躱されてしまう。
「正義」の魔王は、あまりにも強すぎて、オズベールは腰を抜かしてしまう。
しかし、「正義」の魔王は、聖騎士団である者に対し、誰一人も殺そうとはしなかった。
「邪魔するな。勘違いするな。我は邪悪な魔物ではない」
「正義」の魔王はその言葉を言うとその場を立ち去って行った。
「それ以来、誰も『正義』の魔王を見つけることすら、出来なかった」
オズベールは、「正義」の魔王の存在を語った。
誰も「正義」の魔王の名を思い出せずにいた。