ねだる
こんなに気持ちいいとは。
2016年1月18日、ピクシブ公開。
最近は彼の定位置は彼女の膝の上である。
「はい、綿棒するよ」
「うん!」
耳の汚れを確認するために綿棒で耳のなかを拭き取る、これで汚かったら耳かきをするといった感じである。
「ちょっと汚いね」
白い綿棒に耳垢と、何本かの毛が絡まっていたので、耳かきとなった。
細い耳かきとティッシュがセットで用意されている。
これが彼女の耳かき道具である。
「さすがにあんまりかきすぎるのは良くないと思うんだよね」
「そんなことないよ」
「そういうこといってもダメ、耳が痛くなるわよ」
「がんばって…我慢します」
「じゃあ、耳かきするわよ」
彼女は手前から耳かきをしてくれる。
まずは見えているところから、耳の外側の窪みをなぞられた。
カリカリの耳垢が剥がれてくれる。
耳かきでなぞったあとは、ウエットティッシュで消毒を兼ねて拭き取ってくれた。
「スースーするね」
そして、耳のつぼをギュ!と押してくれる。
「くっ」
これだけで気持ちいいが。
そのままほぐすように、揉みこんでくるのだ。
「どこでこんな技を」
「肩こってきたり、目が痛くなるときに、自分で色々試したのよ」
そんなせいか、彼女はマッサージも上手いのである。
「こういうの覚えておくと損はないわよ、疲れにくくなるし」
「俺はやってもらった方がいい!」
「疲れているときに、甘えられても困る」
「…ダメ?」
「疲れてない時なら、まあいいわ」
ヨシ!
「けど、大分疲れている…と思うんだけども、元気よね」
「そうかな?」
「一緒にオムライス作るとは思わなかった」
「はじめての共同作業だね」
オムライスを作ろうという話になり、さて、どういうのにしようかと案を出しあった。
こんなのがいいだろうと、定番のオムライスを作り上げるために、スーパーに買い物にいって、分担して、美味しいオムライスを作ったのであるが。
彼女は休みであったが彼は仕事のあとであった。
「コンソメで炊いたご飯使うと、美味しく簡単にできるのね」
美味しそうに食べる彼女をみたら、幸せな気分になるのであった。
「というか、皿洗いまで手伝ってくれるとは思わなかった」
「えっ、そうなの?」
「うちは女性がみんなやるって感じだった、炊事ができても、男性はしなかったかな、こっちに来てから料理する男性もいるんだなってことがわかったけど」
「ふうん、うちは昔からだな、子供の時から手伝っていたから、当たり前って感じ」
「二人いると当たり前だけど、早いわね」
「そりゃあそうだよ、本当、独り暮らしはじめてもさ、全部一人でやるのはいいんだけどもさ、ホームシックがひどくてさ」
「家族と仲がいいからなるんだよ、私は全然ならなかった、これからは気楽が先に来たもん」
「家事は好きなの?」
「今は仕事の方が忙しいから、しなくてもいいならしたくないな、でもまあ、あなたと家事をするのは悪くないかなと…」
そこまでいってしまったと思った。
「うんうん、ずっと一緒にいてもいいんだよ」
「いや、それはちょっと…」
調子に乗るので、あんまりこういうことは言いたくはなかった。
「はい、耳かきの続きをしますからね」
「うん!」
耳の入り口に近いところを、確かめるように軽く耳かきでなでると、それだけで白い乾燥した耳垢がポロリと出てくるので、まずはそこをきれいにする。
ポロリ、ポロリと落ちてくるが、それはずっと続くものではない、少なくなってきたな辺りで、他の場所にうつる。
何回も掃除をしている耳なので、どこら辺に何があるのかわかるようになってきた。
例えば少し耳の中に入れたここを、円をかくように耳かきをしてあげると。
「ん~」
気持ちいいのか、そんな声をあげてくれるのだ。
そして、そのまま奥に進むと。
「あっ…」
ツボに当たり、全身に快楽が走る。
こんなのを経験してしまったら、耳かきをねだるようになってしまうのはしょうがない。




