ナナちゃん
うちのお店で人気の子。
2012年5月24日、ピクシブ公開。
肩こりが酷くなると、耳かきがしたくなる。
「いらっしゃいませ」
最初は行くの照れたけど、耳かき屋さんに通ってる。
「な…なんだか、照れますね」
「リラックスしてください」
そこで女の子は微笑む。
『ナナで~す』
胸の名札には書いてある。
「ミネラルウォーターです、耳かきをすると、新陳代謝が良くなるんで、これをお出ししてます」
確かに、この中は少し暑い。
上着を脱ぐと、ナナちゃんはそれをきちんと畳んでくれる。そして、正座して。
ポンポン
膝を叩かれた。
つまりはこのまま膝枕だと…
ゴクリ
生唾を飲んだ。
スゴい緊張している。
「どうぞ」
そこで笑顔を浮かべる。
ふらふらと誘われるように、この辺りの記憶は定かではない。
ぽふん
ナナちゃんの膝に頭を預けた。
「それでは失礼しま~す」
そういいながら、少し伸びた髪をかきあげて。
「ふう!」
俺はいきなりのことに固まり。
耳の中に、ナナちゃんの吐息が通り抜けていった。
これでようやくおとなしくなったと言わんばかりに、ナナちゃんの耳かきは始まった。
「最初は外からにしますね、それとも中からの方がいいですか?」
「いや、任せるよ」
「では外からにしますね」
何というか、この耳かき屋さんのいいところは、在籍している女の子が普通っぽいのだ。
正直、派手な子とは、何を話せばいいのかわからないので、こういう子の方がいい。
何というか、普通の子、良くも悪くも普通の子の方がいい。
ヤバいな、彼女欲しくなったわ。
この子、いるんだろうな。
彼氏とか…
「それでは耳の中を失礼します」
ザワ
耳かきが上手い人間は、その最初の一手で、その相手を落とす。
指の中では触ることが出来ない深さに、耳かきを入れて、そこを撫でられたら、俺はナナちゃんにされるがままになってしまった。
「ふっふっ、たくさん入ってますね、音が違います」
あれ、ナナちゃん、さっきと性格違ってない?おっとりしていると思ったんだけど。
「全部綺麗にしてあげますから、動かないでくださいね、動いたらケガしちゃいますよ」
俺はこれからどうなるの?
パリ
耳の中で、何かを剥がす音がした。
その音で俺は参る。
「いつも一人で耳かきやってます?だとしたら、下手ですね。ナナが、お手本見せてあげますよ~だ」
ザリ
大物が引っかかる音がした。
「普通の人なら、ここでピンセットなんですけど」
そこはプロのテクニックで、耳かきのサジの部分だけ使いすくい取る。
ポロッ
本当にこんな音がするんだもんな。
「ほら、見てください、こんなに大きいんですよ、こんなにするまで溜めちゃだめじゃないですか」
少し怒ったように言うんだ。
「ごめんよ、ナナちゃん」
「今日は許しませんからね、全部取って、ピカピカにしちゃいます」
はい、是非とも!
「じゃ、次は奥の方ですから、気持ちよくても、我慢してくださいね、耳の中はとってもデリケート!」
サリ
さっきよりも深いところに耳かきが入っていくのがわかる。
ちょっと動かしただけで、すぐに皿に耳垢が乗るらしく、ナナちゃんは忙しく、耳の中と外を行ったり来たりしたが、綺麗になったのか、その動きがだんだん無くなっていくと、それはそれは寂しいものだ。
「綺麗になりました」
おしまいと言われると、がっかりするんだが。
「まだ左耳もあります、左耳の方が、きれいにしなきゃいけないところがたくさんあるんですよ」
それから頭を動かすことが出来ず、ただひたすらナナちゃんに耳の中をいじられた。
「今日はこれでおしまい、耳の中は綺麗にしなきゃダメですからね!」
「うん、綺麗にしておくよ」
それから俺は常連と化し‥
「お客様今回は誰にいたしますか?」
「ナナちゃんで‥」
いつまで経過してももじもじしながら、彼女の名前を指名する。
「ナナです!」
そこを元気に登場する、やっぱりナナちゃんに決まりなのだ。




