初恋
「その好きは永久に変わらない」2012年5月17日、ピクシブ公開。
子供の頃の話だ。
近所に住んでいた、それは綺麗なお姉さんに、耳かきをされたことがある。
「そんなに泥だらけで帰ったら、怒られちゃうよ」
と手ぬぐいで拭かれて。
「耳の中も泥入っているんじゃないの?」
なんて言われた。
「見なくていい」
「もう、いいから」
嫌がっていたのだが、強引に耳を覗かれて。
「ほら、耳をきれいにした方がいいじゃない」
というのだった。
しかし、その声はもう届いていない、なぜならお姉さんからはとてもいい香りがして、ぼ~としていた。
「はい、動かないのよ」
耳の外側をつままれて。
サリ
いきなり耳掃除が始まった。
耳の少し深い部分に、耳かきが触れてくる。
カリカリ
垢をなで上げる音が、脳髄を痺れさせる。
お姉さんの長い指が、耳かきを握り、その耳かきが僕の耳の中に入り、耳垢をかきだそうと細かく動く。
垢をすくい上げた耳かきは、耳の外へ出ていき、柔らかい紙の上にトントンと垢を落とし、それでも取れぬ場合は紙で拭う。
再び僕の耳に入ってきた耳かきは、先ほどの続きを容赦なく初めて、まだかき上げていない、横や奥を攻め続ける。
パリ!
耳の中で明らかに今までと違う音がして。
「ふっふっ、大物があるわね」
お姉さんは楽しそうに言う。
パリパリ
耳かきが大物を狙い始める。
本体ではなく、大物の端から剥がしていくらしい。
パリ…
秋の林の中、枯れ葉の道をゆっくりと歩き始めるような音がする。
パリ…
じわじわと、大物はお姉さんの耳かきにより、方位されているらしく、大物の周囲縦横斜めから、大物が割れないように剥がそうとしているようだ。
ポロッ
その瞬間にはそんな音がした。
「取れたわ、ほら、こんなに大きい~」
しかし僕には見えない。
「奥まで掃除してなかったみたいだから、耳かきするのは楽しいわ」
お姉さんがそう言葉を口にするたびに、いつもじゃなくて不意打ちのように、耳にかかるお姉さんの吐息で、僕は耳かきを自分でしたいんじゃなくて、誰かにされたい欲求を常日頃から持つようになってしまう。
もう引っ越してしまって、どこにいるかわからないお姉さん、僕の初恋であって、耳かきの素晴らしさを教えてくれた人。




