第102章 悲しき魔族の心
はたして、聖騎士団と魔王バルログとの戦いは決着が着くのか?
「なんてやつだ。こいつ、とんでもなくしぶとい」「まともに戦っても勝目が無くなりそうだ」
「みんな、諦めるんじゃない」
聖騎士団は、魔王バルログとの戦いが長引いている。
ケントは、言う。「おいお前、何故俺達聖騎士団に対して抵抗し続けるんだ? 害虫並みにしぶといぞ!」
「僕は所詮骸骨。あの嫌われる害虫と一緒にしないでくれ。魔族だって、あの嫌われる害虫が大罪嫌いなんだよ。そう、僕達の家族もな」
バルログは、魔族であるが、害虫嫌いは、人間と同じである。
バルログにはこんな悲しきかごがあった。
かつて、バルログが人間だった頃、彼はバルログという名前ではなかった。
人間だった頃、彼は生まれつきの病弱体質であり、命が短かった。
とある者が訪れる。
『君には何がわかるんだ?』
「ボクは生まれつきの病弱で、周りの人から虐げられているんだ。だから、周りの人を例え力ずくでも見返したいくらいつよくなりたいんだ」
『いいだろう』
しかし、その約束が、恐ろしい事態を引き起こした。
バルログは、その病弱体質が原因で命を落としたが、約束をした者が魔族であったが故に、魔族として蘇ってしまい、彼の家族を魔族にした。
バルログは人間の姿に変え、暗殺者達を手玉に取るように、自身を虐げた者たちに対し復讐を果たすため、皆殺しにするように命じた。
その結果、バルログの周りの人達は皆殺しにされ、魔族に喰われたり、バルログを虐げてない者は魔族にされた。
その後、暗殺者達は捕まり、処断され、魔族になったバルログの家族も魔族にされた者も魔物狩りで殺されたものの、バルログは、全滅するではないかと悟り、運良く逃げ切り、約束をした者と再開を果たし、タロットカード「戦車」の魔王となった。
「そんな理由で、罪のない人達の生きる権利を踏み躙って奪ったの? 許せない」と、ソフィアは憤りを感じた。
「そんなことなんて、どうでも良かったんだよ。どうせ、みんな永遠の命を欲しがらなかったからこうなったんだ。僕には生きる権利があって、僕は力ずくでも見返したくて、連中を皆殺しにするように命じたんだ。だから、永遠の命が手に入ると信じていたんだよ。そう、容赦無しに制裁すれば、僕の仲間が増えるんだ」
「生きる権利というのは、誰だって同じことなのに、永遠の命が欲しいから、周りの人の命を跡形残さずに奪うことは、俺が断じて許さない」
ケントは怒りを露わにする。
「この悪夢の館から生きて帰れた者は誰も居ない。僕が、一人残らずここで葬ってやる」
バルログは、聖騎士団に対し、抵抗し続ける。
「気をつけろ、十将でないものが、大勢で戦っても意味が無い。ここは、私が相手する」
アーサーの見解に従うフレイザー兄妹と同期組であった。
ケントは、ふと見る。(あいつの鎧に亀裂がある)
「鎧に亀裂がある。そこを狙うんだ」とアーサーに助言した。
「僕を倒そうなんて無駄だよ」「それは違う」
アーサーは、技を繰り出す。「ドレイクスティンガーエッジ」
アーサーの剣が、バルログの鎧の亀裂部分に当たり、バルログの鎧は砕け、タロットカードが燃えた。
「ドラゴニック・アサルトソード」
アーサーは、バルログの首を斬る。
バルログの身体は崩れ散る。
その時、ケントは不気味に蠢く腕を捕まえる。
すると、脳裏に何かの記憶が浮かぶ。
「これは、奴の記憶なのか?」
ケントの脳裏には、バルログが人間だった頃の幼い記憶が映る。
幼いバルログが泣き出しているところ、彼の家族が寄り添う。
病で倒れたバルログが命尽きるまで、彼の家族はずっと傍に寄り添っていた。
「あいつ、どんなに心が傷付いても、決してあきらめなかったのか。ん? 待てよ。その裏では、家族以外に対して憎しみの感情が現れていたのか」
ケントは、バルログが人間だった頃の負の感情を読み取れた。
バルログが灰になる前に、ケントはスパルトイという武器を手に入れた。